サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

低炭素都市づくりと人づくり・地域づくり

2011年04月26日 | 気候変動緩和・低炭素社会

 

 地域の行政や現場で活動を行う方と意見交換をすると、「地域の現場では高齢化や過疎化、地域経済の衰退等が深刻であり、地球温暖化対策の優先順位を1番にはできない」という声を聞く。

 

 また、ある政令市で、低炭素都市の計画策定の準備段階において、関係部局合同の勉強会をやったときのこと、「都市計画においては、温暖化対策と利用者の快適性ニーズの充足は相反する場合がある。地球温暖化対策だけを優先するわけにはいかいない。」という。どちらの声も至極もっともである。

 

しかし、地球温暖化対策には、(従来施策や価値規範に対して)相反的なものと両立的なものがある。相反的な部分だけを捉え、地球温暖化防止の優先順位が低い、後ろ向きであると断定することはできない。

 

両立的な地球温暖化対策を優先的に実施すれば、短期的に優先する地域活性化対策と長期的に取り組む地球温暖化対策において一石二鳥であり、これこそ優先順位が高い施策となろう。ここで両立性とは、環境対策が経済面、社会面でも効果をあげることを示す。

 

両得(WIN-WIN)あるいはコベネフィットといってもよい。例えば、家庭生活における省エネは、地球温暖化防止対策であるとともに、家計の得となる。地域における温暖化対策も、地域経済の振興や住民の暮らしの豊かさにつなげていくことが可能である。

 

また、一般的に環境対策には、規制対応(受動的)、未然防止(予防的)、機会追求的(能動的)といった3つのステージがある。「自分たちだけで対策を実施したとしても効果が現れるかどうかわからない」というように、問題の要因と対策効果の不確実性、あるいはフリーライダー問題が絡み合い、受動的になりがちな温暖化対策である。

 

しかし、温暖化対策のみあらず、地域活性化にもつなげる対策を実施すれば、地球温暖化対策としての効果は仮に不十分であったとしても、地域活性化という効果が担保される。そして、地球温暖化対策に外部的な追い風を捉え、地域の資源の活用や地域活性化の施策を進める機会(チャンス)としてくことが考えられる。

 

 地域における温暖化防止への取組みを地域づくり・人づくりと一体的に展開していく方向性と可能性について、要点を示す。

 

まず第一に、環境と地域づくりの統合概念の変遷を振り返ると、激甚な健康被害をもたらした公害問題への対策やエンドオブパイプ対策が一巡し、不特定多数を発生源とする問題(都市生活型公害)等がクローズアップされてきた1990年代以降、環境政策は環境面だけでなく、経済や社会面、あるいは地域づくり・人づくり全般に踏み出すことが必然となってきた。

 

こうした流れは、地域における地球温暖化への取組みについても期待される。ハード対策優先でないと二酸化炭素排出量の大幅な削減が担保されないという呪縛を離れ、地域の経済・社会にとってもプラスを創出していくという地域の主体性と戦略性を取り戻すべきではないだろうか。

 

第二に、地球温暖化対策による経済効果は、設備投資や省エネによるコスト削減、市場創出等の効果として期待される。しかし、地域内の産業連鎖関係を構築しないと、地域内の投資額は地域外に流出するだけである。

 

また、地域内の消費者の意識を高め、地域内の環境消費を増大させるためにも、消費者とつながるような流通、広報等をデザインしていく必要がある。

 

地球温暖化対策は、地域内の産業連鎖の再構築や消費者の域内消費の促進に積極的に踏み込み、環境経済戦略を内包するものであってほしい。そうでないと、補助金づけの温暖化対策では、ゴーストタウンのような施設や設備を後世に晒すことになるのではないだろうか。

 

第三に、地域内の住民による温暖化防止行動の促進のためには、主体の意識と主体間の関係として定義される地域環境力を高めることが期待される。

 

この地域環境力は、多くの主体を巻き込みながら実施する環境施策と住民同士のつきあいを継承・創造していく地域密着の取組みの相乗効果によって形成・強化される。

 

地域環境力を高めるという明確な目標をもち、地域間の主体をつなぐデザインに踏み込んだ地球温暖化対策が期待される。

 

 

 

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