醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  370号  白井一道

2017-04-14 15:08:56 | 日記

 今年の花見

侘助 ノミちゃん、今年の花見はどうだった。
呑助 毎年、古利根川の堤で花見をしているんだけど、寒かったですよ。
侘助 いつ、したんだい。
呑助 四月上旬でしたよ。
侘助 雨にたたられたからなぁー。
呑助 いや、天気には恵まれましたよ。ポカポカと温かい日でしたよ。蕎麦打ちの仲間、七人で楽しかったですよ。
侘助 他にも花見をしていたグループがたくさんいたんじゃないの。
呑助 そうですよ。七人で日本酒の一升瓶二本、缶ビール一二本、焼酎にホッピー。それぞれ一品つまみを持ち寄って楽しんだんだ。
侘助 いつものように若い女性を呼び込んで楽しんだんだな。
呑助 そうなんですよ。着物を着た若い女性が花を愛でゆっくり歩いて来たところ、一緒にどうですかと、仲間が声をかけたら、いいんですかと座ってくれたものですから、酒は何がいいいですかと、言うとコップを差出し、日本酒をいただきたいわと言うじゃないですか。時代は変わりましたよ。
侘助 そうなんだろうね。今じゃ、女性だけで居酒屋に行く時代だからな。
呑助 若い女性が一人加わるだけで座が盛り上がりましたよ。
侘助 酒のピッチも上がったわけだな。
呑助 私が分かっているのはそれまでなんですよ。
侘助 酒を飲んで寝てしまったんだな。
呑助 そうなんですよ。まったく記憶がないんですよ。気が付いたときは周りが真っ暗になっていた。
侘助 どこで寝ていたの。
呑助 土手にあるあずま屋の椅子の上で寝ていたんです。花見を終えた後、あずま屋に移り、そこで寝てしまったようなんです。一人っきりに置いてけぼりをくらいまして、寒いな、寒いなという気持ちがするんですが、もう少し、寝ていたいという気持ちなんです。
侘助 一人寝て、夜桜を楽しんだんだな。
呑助 夜の十一時まで、寒さに耐えて寝てしまいました。それが私の今年の花見でしたよ。
侘助 他の仲間はどうしたのかな。
呑助 私を心配する仲間は一人もいず、皆はカラオケに行ったようです。
侘助 仲間とノミちゃんは「花見」という飲み会を花の下でしたということなのかな。
呑助 そういうことになれますかね。ちっとも花を見て酒を飲んだという記憶がありませんからね。単なる飲み会を花の下でしたまでですよ。
侘助 来年もまた同じような花見をするわけね。
呑助 そうなりますね。
侘助 どうして季節が廻り、桜の花が咲くと花見という飲み会がしたくなるのかな。
呑助 それは定年退職したからなんじゃないですかね。ありあまる時間がある。仲間がいる。酒がある。旨いつまみがある。家族から解放される。季節がくると花見でしようという気持ちなんじゃないですかね。
侘助 ノミちゃんは現役の頃は職場の仲間と花見はしたことないの。
呑助 現役の頃、花見をしようという気持ちが全然ありませんでしたね。仕事のことでいっぱいでした。花見どころじゃなかったというのが実際でしたね。