下記の記事は日経グッディからの借用(コピー)です 記事はテキストに変換していますから画像は出ません
最新の抗老化研究によって、健康寿命を延ばし、何歳になっても心身ともに元気で社会貢献し続ける「プロダクティブ・エイジング」の実現が可能になりつつある。そのカギを握る一つが、私たちが生きていくうえで欠かせない体内物質であるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を増加させ、長寿遺伝子からつくられる酵素サーチュインを活性化させること。NADを高めて老化を遅らせるために、今すぐできることはあるのだろうか。前回記事(「老化を遅らせ、元気続く 最新研究が示す抗老化物質」)に続き、哺乳類の老化・寿命のメカニズムの研究と抗老化方法の確立を目指す、ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授に聞く。
法則1 「運動」で老化制御に欠かせないNADを増やす
――老化を遅らせるために、40~50代の人が今すぐ始めたほうがいいことはありますか。
今井 すぐに始めてほしいことの一つが、運動です。運動が老化を遅らせることは、複数の研究で科学的にも証明されている間違いのない事実です。
あわせて読みたい
老化を遅らせ、元気続く 最新研究が示す抗老化物質
筋肉増やして若返り 筋トレ、食事のポイント一気読み
アスリートのような非常に激しい運動をする必要はなく、ウオーキング、ジョギング、自転車こぎ、水泳などの軽~中程度の有酸素運動、筋トレが効果的です。
運動をすると筋肉中のNAMPT(ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)の量が上昇して、エネルギーの産生とサーチュイン(老化や寿命をコントロールする酵素)の活性化に不可欠なNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の量が増えます。NAMPTというのは、体の中でNADを合成するために必要な酵素です。
――運動が体にいいことは分かっていても、忙しくて続けられない人も多いのですが、継続の秘訣はありますか。
今井 私は週2回、スポーツジムへ行き、筋トレをするようにしています。日本の多くのビジネスパーソンがそうであるように、私もなかなか運動をする時間が取れないのですが、スケジュールの中にあらかじめジムへ行く時間を組み込むようにしています。普段からエレベーターやエスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活の中で意識的に体を動かすことも大切です。
法則2 「朝食」をがっつり食べて生体リズムを整える
今井 そして、もう一つ、NADを増やすために重要なのが、生体リズムを整えることです。私たちの体の中のNADの量は、サーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれる生体リズムに従って増えたり減ったりしています。マウスは夜行性なので、NADの量が昼間の明るいときに減り、夜は多くなります。人間は逆で昼にNADの量が増え、夜には減るようになっています。
要するに、NADはエネルギーを生み出すうえで必須の物質なので、活動期に増えるようになっているのです。NADの値を昼間にしっかり高めてサーチュインを活性化させるためには、人間が本来持っている生体リズムを保ち、午前中にNADをしっかり増やすことが大切なのです。
そのために有効なのが、1日の始まりのエネルギー源となる朝食を最もカロリーの高い食事にすることです。実は、私もかつては、夜遅く帰ってデザートまでたっぷり食べ、その2時間後には寝るような生活をしていました。2014年に生体リズムに関する学会に呼ばれて講演したときに、栄養が生体リズムに与える影響についての最新の知見を聞き、家内と相談して、それまで夜に食べていたような食事を朝にとるようになりました。
次に紹介する写真が我が家の朝食の一例です。
朝に良質のタンパク質をしっかりとることが重要なので百数十グラムのステーキや大きな魚を食べ、ポリフェノールが豊富なカカオ90%のチョコレートなどのデザートも楽しみます。昼は普通に食べ、夜は軽くワイン1~2杯とチーズやハム、フルーツをとるくらいで、20時以降は何も食べないようにしています。
血糖値が下がるのには食後4時間くらいかかるので、ベッドに入るときには血糖値が下がっている状態にすることが大切です。また、ブルーライトは生体リズムを乱しますので、就寝前にスマートフォンなどデジタル機器を使わないようにしてください。
今井教授の朝食の一例。百数十グラムのステーキや大きな魚を食べ、朝に良質のタンパク質をしっかりとるようにしているという。黒っぽい長方形のものはチョコレート
法則3 長生きしたいなら少し「小太り」くらいがベター
――アカゲザルやマウスの研究でカロリー制限が寿命を延ばすと報告されています。老化を遅らせるためには、カロリー制限も有効ですか。
今井 ヒトでのカロリー制限についての報告では、ある程度、老化を遅らせる効果があるということになっています。ただ、カロリー制限をしたマウスやサルをウイルスに感染させるとあっという間に死んでしまいます。体の代謝が良くなるのは間違いないのですが、病原体に対する抵抗性が相当落ちることには注意が必要です。
特に、ダイエット志向の強い日本の女性に知っておいていただきたいのは、BMIが20未満になるようなダイエットは危険だということです。BMI20未満の人は特に高齢になると肺炎や感染症、心臓病などでの死亡率が上がります。日本人を対象にした疫学調査[注1]では最も死亡率が低いBMIは女性が23.0~24.9、男性25.0~26.9で、ちょっと小太りの人のほうが長生きできる可能性が高いのです。
世界的に見てもBMIは女性で22~23程度、男性25~26くらいが最も死亡率が低くなります。BMIが30を超えるような太り過ぎはメタボリックシンドロームのリスクを上げるので良くありませんが、臨床医の間では、少し小太りの人のほうが手術後の合併症の発症リスクが低く、透析での予後が良好であるなど、ある程度脂肪があったほうがいいのはよく知られた事実です。
BMIと全死因の死亡リスク(ハザード比)の関係
死亡リスクは、BMIが23.0~24.9の場合を1とした値(J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.)
さらに、私たちの研究で分かってきたのは、脂肪から分泌されNADの合成に欠かせないeNAMPT(細胞外に分泌されるNAMPT)という酵素が、脳の視床下部という老化のコントロールセンターの機能を支える重要な役割を果たしているということです。前回、NADが加齢に伴って減るという話をしましたが、同じようにeNAMPTも減少します。マウスでは血液中のeNAMPTが多いほど長生きできることが分かっており、知りたいかどうかは別にして、ヒトでも血液中のeNAMPT量を測れば、どの程度長生きできるか予測できる可能性があります。
――老化を遅らせるためにはある程度は脂肪も必要で、脂肪から分泌されるeNAMPTの量をある程度維持できれば、長生きできる可能性も高いということでしょうか。
今井 そうです。遺伝子操作で脂肪からeNAMPTを分泌する量を高めたマウスの実験では、人間の70代くらいに相当する18カ月齢になっても身体活動量や睡眠の質、血糖値を下げるインスリンの分泌量、目の網膜の機能、学習・記憶能力が若いマウス並みに保たれ、健康寿命が延びることが分かっています。ただし、健康寿命は延びたのですが、最大寿命はeNAMPTを高めていないマウスと変わりませんでした。人間でもそうですが、マウスは高齢になると脂肪が失われやすくなります。そのことが、最大寿命が延びなかった原因ではないかと考えています。
私たちの研究室ではさらに、若いマウスの血液から取り出したeNAMPTを26 カ月齢の高齢マウスに3カ月間週1回注射する実験を行いました。すると、人間の90代に相当する29カ月齢になっても活発に動き回り、毛並みもつやつやした状態になり、最大寿命も延びました。人間では、若い人のeNAMPTを注射するというわけにはいきませんが、eNAMPTの量は脂肪量とある程度比例します。
太り過ぎはもちろんよくありませんが、脂肪の組織から老化・寿命のコントロールセンターである視床下部に非常に重要な酵素が送り込まれているわけですから、老化を遅らせるためには、ある程度、最適な量の脂肪を蓄えておくことが必要なのです。
――運動をすることや脂肪を蓄えることはある程度実現できるとしても、朝食をメインディッシュに変え、夕食を少しにして20時以降は何も食べないようにするのは、残業が多い日本のビジネスパーソンには難しいように思います。
今井 市民公開講座などで朝食を最もカロリーの高い食事にし、20時以降は食べないという話をすると、よく「日本では無理ですよ」と言われます。日本人が、それほど太らなくても糖尿病などの老化関連疾患になりやすいのは、残業が多くて夜たくさん食べて朝食を抜くような生活をしている人が多いからなのかもしれません。前日からある程度準備をする必要はありますが、これまで夕食に食べていたようなものを朝食に回すようにしてみる価値はあります。私自身、もう6年間そういう生活を続けていますが、体調もいいですし、夜は熟睡できます。
ドイツと中国には、「朝食は皇帝のように、昼食は王様のように、夕食は物乞いのように食べろ(朝食は豪華に食べ、昼食は腹いっぱい食べ、夕食は少なく食べる)」という意味のことわざがあるそうです。私が最先端の科学の成果を実践しようとした末にたどり着きつつあるのは、先人の知恵に学べ、ということです。
結局は、日の出と共に起きて体を動かして働き、夕食を軽めに食べて日が暮れると共に寝る、太陽の周期と共に動く生活が生体リズムを整え、老化を遅らせる方向にも働くわけです。皆さんもぜひ、3つの法則を実践して老化を遅らせ、死ぬ直前まで自分の人生をフルに楽しみつつ社会貢献もするプロダクティブ・エイジングを実現していただきたいと思います。
(文 福島安紀=医療ライター、図版作成 増田真一)
今井眞一郎さん
ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門教授/神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター・老化機構研究部特任部長。
下記の記事はダイアモンドオンラインからの借用(コピー)です
2人の看護師が語る
「いのちの終わりの向き合い方」
後閑愛実さん(以下、後閑):患者さんのご家族に、「そろそろ命の終わりが近いです」という話をしたところ、ご家族からは「何回も呼び出されては持ち直して、呼び出されては持ち直して、ということを繰り返したから、『死ぬ死ぬ詐欺』にあったのはこれで7回目です」と言われたことがあります。
かげさん(以下、かげ):あるあるですよね。
後閑:余命って、医師は症状やデータ、経験などから言うけど、臨床の統計では3割しか当たらないと言われていますし、当然長いほうに外れるほうがいいけれど、短いほうに外れてしまうこともある。そこに執着するよりは、いいことを期待しながらも悪いことに備えるということが大事だと思うんですよね。
かげ:救命センターでも、いろんな理由で延命できない、しないという場合に同意を取ったら(DNAR)、個室に移動してご家族に患者さんのそばについていてもらうんですけど、医療者側が考える以上に心臓は動き続けて、そのまま家族が付き添い続ける中、何時間も、ときには1日過ぎてしまうこともあって、「もう間に合わなくていいので帰らせてください」とご家族に言われたりすることもあります。
後閑:救急に運ばれた患者さんからしたら、それは突然でそれこそ必死ですもんね。家族が近くにいたら、患者さんは頑張るでしょうし、一緒にいたいだろうし。
私も夜中にご家族を呼んだら、やっぱり丸一日ぐらいもって、ご家族も「疲れてしまったからそろそろ帰ります」となったときに、お孫さんが「ばあちゃん、もう頑張らなくていいよ」と言ったら、その数分後にお亡くなりになったということがありました。聞こえていたのかなって、そのとき思いました。
かげ:聴覚は最後まで聞こえるって言いますもんね。
後閑:おばあちゃんはそのお孫さんが大好きで、お孫さんもおばあちゃんが大好きで、毎日お見舞いに来てたんです。だから、おばあちゃんはずっと孫が心配だったんですよ。だけどそのお孫さんが「ばあちゃん、もう頑張らなくていいよ」って言ったから、「わかった、もう私がいなくても大丈夫なのね」って安心したんじゃないかな。
ところで、かげさんは今、救急にいるんですか?
かげ:そうです。5年以上看護師をしてるんですが、もともとスタートは外科が中心の病棟で、救命に来たのは数年前です。
救急へ異動して感じたのは、思っていたのとは違ったということです。自殺の人もいれば、普通にいつも通りに仕事をしていた人が心筋梗塞でそのまま亡くなってしまって、その死をご家族が受け入れられないということもあります。こちらでは死にたかったのに生きていると落ち込んでる人にどう介入するのかを悩み、あちらでは生きたかったのに亡くなってしまった人のご家族にどう声をかけようかと悩んで。
助かりはしたけれども、もうこれ以上何もできないというときに延命をどうするか、人工呼吸器とか胃ろうとか、そういうときのご家族の意思決定支援など、今までならしなかったなという体験をたくさんしています。自分だったらどうするんだろう、というのをすごく感じます。
全然答えは出ていませんけど、こういうときはこうすればよかったのかと思ったり、ここにいる患者さんのご家族はこうしたけれど、私はこうしたいなと思ったりすることがあります。
私のイメージだと救急は、あらゆる疾患、解剖生理、治療、薬といったものをすべて勉強できて、身体のことについて学べるところと思っていました。しかし、思っていたのとは違いましたが、学びは多かったかなって。結果的にはいい経験ができたと思っています。
後閑:救急にいる知り合いからも自殺者が多いと聞いたことがあり、私も思っていた救急のイメージと違うことに驚きました。その人の幸せだったり、暮らしに直結する助けになったり、その人にとって必要なことは「医療」だけじゃないなと思いました。
かげ:そうなんです。地域や行政についてすごく考えるようになりました。
自分の中ではまずは医療が大事というのがあるんですけど、でも、看取りとなると、違う要素、たとえば関わりだとか、本人の思いや考えについて配慮する。あとはコミュニケーションなどがすごく重要なんだということを改めて感じていて、苦戦しているところです。
かげ
7月27日生まれの看護がとっても苦手な看護師
チョコレート中毒。さまざまな診療科で看護しているが、循環器、消化器、脳神経、救急が特に長い。看護が苦手だからこそ、それをフォローするために看護・医療について勉強し、まとめたイラストを日々描いている。日々の勉強ネタやイラストを公開しているTwitterはフォロワー数4万人を超え、月刊誌『プチナース』、Web『エキスパートナース』、コミュニティサイト「看護 roo!」で連載を持つなど、医療系イラストで活躍。日本うんこ学会より配信予定の大腸がん等の知識普及を目的としたスマホゲーム「うんコレ」でもゲーム内イラストを手がけている。3学会合同呼吸療法認定士/保健師/元塾講師/医療美術部イラストレーター/日本うんこ学会イラストレーター。著書に『ホントは看護が苦手だったかげさんの イラスト看護帖〜かげ看〜』(永岡書店)、『かげさんのイラストで学ぶ心電図と不整脈めも』(南江堂)がある。
後閑:私は療養病棟にいるから、患者さんとはわりと長く関わるんです。なかには転院・転棟してきてすぐに亡くなられてしまう方もいますが、だいたい月単位、下手したら年単位で一緒に関わっていく人ですから、その間にその人の人生を本人やご家族から聞いたりして、落としどころを見つけるというか、みんなで最後に「これでよかったんだ」と思えるように自然に持っていけるようになったらいいなと思って関わっています。けれど救命では、初めて会って、そのまま亡くなられてしまう方もいますよね。
かげ:たとえ数時間でも、ご家族が「これでよかった」まではいかなくても、少しでも「ああだったな、あれでよかったよな」と、あとからでも思えるようにするには、今何をしたらいいんだろうとすごく悩んでるところです。
以前に悩んだのが、仕事の最中に心筋梗塞で心停止したけれど、その後なんとか蘇生した40代の男性の患者さんのことでした。心臓は動いたけれど、脳の機能が低下して意識が戻らず、肺やほかの臓器もやられてしまい、「今日が山です」という状態が何日も続いたんです。生きてはいるが、いつ亡くなるかわからないという状態が長期間続いたので、やがてご家族が来なくなってしまったんです。
ソーシャルワーカーさんが電話をしたら、奥さんが「行かなきゃいけないって思っているけど行けないんです。怖いし、つらくなってしまうから行けない」と。ここで私たちがあまり電話してしまうと追い込まれてしまうと思うんですよね。でも、電話しなければご家族は来ない、患者さんは誰も面会に来てくれない中、治療は続く。ただただ転院待ちの状態。そうなる前に、どうしたらよかったんだろう、ご家族に来てもらえないと、私たちはどうにもできない。このケースではソーシャルワーカーさんとは話をしているのがわかったので、ソーシャルワーカーさんに窓口になってもらおうということになったんですが。
後閑:今現在、そうやって関わろうとしてるところ、私は素敵なことだと思います。
話は変わりますが、転院してきた高齢の男性患者さんが、せん妄で混乱して看護師を殴ったりしたことがあったんです。それを見た息子さんが、「親父は家に帰さなかった自分たちを怒ってる」って思ったみたいで、それからあまりお見舞いに来てくれなくなってしまったんです。最終的に亡くなられたんですが、見送りのときに息子さんに私が、「お父さん、笑うとかわいらしい人でしたね」と言ったら、「親父の入院生活はつらくて苦しいだけじゃなかったんですね。その言葉に救われました」って涙されたんです。
看取りはチームでするものだから、たとえご家族が本人に対して何もやらなかったとしても、仲間である医療者や周りがその人にとっていい関わりをしてくれていたとわかったら、それはそれで家族の救いにもなるんじゃないかと思うんです。今現在かげさんたちがしている看護は、家族にとっても救いになってると思うんですよね。もし転院になったとしても、転院までの関わりをお伝えできるとまた違うかもしれないです。
かげ:一般病棟のときはそういうことも多くて、一番印象に残ってるのが2年目のときに私が初めて受け持った患者さんが亡くなったときです。
その患者さんは、狭心症の治療をしていたんですが、悪化し、そこから心不全になって終末期になってしまったんです。心不全の終末期はここ数年で注目されるようになりましたが、そのときはまだ先生たちもどうしたらいいのかわからないという感じでした。
呼吸状態が悪くなって苦しみだし、結局挿管することになってしまい、そのまま人工呼吸器が外せずに亡くなってしまったんです。この患者さんには、息子さんが唯一のご家族。息子さんは「苦しんでいる姿を見るのがつらい」と、だんだん来なくなりました。
この患者さんは入院時からずっと、息子さんからもらったお守りを持っていました。ご自身のパジャマのボタンにいつもつけていたんです。亡くなった後に息子さんに「このお守り、入院する時につけていたやつですよね。ボタンにつけてって、よく言われたんですよね」と言いながらお渡ししたら、息子さんが泣き崩れて、「やっと救われた気がします」と。
私もはじめての受け持ちだったので、これでよかったのかなぁとか、挿管するときもご家族の意思決定をちゃんと支えられていたのかな、とすごく悩みました。でも、この息子さんの言葉に、お互い救われたと思ったんです。途中経過はすごく悩みましたが、医療者もご家族もうまく着地できたのかなと思えました。
こういう着地点を見つけられることばかりではなく、家族が来ないままになってしまったとか、ただただ泣くばかりだったので、あまり会話もできずに死亡届だけ受け取られて帰られてしまったご家族とか、救急だと性質上、そういうことが大半で、死の受容段階で言うと「衝撃」の段階でそのまま退院していくことが多いなというところで、やっぱりもやもやしている自分がいるなと思います。
後閑:救急は救急で、短時間であっても、そのときできるベストと思えることをして関わっていると思うんですよね。そのときにある医療資源や人的資源、時間もだし、その中ではベストを尽くしている。
当然、もっと人手があったら、もっと医療資源があったら、というのはあるだろうけれど、そのときのベストを尽くした、それでも思うような結果になっていないってことは、そのときの自分たちより病気や老化のほうが一枚も二枚もうわてだったということだと私は思うようにしているんです。何でもできたら神様なわけですから。
かげ:たしかにそうですよね。
後閑:こういう話はご家族にも伝えています。私の講演でもお話ししているんですけれど、看護師さんも介護士さんも看取りで後悔していたご家族も、そう思えばいいんですね、と言ってくれたり、救われた気がします、と言ってくれたりします。
かげ:たしかにそう声をかければいいんですね。
後閑:「あのときああしておけば」と自分を責めている人がいたら、「「あのときああしておけば」って、結果がわかっている今だから言えることなんです。でも、あのときは誰にも結果がわからなかった。その結果がわからない中で、そのときできるベストだと思えることを選択したはずなんです。それでも思うような結果になってないのであれば、病気や老化のほうが一枚も二枚もうわてだったってことなんです」と伝えたりしています。
私の本のタイトルに「後悔しない」とつけましたけれど、みんな後悔するんですよね。絶対、後悔はあって、だけど、それはそのときはベストだったんだよと思えるように、そのときそのときを大切にする。
悲しみって、別れをそれほど悲しめる関係性が築けた幸せがそこには隠されているんだから、悲しみを消すのではなくて、悲しみとともにある幸せとともに、その後どう生きていくかが大切なんだと思うんです。
まとめ
・命の終わりは予想しにくく、期待しながらも死に向けた備えは必要
・今だけを見るのではなく、あとにどうつなげるかを考えながら今動く
・悲しみの奥にある幸せとともに、どう生きていくかを考える
後閑愛実(ごかん・めぐみ)
正看護師
BLS(一次救命処置)及びACLS(二次救命処置)インストラクター
看取りコミュニケーター
看護師だった母親の影響を受け、幼少時より看護師を目指す。2002年、群馬パース看護短期大学卒業、2003年より看護師として病院勤務を開始する。以来、1000人以上の患者と関わり、さまざまな看取りを経験する中で、どうしたら人は幸せな最期を迎えられるようになるのかを日々考えるようになる。看取ってきた患者から学んだことを生かして、「最期まで笑顔で生ききる生き方をサポートしたい」と2013年より看取りコミュニケーション講師として研修や講演活動を始める。また、穏やかな死のために突然死を防ぎたいという思いからBLSインストラクターの資格を取得後、啓発活動も始め、医療従事者を対象としたACLS講習の講師も務める。現在は病院に非常勤の看護師として勤務しながら、研修、講演、執筆などを行っている。著書に『後悔しない死の迎え方』(ダイヤモンド社)がある。
下記の記事はAERAdotからの借用(コピー)です
安定的な皇位継承を議論する政府の有識者会議が、3月23日からスタートした。女性天皇や女性宮家について話し合われ、政府は年内をめどに論点を整理する方針だ。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号から。
* * *
安定的な皇位継承策に関する有識者会議の主な論点
・天皇、皇族の役割や活動
・皇族数の減少についての意見
・男系男子のみが皇位を継ぎ、女性皇族は婚姻に伴い皇族を離れる現行制度の意義
・女性皇族に皇位継承資格を認めること、女系に拡大することについての考え
・女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する、あるいは皇室の活動を支援することへの意見
・皇統に属する男系男子を皇族と養子縁組することを可能にすること、あるいは現在の皇族と別に新たに皇族にすることについての意見
秋篠宮家の長女眞子さまとの婚約が内定している小室圭さんを抜きに皇室のことは考えにくい。はっきり書くなら、小室さんのことを考える時しか皇室のことを思わない。そんな昨今だ。
が、こう考えるとどうだろう。
「女性皇族たちは、濃淡はありながらも自分たちという存在について悩んでいる。それをまざまざと見せられているのが小室さんという存在で、彼女たちの悩みを受け取め、どう解消していったらよいか、国民の側も考える必要があると思います」
名古屋大学准教授の河西秀哉さん(歴史学)に「安定的な皇位継承のあり方を議論する有識者会議」について尋ねた時の発言だ。詳しく説明する前に、まずはこの会議について。
3月下旬にスタートし、正式名称は「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議」。2019年施行の「皇室典範特例法」の附帯決議が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について」速やかに検討し、結果を国会に報告せよ、と政府に求めた。その宿題を果たすための会議で、座長は前慶応義塾塾長の清家篤さん。千葉商科大学教授の宮崎緑さんや、女優で作家の中江有里さんら男女3人ずつ計6人のメンバーからなる。
■皇族は曖昧な存在
会議に示された検討課題は10項目あるが、上の表に示した通り「女性、女系天皇」「女性宮家」など女性皇族の位置付けが主たるテーマになる。そこで気になるのが「女性皇族」の扱いで、「女性活躍社会」のようにならないか、と危惧している。
女性活躍と言いながら女性は人手不足対策の駒で、実は女性不在。それと同じように、皇室の人手不足対策としての「女性皇族活躍社会」になるのではと思うのは、一つには昨年11月に急浮上した「皇女制度」がある。結婚した女性皇族に「皇女」という呼称を与え、公務員のような立場で公務を続けてもらうというが、「結婚退職→パート労働の義務化」ではないかと思う。
こんなものを検討してしまう政府だから、有識者会議にはぜひ女性皇族のことをきちんと考えてほしい。本当の意味での「女性皇族活躍社会」の道を見つけるべく話を聞いたのが、最初に紹介した河西さん。「女性皇族に限らず、皇族はそもそも曖昧(あいまい)な存在です。何をするのかは皇室典範にも書かれていません」という話から入った。
確かに皇室典範第2章「皇族」が定めているのは、誰を皇族とし、どう呼ぶか、どういう時に身分を離れるかだけ。「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」は12条の規定だ。
「女性皇族は、20歳で成人し、二十数歳で結婚する。それまで、つなぎで公務をしてくれればいい。そんな存在でした。でも今の時代、それでは当事者は人生への期待感を持てないですよね」と河西さん。例えば眞子さまは二つの「総裁」職に就いているが、佳子さまは就いていない。「女性皇族に敷かれたレールに反発があるから、就かないのだと思います」
■小室問題は悩みの表れ
淡々と公務をこなしているように見える眞子さまだが、自分という存在に悩まなかったはずがない。そこに現れたのが小室さんだとすれば、「小室さん問題」は女性皇族の悩みの表れ。「彼女たちの悩みを受け取め、どう解消していったらよいか」国民も考える必要がある。冒頭近くの言葉は、この文脈で語られたものだ。
前提として河西さんが指摘したのは、拡大した象徴天皇の仕事をどうするのか、それを先に話すべきだということ。平成の時代、天皇は皇后とともに仕事を広げ、それが国民の敬愛につながった。だが、人手が減るこれからも続けていくのか。それを話さず、女性皇族の活用を議論するのは本末転倒だ、と。
「眞子さんと佳子さんは20代、愛子さんも今年20歳になります。だからとにかく彼女たちの位置付けをということで、『宮家』の検討に収斂する可能性はあると思います。ですが、退位を強くにじませた16年の『おことば』で、当時の天皇は象徴の役割、仕事について考えを述べた。それに対し、国民の側はどう応えるのか。そこから議論するのが本来だと思います」
次に憲法の話になった。天皇制維持のために「皇位は、世襲のもの」と定めた第1章と、「基本的人権」視点で貫かれた第2章以降。そのずれが「皇室という苦しみ」の根本にある。だから、「制度そのものがなくなれば、矛盾は解消します。でも日本を統合していたものの一つをなくしていいのかというと、なかなか答えが出ない」と河西さん。でも、と言ってこう続けた。
「世襲の人たち、つまり人権が制限されている人たちがいることで『統合』というものがある。国民がそう意識すると、小室さんという存在も違って見えるのではないでしょうか」
(コラムニスト・矢部万紀子)
下記の記事は日刊ゲンダイデジタルからの借用(コピー)です
漬物として年中売られているラッキョウですが、生で購入できる期間は限られていて、その旬は5月から7月になります。
ラッキョウに含まれる栄養素はほとんどが水溶性なので生がおすすめ。甘酢漬けの場合は汁に栄養素が溶け出しているので、汁も一緒に食べることをおすすめします。
たとえば、食物繊維は20.7グラムのうち18.6グラムが水溶性です。特にラッキョウに含まれる食物繊維はなんとゴボウの約4倍!そのため「食物繊維の王様」とも呼ばれているのです。便秘予防に役立つでしょう。
ラッキョウの独特の辛味やにおいの原因はアリシンです。タマネギやニラにも含まれる成分で血液をサラサラにする効果が期待されています。また、エネルギー産生に役立つビタミンB1の吸収を高める可能性があるので、ビタミンB1が豊富な豚肉や玄米などと合わせると疲労回復も期待できます。カレーの豚肉とラッキョウはとても良い組み合わせなので、一緒に玄米ご飯にするなどの一工夫もよさそうです。
とはいえ、アリシンを食べた後のにおいが気になる方も多いはず。そんな時には、リンゴの皮や緑茶に含まれるカテキン、紅茶やウーロン茶、コーヒーなどに含まれるタンニンを一緒に取ることで消臭効果が期待できます。ぜひ活用してみてください。
ほかにも美容効果が期待できるビタミンC、代謝促進が望めるカリウムも含まれていますが、食べ過ぎると胃に負担をかけてしまうので、1日4個を目安にしましょう。
最近話題の黒ラッキョウは生ラッキョウを加熱し、糖とアミノ酸を変色させた加工品です。動脈硬化改善や血栓予防が期待されるシクロアリインが生ラッキョウの2倍以上、活性酸素を抑制する抗酸化作用も通常のラッキョウの約20倍にもなるそうです。また、糖度は30度以上といわれ、ミカンやリンゴの約3倍近い甘さになります。
とはいえ、「加熱」という加工をしているので熱に弱いカリウムやアリシンは生ラッキョウの方が多くなります。目的に応じてラッキョウの種類を楽しんでみるといいでしょう。
古谷彰子
愛国学園短期大学非常勤講師
早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学非常勤講師、アスリートフードマイスター認定講師。