第5場 その1。
権藤が美樹達に父親の死を知らせに来たその日の深夜。
マーガレットには晃子が留守番をしていた。
純子と栄治はピッコロで美樹達姉弟に権藤に会って詳しい話を聞こうと口説いていた。
仕事を終えたおでん屋の女将の幸子が事の成り行きを心配してマーレットに来た。
幸子 「あら、ママはどうしたの」晃子 「今、ピッコロ。何だか知らないけど栄治さんを含めて四者会談。だから留守番頼まれたの」
幸子 「ああ、そうか。そうだったね」
晃子 「あら、知ってたの」
幸子 「うん、今日イロイロあってね」
晃子 「みんなやけに暗いんだけどさ。・・なに?ねえ、何なの、何の話?」
幸子 「何でもないの、気にしないで」
晃子 「これでも結構口堅いんだけどな、ワタシ。・・女将、私の事信用できない?」
幸子 「晃ちゃんは信用してるけど、あたしの口からは言えないね」
晃子 「ねえ、ちょっとだけ教えて」
幸子 「だから、あたしの口からは言えない様な事なの。あんた察しなさいよ。どうしても聞きたかったら、美樹ママから直接聞いて」
<o:p></o:p>晃子は幸子の意外な事を目撃していた、その事を幸子に質すと・・・
幸子 「なによ。あたしは聞かれて困る事なんかありません」
晃子 「そう。ねえ、女将は相原福祉専門学校に何か関係ある?」<o:p></o:p>
幸子 「どうして?」<o:p></o:p>
晃子 「この前女将が学校から出て来るのを見ちゃったの」<o:p></o:p>
幸子 「あら、見られちゃった」<o:p></o:p>
晃子 「何であんな所に」<o:p></o:p>
幸子 「行ったのかって?通っているからよ」<o:p></o:p>
晃子 「通ってるの?なんで?」<o:p></o:p>
幸子 「そりゃあ、資格取るためによ」<o:p></o:p>
晃子 「資格って何の資格」<o:p></o:p>
幸子 「介護福祉士」<o:p></o:p>
晃子 「・・どうして。おでん屋だって忙しいのに。ああ、これも聞かれちゃ困る事?」<o:p></o:p>
幸子 「そんな事はないわよ。うん、晃ちゃんだったらいいか。・・・実はね、去年母が体を悪くしてね」<o:p></o:p>
晃子 「アア、そういえばお店を休んだ事あったね。その後、具合はどうなの」<o:p></o:p>
幸子 「今は回復して畑仕事もしてるんだけど、もう歳だし、いつかは面倒見る為に故郷に帰らなきゃなって思ってるんだ。なんせ、親一人子一人だから」<o:p></o:p>
晃子 「ああ、そうなんだ・・ねえ、店は?店はどうするの」<o:p></o:p>
幸子 「そりゃ、やめる事になるわね。でも帰っても田舎でおでん屋出来るような所じゃないから、働かなきゃね。それで介護福祉士の資格って訳」<o:p></o:p>
晃子はふと純子の手相占いを思い出す。
幸子 「決まってるって?」
晃子 「だから、女将の後釜」
幸子 「何言ってんの、まだまだ先の事よ。この話をしたのは晃ちゃんが初めてなのよ、オーナーにも話してないんだから。とにかくあたしが手に職つけないと進まない話なの」晃子 「そうなんだ。・・・アレ、ママの言ってたのこの事かな」
幸子 「えっ、何?」
晃子 「いえ、別に・・」
幸子 「まあ、いずれはこうなるのは分かっていたけど、ずっと他人事だった。でも、アッと言う間よ、時間の経つのは」
晃子 「そうよね、わたしもグズグズしてられないな。・・・ねえ、女将こんな事言ったら怒る」
晃子は自分の考えを幸子にぶつける。
幸子 「・・・何よ、言ってみなさいよ。怒るかどうかは内容次第よ」晃子 「気が早いのは分かってるけど・・・私ね、昔から自分の店を持つことが夢だったの、だからその資金をためる為にピッコロでもアルバイトやってるんだけど・・・」
幸子 「ナニよ、晃ちゃん。あんたがおでん屋を?」
晃子 「うん。怒った?」
幸子 「別に怒らないけど。おでん屋じゃないでしょう、あんたの夢の店って」
晃子 「そうなんだけど・・ねえ、私じゃ難しい?」
幸子 「そんなことはないけど、もあたしゃすぐには辞めないよ。よく考えた方がいいよ、これから他にいいのが出て来るかもしれないんだから」
晃子 「うん・・でも・・・なんか縁を感じるんだよね。ねえ、女将。やるかやらないかは別にして、おでんの仕込とか教えてくんない。憶えたいんだ、お願いします」
幸子 「それはいいけど・・・あたしゃ厳しいよ」
晃子 「覚悟してます。お願いします、先生」
幸子 「先生か・・・そう言われちゃあね」
晃子 「本当?いいの」<o:p></o:p>
頷く幸子。
ここで新しい関係がうまれた。
その一方で純子を交えた話は姉弟の間に亀裂を生んでいた。
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続く。
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