今回のワークショップの初回に私は参加してくれた皆さんに、「恥を掻く稽古」を要求しました。
「恥を掻く稽古」とは、徹底した自分の為の稽古ということです。稽古の為の稽古ではなく、観客を目の前にした本番の為の稽古ということです。
さらに簡単に言えば体裁を繕わない稽古という事です。
役者や役者になろうとする人間は、他人の視線に敏感なものです。その意識は役者である為には必要なものなのでしょう。しかしそれは役者自身がコントロールしなければならない意識なのです。
例えば、今回のワークショップの様に同じ台本共有し同じ役を複数で演じる場合、私が個々の役者に要求する事は「人と同じ事をしない事」です。自分のオリジナリティを信じ大切にする事です。つまり自分自身をさぐる事が大切なのです。
しかし往々にしてその意識は、稽古場に共に身を置く自分自身以外の存在に向けられる事が多く見受けられます。
つまり他の俳優に自分はどの様に写っているのか、それが気になるのです。
他の俳優に上手いと言われたい、結構やるじゃないかと思われたいと思うのです。
その意識は自分独自という発想から舵を切り平均点を得ようという場所へ俳優を導きます。
その演技は誰もがやる手垢のついたものです。
この意識が私の言う所の「恥を掻く稽古」を阻害します。
俳優が自分の役に迫っていく為には、通らなければならない関門が幾つもあります。
人には、他人にとって下らなく思われることや、何故そんな事をと思われる事でも、それをしなければ次に行けないという意識を持っているものです。
それらを稽古の中で具体的に行い、一つ一つ消して本質に迫って行く事が必要なのです。
それは見っとも無い稽古になるでしょうが、自分の求めている所へ行く為の一番の近道なのです。
オリジナリティへの道は稽古場で、他人の為に稽古をしないことから開かれます。
残念ながら今回のワークで果たされたかは・・・?
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