下記の記事はダイアモンドオンラインからの借用(コピー)です
雇用制限が少子化対策になる?炎上ツイートから見る「弱者男性論」
「本気で有効な少子化対策をしようとすれば女子教育の抑制と、それにともなう女性の雇用機会の制限(からの所得抑制)しかない」という内容のツイートがプチ炎上し、議論を呼んでいる。最近SNS上で「弱者男性論」が話題になっているが、それとも通底している考えだと感じる。男女を分断する言説はなぜ生まれるのか。(フリーライター 鎌田和歌)
インフルエンサーのツイートがプチ炎上
至るところで緊急事態宣言が出され、外出自粛が続き、ついついSNSばかり見てしまっているという人も多いかもしれない。
そんな中、LINEの執行役員やZOZOのコミュニケーションデザイン室長などを務めていたこともある田端信太郎氏のツイートが物議を醸した。
note上で、有料公開されていた「暗黒メモ「『女をあてがえ論』にまつわるアレコレと、その深淵ある絶望的な真実」」(※原文ママ)というブログを引用し、下記のようにツイートしたのだ。
「良い悪いは別にして、結局、本気で有効な少子化対策をしようとすれば女子教育の抑制と、それにともなう女性の雇用機会の制限(からの所得抑制)しかない」
田端氏は「良い悪いは別にして」とことわっているが、このような前書きはすっ飛ばして解釈されるのがSNSの常だ。5月6日午後時点で、672リツイート中、578ツイートが引用リツイート(そのツイートに対してコメントをつける形の引用)で、多くのコメントが田端氏を批判している。
わかりやすくシンプルだが、危険なツイート
今回のツイートが炎上したのは、影響力の大きい田端氏だからということもあるのだろう。
田端氏はこれまでも、歯にきぬ着せぬ物言いで賛否両論を集めてきたインフルエンサーでもある。これまでも「誰か、高額納税者党を作って欲しい。少数派を多数派が弾圧する衆愚主義じゃないか」(2018年3月10日)、「12歳未満の子供の要る(原文ママ)女性の家事が平日1日8時間って何やってるの? 素朴に疑問。キャラ弁でも作ってるの?」(2019年9月14日)などのツイートがたびたび炎上してきた。
しかし、今回、悲しいのはこのツイートを読んで「少子化のためには、女性は活躍しない方がいい」というような感想を持つ人も少なくはないのだろうと思えてしまう点だ。
大前提として言っておきたいのは、妊娠・出産をする性である女性の社会的活動を抑制することが少子化対策に有効だという考え方は、グローバルスタンダードに逆行にするものだということ。世界経済フォーラムが毎年公表しているジェンダーギャップ指数のランキングで、日本は156カ国中120位だったが、日本より上位のフランスや北欧諸国は少子化対策で成功している。このことからも、女性が活躍するほど少子化が進むという考えは疑問だ。
しかし、一見シンプルでわかりやすい話であるだけに、納得してしまう人もいるだろう。男尊女卑社会を温存したい人からしても格好の「ロジック」なのだから、飛びつく人がいるのもわかる。
今回は、田端氏のツイートそのものよりも、「少子化を止めるために女性の活躍は不要」というような言説が、何度否定されても湧いて出てくる社会構造について考えたい。
ネットの一部で話題の「弱者男性論」
女性の「上昇婚」はわがまま?
日本の社会では、女性だけでなく男性も差別を受けている。最近、ネットで話題になっているのが「弱者男性論」と「女あてがえ論」だ(「女あてがえ論」については、田端氏のツイートで言及されている記事のタイトルにもなっている)。
それぞれがどんなものかを説明するが、これはあくまでも筆者による定義であることを先にお断りしておきたい。
「弱者男性論」は、2010年代後半になって特に言及されることが多くなった「女性の生きづらさ」に対して、「男性も生きづらい」という声が上がったことから始まる。2010年よりも前からこうした声はもちろんあったが、「弱者男性論」はネット上のブロガーやフォロワー数の多いツイッターユーザーが特に牽引した感が強い。
男性の生きづらさの中でも特に、「男性だからといって誰でも特権を持っているわけではない」ことが強調される。社会的地位が高く高年収で女性からも人気のある「強者男性」ではない「弱者男性」は、男性としての「特権」を持っていないのに「弱者」として福祉や支援あるいは世間からの同情を集められるわけではなく、その分女性よりもツラいというのだ。
弱者男性論者の中では、「強者男性>強者女性>弱者女性>弱者男性」という序列があると語られる。弱者女性はマスコミから注目されるが、弱者男性はそうではないともいう。
たとえば、コロナ禍で女性の自死が増えたと報道されることが多いが、依然として男性の自死者の方が多いことはあまり指摘されない。
また、ネット上で弱者男性論を語る人がよく使う言葉が「上昇婚」である。女性が自分より年収の高い男性を結婚相手に選ぶことを「上昇婚」と呼び、一部の過激な論者の中には、高年収な女性は下方婚すべきであるとか、あるいは上昇婚を望む女性はわがままで分不相応だといった論調も見られる。
しかし、現状において、女性の非正規雇用率の方が高く、収入格差も歴然としてあるのだが、その格差を埋めることについて熱心に語る論者は少ない印象だ。
「女あてがえ論」とは?
「女あてがえ論」とは、弱者男性論にやや批判的な人たちが、弱者男性論者を皮肉って言った言葉である。結局、弱者男性の主張は「年収が低く女性にモテない自分たちにも女性をあてがえ」であり、女性の意思や人権に興味のない人たちの言うことであると断じている。
しかし、これに対して反論も多くあり、特に、「はてな匿名ダイアリー」(匿名で日記が投稿できるWEBサービス)では弱者男性に関するさまざまな投稿がここ数カ月、乱立している。その中には、自分は女性にモテたいとか結婚したいというわけではなく、ただ差別しないでほしいだけだといった表明もある。
つまり、弱者男性のツラさとは、ただ生きているだけで人から冷たくされたり無視されたりすること。彼らを「普通」に扱ってくれればそれでよいというわけだ。
さらに、ネット上では「KKO」という言葉も見られる。「KKO」とは、「(K)キモくて(K)カネのない(O)オッさん」の略であり、「人間扱いされない」弱者男性の悲哀が語られる。
一方で4月には、現代ビジネスで「『フェミニズム叩き』『女性叩き』で溜飲を下げても、決して『幸せにはなれない』理由」という記事が公開された。この記事の中で紹介されている通り、特に弱者男性論者の中にはフェミニズムあるいは女性の言動をバッシングし、憎悪を募らせるようなツイートをする人もいる。
弱者男性論をあおるのは強者男性?
ここまで読んで、読者の皆さまは「弱者男性論」をどう思っただろうか。「一理ある」と思った人も、「それは違うのでは」と思った人もいるかもしれない。
個人的に疑問を感じているのは、ツイッターやブログで弱者男性論の中核となっている論者たちの中には、それなりに年収がある男性も含まれている点である。ある論者は書籍を出版し、有料ブログも繁盛しているという。またネットTVに出演したこともある論者は高学歴で、地方で安定した職業に就いているとも言われる。「KKO」の、少なくとも一つの構成要件は満たしていない、つまり金はそれなりにある強者男性が、弱者男性論をあおっているようにも見える。
冒頭の田端氏を、弱者男性と思う人はいないだろう。しかしそのツイートは、最も過激な弱者男性論者と同じように、女性の意思や権利を抑制する案である。
もちろん、男性の生きづらさというのは当然あるし、少子化も社会問題である。ただ、極論は炎上ネタにしかならない。憎悪をあおるだけではなく、社会問題の解決に至るような議論をネットに求めるのは難しいのだろうか。女性の
鎌田和歌:フリーライター
追記:馬鹿げた話です。8050問題でも50は男性の方が多い。女性に負けたくなかったら草食男子なるな。学生時代にもっと勉強をしておけ。