醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  470号  白井一道

2017-07-30 13:22:02 | 日記

 報道の自由度、日本72位

侘輔 日本の報道の自由度は世界180カ国の中で何位ぐらいだ思う?
呑助 そうだね。10位内には入っているんじゃないかな。日本は民主主義国だから。そのように安倍政権も言っているからな。
侘助 そう思うでしょ。世界には「国境なき記者団」という非政府系の民間団体がある。この組織が2017年度の日本国の報道の自由度は72位だと発表したんだ。
呑助 えぇー、そんなに低いんですか。ビックリ。
侘助 日本特派員協会に於いて「国境なき記者団」のドロワール事務局長が先日、記者会見をした。その場で読売新聞記者が質問とも抗議ともつかないような発言をした。日本国は民主主義国だ。報道の制約のようなものを感じたことは一度もない。我々は日本政府を自由に批判することができる。政府を批判して弾圧された記者は一人もいない。それなのになぜ世界で72位なのか、理解に苦しむというような意見だった。この読売新聞記者に対して「国境なき記者団」の事務局長ドロワール氏は報道の質を問題にしているのではない。報道の自由度を公表しているんだと回答していた。
呑助 なんとなく、私も読売新聞記者の気持ちが分かるような気がするな。
侘助 首都大学東京の宮台真司氏はビデオニュースで次のような発言をしていた。その社会に生きる人間がその社会の制度を自分のものにしているからその人間は自由なのだというようなことを述べていた。
呑助 読売新聞記者が日本の報道は自由だと言っていることとどう関係しているですかね。
侘助 読売新聞記者は新聞記事を書く上で何の制約も感じたことがないというのは、自由だということ。なぜ読売新聞記者が記事を書く制約を感じたことがないのかというと、読売新聞記者は現日本政府の在り方と言うか、主張と一体化しているから制約などというものを感じないのではないかと宮台氏は言っているのかなと私は思ったんだ。
呑助 読売新聞の報道の在り方と言うか、報道内容が政府の考えと一体化しているということですか。
侘助 そう。自由とはその社会制度というか、社会の在り方と自分の気持ち、考え、生き方などが一体化している場合にその人間はその社会に於いて自由を得るということのようだ。
呑助 なんか、分かるような気がしますね。会社人間はその会社と一体化しているから自由になると言うことなんですね。
侘助 そうなんじゃないのかな。だからその会社の外にいる人間にとって見れば、その会社に身も心も尽くしている人を見て、自由な人間だと思うのか、どうか、難しい問題があるように思うけどね。
呑助 まぁー、可哀そう、気の毒、自由のない人と感じるかもしれませんね。
侘助 そう、自由の問題を哲学的に解明した最初の人はカントという人なのかもしれない。「必然性と自由」の問題としてね。
呑助 必然性と自由ですか。
侘助 物事の必然性を認識し、その必然性を我が物にした人が自由を獲得するということなのかな。「意思の自由」とはそのようなものだとカントは述べているのじゃないかと考えているだけどね。