醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  451号  白井一道

2017-07-08 12:43:35 | 日記

侘輔 今日のお酒は岩手県のお酒なんだ。
呑助 岩手県のお酒ですか。南部杜氏会、お膝元のお酒なんですね。
侘助 そうなんだ。岩手県というとなんかダサイという感じがするよね。
呑助 秋田美人という言葉があるように秋田には洗練された文化があるんじゃないかというイメージがありますね。確かに。
侘助 岩手は確かに貧しいというイメージが江戸時代にできたのかなぁー。唯一南部鉄が有名かな。南部鉄の鉄瓶というと高級品というイメージがあるからね。
呑助 それから宮沢賢治が岩手県出身だったんじゃないですかね。
侘助 そうそう、岩手を宮沢賢治は「イーハトーブ」と名付け、農村の理想郷を描いた童話作品があるかな。それから何といっても民話と言えば、遠野のある早池峰山の麓の文化を紹介した柳田国男の作品がある。
呑助 中尊寺のある平泉も岩手県なんじゃないですか。
侘助 「五月雨の降りのこしてや光堂」。芭蕉が中尊寺光堂を詠んだ句が有名かな。
呑助 いろいろ思い出してみると岩手県にはいろいろな文化があるんですね。
侘助 それから何といっても南部杜氏会のお膝元だけあって美味しいお酒があることでも地酒ファン憧れの土地かな。
呑助 岩手にはどんな酒がありますかね。
侘助 私が親しんだお酒の一つが上閉伊(かみへい)酒造のお酒なんだ。
呑助 岩手のどこのお酒なんですか。
侘助 遠野のお酒なんだ。「春がきた」という銘柄のお酒だったかな。本当に春を待ちわびる気持ちが湧き上がってくるようなお酒だったような記憶がある。
呑助 ところで今日楽しむお酒はなんですか。
侘助 岩手県の最北、二戸のお酒「南部美人」なんだ。
呑助 「南部美人」というのはお酒の銘柄ですか。
侘助 そう、「岩手美人」とは言わずに「南部美人」ということろがミソかな。
呑助 岩手じゃなく、南部なんですね。
侘助 茨城はダサイが、水戸は洗練されたイメージと同じようなものかな。
呑助 埼玉はダサイが浦和は洗練されているようなイメージがあるように思いますね。
侘助 お酒も一種のイメージ商品なのかもしれないからね。
呑助 お酒がイメージ商品とは、どんなことですかね。
侘助 一時、新潟のお酒、越乃寒梅が人気を博し、白ラベルの本醸造酒がプレミアが付き、一万円ぐらいになったことがあった。それでも売れた。この酒が越乃寒梅なんだと思って飲むと美味しく飲める。これはイメージが作用し、美味しく感じられたということなんじゃないかと思うんだ。
呑助 美味しいというイメージが付くと美味しく感じるんですね。
侘助 そういうことってあるんじゃないかな。味覚というものはイメージによって不味くも美味しくもなることがあるということなかな。今日、楽しむ特別純米酒の南部美人は今年のIWCで優勝したようだ。1245出品された醸造酒の中で第一位の認定を受けたお酒のようだよ。世界一のお酒なんだ。