サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境新聞連載:「再生可能エネルギーと地域再生」より、21回目:みやま市の再生可能エネルギーと地域づくり(1)

2018年04月27日 | 再生可能エネルギーによる地域づくり

みやま市は東部は山地が連なり、西部は有明海の干拓によって開かれた低地、全体として平坦な田園地帯が広がっている。みやま市の人口は約3万8千人。主な産業は農業であり、水田の他、セロリ、みかん、苺のあまおうが栽培されている。製造業も食品産業が多い。

この地で、地域経済の自立を重視して、地域主導で再生可能エネルギー事業を位置付け、メガソーラーを整備し、「みやまスマートエネルギー(株)」という新電力会社に発展させてきた(表参照)。

 

●遊休地を利用する行政によるメガソーラーの設置

高速道路ICができて間もない時、市長の公約に企業誘致が上げられていた。市長はみやま市出身のUターン者である。大阪の商社に勤めていたことから、民間の感覚を持って、これからは地域も稼いでいかなくてはならないと考えていた。地元に戻って事業を興し、県議会議員を勤め、市長になり、地域の活性化を考えていた。みやま市では就職、進学を機に地域外に出てしまい、高速道路の整備等により、いつでも帰って来られることから、近郊都市に人口が流出していた。

メガソーラーを整備した10haの土地は15年間遊休地であった。地域活性化のための企業誘致を考えていたが、特別高圧線が敷地を縦断しているため、建物の設置に制約があった。そうしたとき、固定価格買取制度が導入される直前で、各地でメガソーラー施設を導入する動きが始まっており、みやま市にもこの遊休地を利用して、大手の電気会社から施設を作りたいという申し出があった。

しかし、外部の組織がメガソーラーを設置しても、収益が市外に流出してしまうため、市で発電事業会社を作ったほうがよいと考えた。市が出資、地元の商工業の事業所、40人ほどに声をかけ出資を募り、特別目的会社SPCを立ち上げた。1年ほど前から動き始め、2013年7月にメガソーラーが完成した。

このメガソーラーの設置について、西原親市長は、「将来の財政逼迫に危機感をもっていた。収入を自主財源にあてたいという思惑があった。毎年地代等を含め、2,000万円程度入ってくる。」と考えたという。

 

●西原市長と磯部社長の出会い

パナソニックの住宅関係に勤める磯部達氏(みやまスマートエネルギー(株)の社長となる)が、営業でみやま市に訪れた。ドイツのシュタットベルケ の事例をもとに、日本でもスマートエネルギーの時代になると市長に話した。市長は地域経済が回る構造を作りたいと考えていた。みやま市の1年間の電気にかかる消費量は年間30~40億円もあり、電気事業により地域外へ流出するお金を抑え、CO2削減にも繋げられるとして、磯部氏の提案が市長の考えと合致した。

磯部氏は、藤沢SST(サステイナビリティ・スマートタウン)の計画が始まる頃、海外のスマートシティを参考にまちづくりを研究していた。日本でも、特にドイツのシュタッドベルケのビジネス形態が普及していくと考え、エネルギーを中心とした街づくりについて、全国のいくつかの市長に話をした。

その中で、動き始めた自治体の1つがみやま市である。当時、みやま市長は九州市長会の理事をしていて、「モデル的に作り上げたものを九州に広げられる」と言っていたことも、みやま市に重点的にとりくむことになった理由であった。

 

●大規模HEMS情報基盤整備事業へのみやま市の参加

2014年度から2015年度にかけて、経済産業省の「大規模HEMS情報基盤整備事業」が開始されることとなった。東日本大震災以降の原発停止などによる電力需給の逼迫や温室効果ガスの削減が社会的に問題となる中、一般家庭における省エネ・ピーク対策を進めるための効率的なエネルギーマネジメントを行う事業者が重要となるが、一般家庭向けのエネルギーマネジメント事業者の参入が進んでいない。このため、「民間主導によるHEMS普及促進、一般家庭における経済性の高いエネルギーマネジメントの実現に向け、多数のHEMSを一元的にクラウド管理し、電力利用データの利活用を推進する」という考え方で、この事業が開始された。

東日本電信電話(株)、KDDI(株)、ソフトバンク(株)、パナソニック(株)の4社を幹事企業とするコンソーシアムが採択され、大規模HEMS情報基盤の構築、全国約1万4千世帯へのHEMS導入、電力データを活用したサービスの検証が開始された。

全国5地域でHEMSの集中的な設置が行われたが、九州地域ではみやま市のみが実証地域となった。みやま市には14,000世帯があり、7分の1である2,000世帯にHEMSをつけ、タブレットを提供し、様々なサービスを模索した。

HEMSでは、電気の見える化や高齢者の見守りサービスを実施した。後者は電力需要の日頃と違う動き、電気の使い方の異常を見つけ、ゆるやかに見守る。例えば、ポット、エアコンが通常の動きと違うと連絡したり、周囲に様子を伺いに訪問するように促す。

 

  今回示した行政のメガソーラーとHEMSの取組みを経て、地域新電力が設立された(次回につづく)。

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