サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境新聞連載:「再生可能エネルギーと地域再生」より、2回目:再生可能エネルギー条例の動き

2016年07月10日 | 再生可能エネルギーによる地域づくり

●再生可能エネルギーの地域施策化

 

 2012年以降、地方自治体における再生可能エネルギーに関する条例の制定が活発化してきた。それまでも県でのエネルギー関連条例がなかったわけではないが、2012年以降の条例は基礎自治体のものであることが特徴である。

 

 この動きの背景には、2011年3月11日の東日本大震災を引き金とした福島原子力発電所の事故があった。つまり、原子力や国策に依存するエネルギー構造への危機意識があったことはいうまでもない。

 

 また、本連載1回目に記したように、再生可能エネルギーの普及拡大を目指して2012年7月に導入された固定価格買取制度(FIT)においても、地域主導性に欠けたまま、外部資本による大規模な発電所が立地することへの懸念もあった。再生可能エネルギーの立地を地域主導で行うことで、環境保全への配慮を促し、かつ地域の活性化を図ろうというのである。

 

 再生可能エネルギー関連条例を制定した地域は、2011年度に2地域、2012年度6地域、2013年度6地域、2014年度3地域、2015年度4地域と、地道ではあるが増加傾向にある(筆者にカウントによる)。ただし、この数には、真庭市や赤穂市のように自然環境等と再生可能エネルギー発電事業との調和の手続きを示す条例や、大田区のように一定規模以上の開発に再生可能エネルギーの導入計画を求める条例を含めていない。

 

●再生可能エネルギーに取り組む地域の理念と仕組み

 

 紙面の都合上、すべてを紹介できないことをご容赦いただくとして、特徴のある条例を表に示す。


 条例の前文も含めて理念のみを強く打ち出したのが、滋賀県湖南市である。同市の条例制定の後押しをしたのは、科学技術振興事業団の研究開発プログラム「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」の領域総括を務めた堀尾正靱氏(東京農工大学名誉教授)である。2012年6月には、科学技術振興事業団が「自然エネルギーは地域のもの」という緊急シンポジウムが開催された。このシンポジウムをきっかけに、湖南市長が堀尾のアドバイスを得て、条例を制定することになった。

 

 同条例では、あまり例がない前文方式で理念を重視している。第1条では、「地域自然エネルギーは地域資源」であると宣言し、地域経済活性化につながる取組みを推進し、地域が主体となった地域社会の持続的な発展に寄与することという目的を示している。また、第3条では理念として、(1)市、事業者及び市民の協力、(2)経済性に配慮した活用、(3)地域に根ざした主体による地域の発展に資する活用、(4)地域内での公平性及び他者への配慮、4点を示した。

 

 新城市、飯田市、小田原市等では、地域主体による再生可能エネルギーへの取組みを支援する仕組みを、条例により整備した。地域住民等が主体となる再生可能エネルギー事業を認定し、専門的かつ資金的に支援する仕組みを整備し、公民協働の事業を立ち上げてきている。

 

●条例がある地域の条例前の動き、条例がなく動きだしている先進地

 

 注意しなければならないのは、条例が制定されて、地域が初めて動きだしたというわけでないことである。例えば、滋賀県湖南市では、1997年に、障がい者とそうでない者が一緒に働く「なんてん共働サービス」という会社の屋根の上に、全国初となる、事業性をもった市民共同発電所が設置されている。この1990年代の市民共同発電が、条例制定と相まって、湖南市の今日の動きの基盤となっている。

 

 また、再生可能エネルギーの先進地と言われる地域の多くは、条例がなくともこれまでの取組みがあり、近年の取組みの活発化がみられる。条例が新たな動きの全てではないが、エネルギーを地域主導で活用する動きの象徴が条例制定であるといえるだろう。

 

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