今や鉄道ファンや鉄道マニアをあらわす「てつ」は、日常でも使われる言葉になりましたね。
日本で鉄道が開通したのは明治5年(1872年)9月12日。
(現在の太陽暦で10月14日。10月14日は鉄道の日になっています)
東京の新橋駅(汐留)から横浜駅(桜木町駅)の約29キロを結びました。
世の中を見つめ、題材を探している浮世絵師が鉄道を描かないわけがありません。
中には実物も見ずに描いた作品も多数あるとか。(当然間違いだらけ)
でも、今日ご紹介するのはちゃんと実際に見て描いた作品です。
東京汐留鉄道館蒸気車待合之図
三代歌川広重 明治6年1873年
とうきょうしおどめてつどうかんじょうきしゃまちあいのず さんだい うたがわひろしげ
煙をはく蒸気機関車の前には、洋装、和装、さまざまな服装の人がいます。これから乗車する人はもちろん、見てるだけのひともいることでしょう。
先日紹介した「東京日本橋風景」とは違って、ここの人たちはなんだか落ち着いた雰囲気ですね。
(絵の左上にある四角い枠には、料金表と発車時刻がかいてあります)
そしてこの機関車は・・・と、マニアの方ならいろいろ語れるのでしょうけど、残念ながらわたくしは「てつ」ではないので・・・
この絵の特徴は、赤色。
客車の車体や、人々の衣装のほか、空(!)にも使われています。
夕焼けではないようですが・・・、じゃあ赤い空は変か? と聞かれると、いえいえ、そんなことはありません。
絵としてきちんとまとまっていますし、華やかな空気を醸し出しています。
さらに話は変わって、
そもそも浮世絵版画は、墨一色からはじまり、やがて完成した墨の版画に手ぬりで色をつけるようになりました。
とはいえ何色もぬったわけでなく、赤色を要所要所にぬりました。これらは丹絵(たんえ)や紅絵(べにえ)とよばれます。
やがて、版で2~3色の色をつけはじめます。これが紅摺絵(べにずりえ)。
ここまでくると多色木版になるのは時間の問題。わたしたちが思い浮かべる浮世絵である、
多彩な色をつかった錦絵(にしきえ)が誕生します。
さて、明治になると外国から安価な化学染料などが入りはじめます。
その発色の良さにひかれたのでしょう(安かったのもあるそうですが)、赤、青、紫に特徴ある浮世絵が多数刷られました。
今日ご紹介しているのもそうした作品のひとつ。
そして、この時代でもうひとつ特徴的なのが、画中の柱や屋根などを使って透視画法を強調するように描いているところ。
きっと、使ってみたかったんでしょう。うんうん。
なお、本展覧会には同じ特徴を持った作品として
横浜英吉利西商館繁栄図 歌川芳幾
明治4年1871年 よこはまいぎりすしょうかんはんえいず
訓童小学校教導之図 小林清親(肉亭夏良)
明治7年1874年 くんどうしょうがっこうきょうどうのず
が展示されていますので、あわせてご覧ください。
文明開化の華やかな雰囲気が感じられる作品です。
また同じ作家である 三代歌川広重 の
東京名所之内 銀座通煉瓦造鉄道馬車往復図
明治15年1882年 とうきょうめいしょのうち ぎんざどおりれんがづくりてつどうばしゃおうふくず も展示されています。
この作品は時代がくだったこともあり、さらに洗練された軽快な構図をもつ作品となっています。
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幕末明治の浮世絵・探訪展
~幕末の歴史絵から明治の開化絵まで~
期 間 平成26年 3月1日(土)~3月30日(日)
時 間 9時~17時30分(入館は17時まで)
休館日 毎週火曜日
入館料 一般800円 高校・大学生700円 中学生以下無料
会 場 黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館 3階展示ホール
富山県黒部市宇奈月温泉6-3 TEL 0765-62-2000