醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  453号  白井一道

2017-07-10 14:59:35 | 日記

 相撲部屋の忘年会
 熟年にさしかかった男性の周りに年を重ねた下町の女将さん風情の人が取り囲んでいた。JR西日暮里駅改札口付近、師走の夕暮れはとっぷりと日が落ち、家路を急ぐ男たちの中でまだ来ない待ち人方にいるのか、話がはずんでにいる人垣だった。あの人たちと行き先は同じなのかもしれないと思いつつ、私もまだ来ぬ人を待っていた。
 相撲都屋の忘年会。きっとあの人たちも桐山部屋の忘年会に参加するに達いない。そう思った。相棒が職場の相撲好きな熟年の女性を伴って現れた。桐山部屋の後援会に入っているAさんは相撲部屋の忘年会に参加するに達にいないと思った人たちの中心にいる人と親しげに挨拶を交わした後、私の存在に気づき、ニコニコしながら私の方に近づいてきた。
 駅の外は小雨がパラついていた。歩いて行けない距離じやないけど雨も降っているし分かり辛い場所だからタクシーで行き合しよ。私たち五人は二台のタクシーに分乗し、桐山部屋に向かった。相撲部屋とはどんな所なのだろう。歩いてもきっと十五分くらいのところ、表通りを入るとそこは閑静な住宅街になっている。その一画に桐山部屋はあった。入って行くと親方と女将さんが門を出て出迎えてくれた。「ようこそいらっしゃいました。お待ちしていました」。にこやかな挨拶だった。重量鉄骨で作られた五十畳くらいの広さのところに土俵が作られている。その土俵の上にシートが敷かれ、そこに机が並べられ卓上コンロの上に鍋がのせられ、ビールが並んでいる。
  190センチ、120・30キロはありそうな若者が奇麗に髷を結い、並んでいる。そんな若者が12・3人はいた。そんな若い力士さんを見て、ご婦人方は皆、ニコニコしている。男の私か見ても奇麗な若者だと思った。元気の
よい下町の年を召した女性たちは若い力士さんがそばに来ると話しかける。見ているとツーシヨツトで写真を撮っている。それを見ていた他の女性がまた若い力士と写真を撮る。親方が挨拶に回ってくると早速、親方とも頬をくっつけんばかりにして写真を撮る女性たちがいる。遠くから見た親方は少し草臥れているように見えたか近くで見ると肌艶のよい立派な男だった。若に力士は一切酒を飲まなない。食べない。いっそビールを運び、ちゃんこ鍋のお代わりをする。客の注文によっては烏龍杯、ウィスキーの水割り、曰本酒なんでも持って来る。力士さんたちのウェイターぶりはイタについている。居酒屋の女将さんの隠し芸が始まった。三味線に合わせて歌う。民謡ではない。端唄というのか、何というのか分からない。割り箸に千円札を挟んだ人が舞台に上がり、胸の谷間に差し込んだ。女将さんは何もなかったかのように唄い続ける。あー、これが相撲部屋の忘年会か。相撲は男の文化であるとその時、気づいた。