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新保博康 「古布とアロハ」の展覧会

2018年05月02日 | オープンギャラリー

現在、セレネ美術館2Fオープンギャラリーでは、

新保博康による「古布とアロハ」の展覧会を開催いたしております。

アロハシャツといえば、ハワイや南国のイメージ。

鮮やかな色と南国植物、人々の柄が浮かびます。

 

展覧会のキャプションより、アロハシャツの歴史について

   ALOHAシャツの起源は、1930年頃と言われています。最初は日本から輸入されたSILK素材が

   使われ、プリント柄も和柄が主流でした。これには1890年代から始まった日本人移民の影響も

   あるといえるでしょう。それがハワイの風物を題材にしたプリント柄が増え、また素材も安価な

   レーヨン素材が増えていきます。ALOHAシャツは、一つの文化であり人々それぞれのBackground

   に基づくIdentity(存在証明)です。

 

 ハワイは、太平洋を渡ってきたポリネシア人が住みついた島。

1778年、ジェームズ・クックによる発見以降、近代化をたどってきた島です。

近代化による産業や農業などの発展のため、日本を中心として、

様々な地域より、労働者として人々がやって来ました。

昔、日本人は、よく古い布を使って、服をつくろっていました。

家にあった、着物や古い布を再利用することは一般的でした。

持参品であった着物を、シャツの形につくろったのが、起源であるとか、

着物に惹かれた現地の方が、「シャツにして」と頼んだのが起源ともいわれています。

1930年頃、リゾート地として急速な発展を始めたハワイで、

おみやげとして作られるようになりました。

現在では、様々に変化をとげ、ハワイでは男性の正装としても着られるようになりました。

 

ハワイの複雑な歴史の中で、アロハシャツは生まれているのですね。

 

展示してあるアロハシャツは、明治頃などにつかわれた着物の柄である原本をもとに

改めておこして、プリントしたものが使われています。

アロハシャツのルーツ、そして日本人のルーツを感じさせる柄です。

 

  

獅子と牡丹の柄。

獅子の柄にはよくセットとして牡丹の花が添えられます。

獅子が牡丹の花に落ちる雨露をなめると、

「獅子身中の虫」をはらうことができるといわれていて、

柄からは、そのような意図を読み解くことができます。

牡丹の花柄は「幸福」を意味します。

牡丹は漢方にもなっていて、根の皮が使われていますが、

牡丹に含まれるペオノールには、炎症や痛みを抑える働きがあります。

中国では、唐の時代に一般的に広まりました。

獅子は「魔除け」として人気もありました。

「獅子身中の虫」は、故事で、あまり良い言葉とよべませんが、

牡丹の「はらう」というイメージに、げんをかついでいるのでしょうね。

いわれや効果が柄と組み合わさって、柄のセットになっているのですね。

 

他にもいろいろ。

しゃれこうべと狼のセット。実は、狼は雌。しゃれこうべは、雄の狼。

「たちさりがたい」という、繊細な「情愛」をあらわしています。

鶴とももの花のセット。ももは中国では「幸福」を表し、

日本では「幸福」という意味と「悪鬼(邪気)をはらう」という意味を持ちます。

また、「豊かさ」の象徴としてもとらえられることがあります。

鶴の柄は、「長寿」を表します。

鶴は、夫婦になると生涯添い遂げるということから、「夫婦円満」の意味もあり、

鶴の柄は、婚礼にも使われていたりします。

鶴とももの花柄セットは、末永い幸福や豊かさを表すものとして、とらえられますね。

 

だいたい意味合いはこのような感じでしょうが、読み解き方は人それぞれ。

想わぬ図柄の組合せから、「私からしたら、この柄の意味は。。。~よ」

「あなたはどうおもう?」など、柄を通して、会話もはずみますね。

 

 

絵柄に意味を込める、あるいは隠すということは、東洋だけでなく西洋でもあります。

絵画などもそうで、西洋では「メメント・モリ(死を想え)」などのテーマで、

静物画などが描かれたりしています。

例えば、西洋の絵で、「お花に、なぜドクロ?」と思う絵もあるかと思いますが、

それは、生へのはかなさを表すものでもあったりするのですね。

ちなみに、お花はちりゆくはかないものなので、やはりはかなさを表します。

そのような意味では、文化の違いで、「ものの見方もかわる」のですね。

 

 

 

  

他にもみどころがたくさん。

アロハシャツの生地は、シルクです。みた印象とさわり心地がきもちいい。

また、シャツの絵柄の中には、さらに柄が質感を変えて、表現されています。

織り方をかえることによって、このような複雑な表現が可能だそうです。

左写真は、ジャガード織りとサテン織りをまぜたもの。キラキラと質感を変え、絵柄が浮かび上がります。

右写真は、ふくれジャガードという織り方。その名の通り、図柄が膨れ上がっています。

 

 

  

ボタンも、ふしがあったり。メーカーの焼き印があったり。

  

超絶技巧の薩摩ボタンを再現したものもあります。セレネの雑貨コーナーでもおなじみ。

様々な陶工、窯で断られ続け、やっとのおもいで作り上げたものです。

 

 

このような商品をつくるのに、どれほどの手間と時間がかかったのでしょうか。

また、意匠の文化や歴史も考えると、アロハシャツという軽やかなものでありながらも、

深みのあるものとして、みることができるかと思います。

 

 

 

展示期間は、5月12日(土)まで。

2Fオープンギャラリーは入場無料。

開館時間は、9時~17時30分(入館は、17時まで)。

※アロハシャツは、販売もいたしております。

お求めの際は、カフェ・美術館スタッフにお声掛けください。

 

 

 

   

左写真:セレネ近くのトンネル口(「大原トンネル」コンビニポプラ側)からみえる景色

    若葉がいっぱい。奥には、雪が残った山がみえる。

右写真:2Fエントランスデッキからの景色

    緑がいっぱいです。

黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館

富山県黒部市宇奈月温泉6-3

TEL0765-62-2000 セレネHP