サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

福井県池田町 ~強い紐帯の力

2008年12月06日 | 環境と教育・人づくり
写真:池田町内・お餅の喫茶店

福井県池田町に行ってきた。人口3000人、福井市に面し、山間の盆地にある農業の町である。


この町の取組みの特徴は、町ぐるみの有機農業、住民による生ごみの回収、環境向上計画(いわゆる環境基本計画に相当)の策定のための100人委員会、そこに参加した町民によるNPOの活動等にある。

一つひとつの取組みは、宮崎県綾町等に習ったものであったり、決して斬新なものではない。この町のすごさは、活動が継続され、そこに3000人の住民の多くが参加していることにある。

例えば、有機農業を実施している割合は7割(農地面積ベース)、生ごみの回収に参加する住民は80人強、NPOが配布する環境の機関紙は区長会を通して全戸に配布、河川清掃やセイタカアワダチソウの駆除の活動には全集落が参加等といえば、この町のすごさが伝わるだろうか。廃油を回収したエコキャンドルや商店と連動したエコポイントなど、新しい取組みも立ち上げてきている。

また、この町の特徴は、普通の住民が地域活動のリーダーとなっており、そうしたリーダーの働きかけに全ての住民が協力しているということになる。もちろん、町長のカリスマ性やそれを支える元農林水産省の職員等の存在が大きいが、そうしたカリスマ性や実務能力だけでは、町ぐるみの動きにはならない。

なぜ、こんなに町民の参加率が高いのか。2日間のヒアリングで得た結論は次のよなことだ。

・盆地文化としての地域のまとまりがある。また、マジメ、正直さ、勤労奉仕の感覚、頼まれたら断れない、一緒にやるのは当たり前、仲がいいという町民の特性がある。

・町の活動は元気だが、このままではなだめだという危機感がある。いい町にしたいという意識は皆が持っている。

・有機農産物のアンテナショップの成功等が、マスメディアで取り上げられたことなどから、町外の人から、池田町はすごいなと言われることが多くなった。これにより、住民が勇気づけられ、自身を持つようになっている。

結合的なソーシャル・キャピタル(強い紐帯)が強いといえばそれまでだが、なんでそんなに仲良く、一生懸命なのか、都市住民には理解はできても共感はしがたい気もする。

高齢者の独居世帯の多さ、購買の域内流出と商店の衰退、地元建設業の衰退など、
条件不利地域としての問題は多い。今後は、環境や農業面ので取組みの成功を活かし、森林・林業での新たな展開、農商工連携や第6次産業など、課題となろう。

強い紐帯にしても、祖父母の世代が地域活動の担い手であるうちはいいが、世代が変わっていくなかで、それが継承されていくのか。

1990年頃からの有機農業、2000年代の環境面での取り組みの成功を経て、見直しの時期に来ているのも確かなようだ。
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