「環境とジェンダー」をテーマにしている先生と話をする機会があり、男女共同参画型の環境政策の必要性を考えるようになった。
男女共同参画型の環境政策が必要と考える理由を、2つの点をあげておく。
1つは、行政が地域住民の意見を聞いて、環境政策の立案や進行管理を行う場合、女性の参画が圧倒的に少ないという点である。地域の環境政策における住民参加は、参加メンバーが固定化しがちで、また対立する意見が解消されることなく、創造的な発案がなされにくいと感じることが多々ある。その一因が、男女共同参画になっていないということにある。
2つめは、女性と男性で、環境問題の受け止め方や環境問題の解決のための方法が異なるという点だ。例えば、筆者が最近実施したアンケート調査では、女性の方が、気候変動の家計や生活への影響の認知度が高いことが明らかになった。また、女性は自分のできることを主体的にやろうという自助の姿勢が強く、そして省エネ行動等の緩和行動と気候災害に対する情報入手等の自助的な適応行動の実施度が高いという特徴が抽出された。これに対して、男性は気候変動の地域への影響認知が高く、公助や互助で解決しようという姿勢が強いという傾向がある。男性ばかりで環境対策を考えると、頭でっかちで偏った内容になりがちである。
歴史をさかのぼれば、1992年6月の国連地球サミットで採択された「地球環境保全のための行動計画」(アジェンダ21)の第24章に、「持続可能かつ公平な開発に向けた女性のための地球規模の行動 環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築に向けて、これまで多くの女性が消費、家計の分野を中心として、環境保全のために積極的に取り組んでおり、このような女性の知識や経験が社会的活動の分野を含めより広く活かされることとなるよう、環境保全に関する様々な分野において、男女の共同参画を促すことが重要である」と記されている。
また、日本国内の第3次男女共同参画基本計画(2010年)においても、共同参画の第14分野に「地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進」が取り上げられている。
今更、男女共同参画型の環境政策が必要だというまでもないところだ。しかし、それが出来ていない。地域で環境基本計画を策定する際に、女性の参加比率を高くしたり、女性だけのグループで議論をしたり、また環境基本計画の中で男女共同参画を強調としたりと、もっと明示的に男女共同参画に取り組むことが必要であろう。