サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

持続可能な地域づくりのチェックリストを用いたワークショップ

2013年02月10日 | 持続可能性

「地域の持続可能性」をチェックする45の項目を作成し、それを用いた住民による地域診断と地域の未来を話し合うワークショップを試行した。

 

チェックリストは、環境、経済、社会等の15領域毎に3つのチェックリストを当てはめ、45項目で構成する。あるべき持続可能性という観点から75項目を設定し、全国でのWEBモニターアンケート調査の結果から、15領域の代表性がある45項目に絞り込んだものである。思いつきで45項目を設定したわけではなく、あるべき持続可能性の規範を「他者への配慮」「将来リスクへの準備」「主体の活力」の3つと設定し、各規範を15領域に当てはめて、チェックリストを設定し、その中から統計的に有意なものを絞り込んだものである。

 

地区での試行は、次の手順で行った。

 

・自らが住んでいる地域について、45のチェックリストへの該当有無を回答してもらう。該当有無は、チェック項目毎に、「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」、「どちらでもない」、「どちらかいえばそう思わない」、「そう思わない」の5段階で回答してもらった。この際、現在の状態よりも変化の状態が重要であると考え、各チェックリストについて、10年間の変化の程度を回答してもらった。

 

・住民の回答結果をもとに、15領域毎に回答平均スコアを求めた。平均スコアは、各15領域に対応する3つのチェックリストの回答の平均である。「そう思う」を+2点、「そう思わない」を-2点として、1点ずつ刻んで、回答に得点を与えた。

 

・15領域毎の平均スコアを、レーダーチャートに示し、どの領域が10年間でよくなっているか、あるいは悪くなっているかがわかるようにした。この際、事前に実施した全国WEBモニターアンケート調査結果、あるいは対象とした2地区の比較するグラフも作成し、該当地区の特徴が比較できるようにした。

 

・住民によるチェックリストの集計・分析ができたのち、住民集まってもらって、結果に報告会を開催した。これにより、これまでの10年間の変化に対する住民認知の状況を共有してもらい、それを踏まえて、「これからの10年」を話し合ってもらうこととした。

 

・「これからの10年」の議論は、「どのような領域について、どのような取り組むをすべきか」について、班毎にアイディアを出し合い、ファシリテータがそれを付箋紙に書いて、模造紙上に、15領域との対応がわかるように貼り付け、整理するという方法で行った。できるだけ年齢別にグループを分ける予定であったが、今回の試行では参加者のほとんどが60歳以上の地域では年齢別の班分けは行わず、もう1つの地域でも40歳・50歳台チームと60歳以上チームの2つに分けるにとどめた。

 

・ワークショップの結果をファシリテータがとりまとめて、発表し、総括をした。今後、チェックリストへの回答結果、ワークショップの結果は、レポートにとりまとめ、各地域に報告をする予定である。

 

今回は研究プロジェクトの一環としての試行であるため、ワークショップは1回限りである。それでも各地域での今後の議論に役立つ情報が整理できたと思われるので、各地域にまとめた結果を返していく。

 

また、別の地域では、チェックリストを用いた地域診断を入口にして、地域の未来を何度かの会合に分けて話し合い、地域の計画を住民主導でつくっていくことを検討している。チェックリストは、各地域での検討を行う際の”ものさし”であると考えている。

 

「持続可能な地域づくり」というと概念的な議論か、個別の実践を語ることが多いが、本研究では「持続可能な地域づくり」の姿をチェックリストという形で具体化し、それを住民に使ってもらう道具とすることを目指して、試行まで行った。今回の試行では、開発したチェックリストを用いた住民ワークショップが有効であるいことを検証できた。

 

また、今回試行した2地域では、15領域中10を超える領域で、10年間の変化がマイナスの方向であるという結果であった。全国WEBモニターの結果では、10年間の変化ではほぼプラスマイナスゼロであり、そのまま受け取れば、この2地区が全国平均よりも地域の持続可能性が損なわれる傾向にあるという結果になる。

この結果は地域の実態を反映していると考えられるが、悲観することはない。2地区では、この10年間でよくなっているという領域は3つ程度あり(2地区によって異なる)あり、それを地域の個性として伸ばすことを考えることが重要である。マイナスになっている領域は、地域(この場合は千人程度の地区)の中だけでみればマイナスであるが、必ずしも地域ですべて整備していくべきものではなく、他地域と連携したり、分担していくことで、地域になくとも、暮らしにおいては問題がないと考えることもできる。

 

また、2地域でのワークショップでは、基幹道路整備を梃にした交流や地域が持つ良さに集中的にこだわるという意見が出された。そうした中、交流や機能分担、個性化を図るうえで、同じ地域内で各々がばらばらと行うのでなく、地域の方向性を共有することが必要であると考えられた。また、限られた地域だけで何かをしようとするのでなく、地域間の連携により地域間で目標を共通化して、打ち出していくことも有効であるという意見があった。限られた時間での試行であったが、十分に有意義な機会となったと思う。

 

それから、2地域でのワークショップで出されたこれからの10年での取組では、環境、経済、社会という各々の領域に閉じた取組みではなく、環境×経済、経済×社会といった複合的・統合的な取組みが多く出されたという指摘もいただいた。そもそも、環境と経済、社会は地域内の中で統合的に存在したのであり、それを分断してきた歴史がある。その分断も見直し、統合的な地域での暮らしや生業を再構築することこそ、持続可能な地域づくりが目指すべき基本方向であるだろう。多くの示唆が得られた。

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