サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

生物多様性と企業CSR

2008年05月08日 | 生物多様性・自然保全
 数年前、「企業CSRにおいて、生物多様性への取組みが弱い。生物多様性に係る取組みをやれば、先駆性がありますよ。」という人がいた。

 確かに、自然とのふれあいやビオトープの整備などを行う企業が多いが、生物多様性の基盤となる自然生態系を、正面に捉えた取組みはほとんどなかったと思う。


 今年度、環境省が、生物多様性に係る企業CSRのガイドラインを作成する。調査業務の企画公募の説明会があったが、残念ながら行けなかった。応募はしないが、関心があったので、少し調べてみた。


 「第三次生物多様性国家戦略」では、企業など事業者の生物多様性への配慮項目を、次のように列挙している。

・生物多様性の保全に配慮した原材料の確保や商品の調達・製造・販売

・保有している土地や工場・事業場の敷地での豊かな生物多様性の保全、投資や融資を通じた生物多様性の保全への配慮

・生物多様性の保全に関する情報開示

・社会貢献活動としての国内外における森林や里山などでの生物多様性の保全への貢献

・企業・公益法人の基金による生物多様性の保全を目的に活動するNGOへの支援も企業など

・政府や生物多様性条約締約国会議など国際的な組織が提供する生物多様性の情報に関心を持つ

・企業活動の中で形成されるネットワークを通じ、国内外の企業に生物多様性の保全と持続可能な利用に関する取組を促し、連携してその推進に努める

 ちなみに、同戦略では、「生物多様性」を、「つながり」と「個性」と言い換え、次のように説明している。結構、おもしろい説明だ。

・「つながり」というのは、食物連鎖とか生態系のつながりなど、生きもの同士のつながりや世代を超えたいのちのつながりで。また、日本と世界、地域と地域、水の循環などを通した大きなつながりもある。

・「個性」、同じ種であっても、個体それぞれが少しずつ違うことや、それぞれの地域に特有の自然があり、それが地域の文化と結びついて地域に固有の風土を形成していること。

・「つながり」と「個性」は、長い進化の歴史により創り上げられてきたものであり、こうした側面を持つ「生物多様性」が、さまざまな恵みを通して地球上の「いのち」と「暮らし」を支えている。


 一方、2008年4月に、『企業と生物多様性イニシアティブ』(Japan Business Initiative for Conservation and Sustainable Use of Biodiversity(JBIB))が設立された。味の素、INAX、花王、鹿島建設、サラヤ、積水ハウス、大和証券グループ本社、竹中工務店、帝人、富士ゼロックス、松下電器産業、三井住友海上火災保険、三井住友銀行、リコーの14社が発起人だ。

 これは、2007年11月に三井住友海上火災が開いた生物多様性のシンポジウムがきっかけだという。同社は、複数の企業が力を結集したほうが継続的な活動ができると団体の設立を提案した。民間主導の取組みがスタートしたことが、なにより特徴的である。

 環境省のガイドライン、企業の自主的取組が、いよいよと立ち上がった。

 地球温暖化対策などと比較して、人類への危機や経済的手法の適用、機会追求型のビジネスチャンスなどが小さいように思える生物多様性という問題に対して、人間中心的ではない、自然中心的な観点に、企業がどのように対峙するのか。その規範の確立を期待していきたい。

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2 コメント

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Unknown (あーすねっと)
2008-05-09 11:09:14
資本主義(株式経済)から、新たなる『公益資本主義』(公益株式の構築展開)の時代への穏やかな移行が もはや、必要ではないでしょうか !! end
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多様性? (コウノトリ派)
2008-05-15 14:50:15
セミナーに行って勉強します。
うーん、奥が深い!

これどう思います?

http://www.d-labo-midtown.com/index.php
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