唎酒を楽しむ
・近藤さん、「知縁の会」の唎酒も三回になりましたなぁー。
近藤 そうですな。楽しみにしてくれる仲間がおりますもんでね、私自身は辞めたいなんて思うんですがね、頼まれると断れないんですわ、性分なんでしょうな。
今回、唎酒する酒は何ですかね。
・「美丈夫」純米大吟醸1.600
「土佐鶴」大吟醸2.380
「三連星」純米大吟醸無濾過生原酒1.696
「菊姫」山廃純米1.400
「巻機」純米吟醸1.522
「日本橋」大吟醸2.280
「日本橋」普通酒628
近藤 七本も唎酒するんでかの。
・いや、七本も唎酒するんじゃ、とても全問正解者はでないでしょう。用意したお酒が七本です。全問正解者への景品として二本用意しました。景品は大吟醸酒にしようと思っています。
近藤 そうですか。そうしていただいて結構です。値段を見ると普通酒というのは実に安いものですな。大吟と普通酒では1.600円以上の差がありますな。何が違うんですかな。
・一番大きな違いは原料の違いですね。
近藤 米の種類が違うんですかな。
・もちろん、それもありますが、米の磨きが違います。
近藤 米の磨きとは何ですのん。
・精米歩合です。米の透明部分を削り、白いデンプン質の部分を多くすると雑味の少ないお酒ができるんですよ。
近藤 純米大吟醸と大吟醸というのは何がちがいますのん。
・それは醸造用アルコールが添加されているかどうかということです。
近藤 醸造用アルコールというのは甲類の焼酎のことでしようかな。
・まさにその通りです。純米酒に25度の焼酎甲を入れると趣のあるお酒になるようですよ。
近藤 この間、みりんに焼酎をいれたものを飲みましたな。
・「本直し」ですね。江戸時代は「柳蔭」などと隠語で言っていたようです。昔、野田で醤油樽の製造が盛んだったころ、桶職人は酒屋の店先で乾きものをツマミにグデンぐでんになるまで「直し」を飲んでいたようです。
近藤 山廃とは何ですか。
・酒の造り方です。蒸米に麹米をいれると乳酸菌が発酵します。このとき雑菌が酒を醸すタンクに入ると腐敗し始めるのです。ここに酒造りの最初のリスクがあります。明治時代、乳酸菌が発酵するのを待たずに、乳酸菌を入れてしまえば、安全じゃないかということに気付くのです。この乳酸菌を添加した酒を速醸酛の酒と言います。これに対して昔通りに乳酸菌の発酵を待って醸した酒を山廃とか生酛の酒といいます。
近藤 手間暇かけた酒が山廃の酒なんですな。その割に「菊姫」の酒は安いですな。
・確かに「土佐鶴」と比べると安いような気がします。米の磨き加減に違いがあるとは思いますが。
近藤 「無濾過」とは何ですか。
・濾過をしていないということです。お酒を絞った後、炭を入れて不純物を取り除くという作業をしていないということです。
濾過は両刃の剣なんです。酒の旨味成分も取ってしまいますから。「無濾過」は蔵の自信作です。