大概の役者は新しい作品に入り真新しい台本を手にした時、今度はこうやろうという意欲の中にいます。
その意欲の中身は台本との語り合いの中から生まれたものではなく、こんな感じでというやりたいという自分本位の都合から生まれた意欲です。
その意欲から放出された結論(演技)はあいまいで抽象的です。
それは相手があるという事を失念した、または相手は自分の思うようにやる筈であるという思い込みの結果です。
その結果が良い筈がありません。
この様な結果が現れた時、大方の役者の意欲は急速にしぼみます。
そして一度出して、拒否された演技にすがるのです。同じような場所に立ち、同じような台詞を吐くのです。
この様な時の役者の視野は非常に狭くなっています。
この視野を広げるための方法はただ一つです。台本を読むことです。台本と語り合うことです。きっちりと全体像を掴みなおすことです。そしてそこにある自分を見つけるのです。
どんな貴重なアドバイスも具体的のものを持ちえていない役者には、馬の耳に念仏です。
安定し安心しきった、決まりきった芝居が面白いですか。
人生は不安定なものです。そこに生きる人間もまた明日をもしれぬ不安定な存在なんです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます