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帯には「20周年を飾る、記念碑的作品」とある。
著者堂場瞬一さんは今年作家デビュー20年を迎えた。
新聞記者出身の著者はデビュー後も兼業で過ごしてきたというから、記者への思い入れは独特のものがあるのだろう。
千葉県野田市の江戸川沿いで7歳女児の遺体が発見され物語が始まる。
東日新聞の若手ホープ古山は埼玉県の江戸川沿いで過去に同様の事件があったことを思い出す。
松島はかつての切れ者記者だが、今は健康不安で編集委員から支局長へ移動したばかりだった。
古山は松島を巻き込み、過去33年の間の数年おきに千葉と埼玉の江戸川をはさんだエリアで7件の幼女殺害・行方不明事件が起きていたことにたどり着く。
そして過去の事件を警察が不自然に終わらせていたこと、新聞記事も事件を最後まで追い続けなかったことに気づく。
下巻の前半で犯人は判明するが、警察・新聞記者・黒幕のそれぞれの立場・思惑が交錯して真相を明らかにできない状況へと追い詰められる。
結末はある意味、「あっけなく」の感もあったが、事件解決・警察小説というより記者のメンタル、取材方法、警察との距離・駆け引きなど興味深く、「記者の矜持とは」を追った作品だった。
堂場瞬一さんにしか書けない作品なのではないかと思う。
書き下ろし作品
20210418 第一刷発行
装幀 岡 孝治
写真 木村 直