(※アニメ「シドニアの騎士」に関して致命的なネタバレ☆があります。一応念のため、ご注意くださいm(_ _)m)
アニメ「シドニアの騎士」を見ました♪
ちょうど、「ダンバイン」を見てる途中で、おススメの映画か何かとして表示されてたと思うのですが、わたし、てっきり「騎士」とあったので、「ファンタジーなのかな?」と最初思ったわけです(シドニアという国で騎士団が大活躍!!的な^^;)。
そしたら、もう完全完璧なSFロボットアニメだったわけです。原作含め、とても有名な大人気作みたいなので、特に説明必要ない気がするものの……某サイトさまよりあらすじを一応コピペしておこうかと。。。
>>対話不能の異生物・奇居子(ガウナ)により太陽系が破壊されてから1000年後の世界。人類の繁殖と生産を維持しながら宇宙を放浪する播種船・シドニアの最下層部で育てられた少年・谷風長道は、祖父の死を期に街へ出、人型巨大装甲・衛人の操縦士訓練生となる。
その~、アニメとしてストーリーその他面白かったものの、本当は最初、特に感想とか書こうと思ってなかったというか(^^;)
でも、そろそろ前文に書くこともなくなってきたというか、まったくないというわけではないものの……まあ、面白かったので、メモ書き程度、ちょっとくらい何か残しておこうかと
これはどうでもいいことなんですけど、最近わたしが見てるロボット系アニメとかも、結構女性パイロットとか、メカニックなども女性キャラが多かったりするんですよねでも、昭和のロボットアニメって、両者とも男性が多くて、男性と女性パイロットの割合って、大体7:3とか、そんな感じだった気がしたり(最低でも5:5ではない☆)。
でも、女性キャラ多めのほうが作品として人気が出るということもあるのかどうか、今後ともそうした傾向のほうが強くなるのかな……という気がしました。また、アニメを製作するスタッフさんのほうでも、可愛いor美人の登場キャラ多めのほうがやる気がするという事情もあるのかどうか、そこらへんまではわからないものの。。。
それはさておき、「シドニアの騎士」、自分的に一番面白く、心に残ったのは主人公、谷風長道(たにかぜ・ながて)を巡る恋の行方のことだったかなあと思います
いえ、宇宙で戦う敵というのが、人間の知性の真似はしても、本当の意味での知性までは持たない……みたいなガウナ(奇居子)という敵なので、いわゆるガンダム的な、「実は敵方にもこういった事情があるのであーる!!」といった、政治的・人間関係的複雑さみたいなものは、敵(エイリアン)との間には生じない。
でも、エースパイロットであるナガテを中心にした物語はすごく面白いと思いました可愛いor美人のおにゃのこ☆が多いため、ヴィジュアル的にも見ていて楽しい気がする。ナガテに敵意を燃やす岐神海苔夫(くなとのりお・笑)くんという美形のライバルもいて、このあたりのストーリー展開も最後までどうなるのか、すごく面白かったと思います
それで、そうした中で、ナガテは最初、星白閑(ほしじろ・しずか)という女性パイロットと惹かれ合う。ところが彼女はガウナの中に取り込まれ、生死不明といった状態となり……容姿や思考パターンその他を真似るガウナがシズカではない、シズカそっくりの声や姿として現れ――そうとわかっていても、星白シズカのことを最後まで諦めきれないナガテ。
このあたりで、マッドサイエンティストに体を乗っ取られたノリオくんが、ガウナとして捕獲されたエナ星白のことを兵器として利用することに成功する。この融合個体と呼ばれる白羽衣つむぎは、人間たちに懐き、さらにはナガテのことを愛し、恋をするように……。
でも、自分の姿は今はただの馬鹿でかい不気味なガウナにしか過ぎない。そんな自分のことを谷風さんが愛してくれるはずもない……わたし、「あいつむぐほし」を見るまで、このあたり、最終的にどうなるのかなあと思ってました(^^;)。
というのも、ナガテは、のほほーん(?)とした性格の割に……いや、それゆえにか結構もてるたぶん、最初に恋愛フラグ出てたっぽいのは、中性体である科戸瀬イザナだったと思うわけです。ところが、中性体でまだパートナーが決まってないゆえに、イザナは容姿のほうがどこか少年っぽいままで(=ナガテはどっちかっていうと女の子というより、イザナのことを男の子として認識してるっぽそうだった)。そこで、もともと恋愛に疎そうなナガテは、他にかわゆくて性格も優しそうな星白シズカのほうに恋をしてしまい、彼女もどうやらナガテに惹かれてるっぽい。
ところがここでシズカはガウナに取り込まれてしまい……普通に考えたとすれば、「死んだ」と思われるわけです。そしてこうした状況の中、最初からナガテのことが好きっぽそうだったイザナが、改造ガウナ(でいいのかなあ)であるツムギのことを間に挟みつつ、徐々に結ばれそうな雰囲気になっていく。
イザナは、ナガテに恋をしたことから、体のほうも中性体だったのが女性になり、ぺったんこだった胸のほうも大きくなっていく。他にもうひとり、こちらもずっとナガテのことを狙ってた緑川纈(みどりかわ・ゆはた)という女の子(だと思ってたら、最後のほうで中性体だったとわかった)がいるのですが、見てる側としてはナガテユハタという恋愛関係はなく、ナガテが結ばれるとしたら――たぶん、イザナなんだろうなというところで、シーズン2のほうは終わります。
ところが最後(映画「あいつむぐほし」のほうで)……ナガテは結局、改造ガウナであるツムギと結ばれるんですよね。容姿の巨大さ、その他コミュニケーションとる時のくらげ(?)っぽいような姿のことも関係なく、ふたりは深い愛の絆で結ばれ――最終的に、ツムギは人間の女性の体に記憶や意識が移され、ナガテとの間には最後、のどかという可愛い女の子まで生まれている
それで、ナガテに振られた形のイザナとユハタはどうなったかというと……ここがくっついて終わっちゃうという!!というのも、イザナは中性体だったのが、体のほうが女性になってしまったわけだから、これは性の変更後は、「いや、やっぱ男になろう」とはもうなれない。ところが、てっきり女の子だとばかり思ってたユハタが実は中性体で体のほうが男性になったことで――イザナとくっついてしまうという
いえ、わたし的に「シドニアの騎士」の中で一番良かったのがここでした。イザナとユハタはナガテを巡る恋敵ということもあり、ずっと喧嘩ばっかりしてるんですよね。だから、最後ここがまさかくっつくとは誰も思わない。でもきっと、人間とガウナだとか、容姿のサイズに違いありすぎとか、そんなことすらも越えて――ナガテとツムギが強い絆で結ばれているとふたりにもわかっていて、「わたしたち、振られちゃったね」みたいには、その前からきっとなってたんでしょうね、たぶん。そこで、お互い慰めあううちに、ユハタのほうにいつしか恋心が芽生え、彼女は中性体だったのが、男性の体になったのかもしれないと思うと……なんか超萌える!!普通の恋愛パターンを打ち破ってる設定だという意味でも、わたしの中では意外性100%だったような気がします!!
まあ、アニメとして面白いのはそれだけじゃないものの、とりあえず自分的に「ここが良かった!!」、「最高!!」と思ったところを特に選んで感想にしてみたといったところです♪
それではまた~!!
↓まあ、大抵の動画サイトさまで見られると思うものの、なんとなく(笑)
惑星シェイクスピア。-【65】-
「えっ!?ギベルネ先生、聖ウルスラ祭はもう二日後なのに、どっか行っちゃうの?」
荷馬車に車椅子を乗せ、ジャン=ジャックがモントーヴァン邸まで運んでくれた日の夕方、キリオンは少し早い食事の席で、そんな驚きの声を上げた。
車椅子に関していえば、ラウールは目尻に涙さえ滲ませて、ギベルネスに感謝していたものである。そこまで彼が移動することに関して拘りがあったということではなく――ギベルネスは食事の管理や服薬についてまで、毎日この老人のことを気にかけ、診察していたわけであった。ラウールはそれだけでも十分であったのだが、その上彼が<車椅子>なるものまでわざわざ木工職人に注文していたと聞くなり、驚くと同時、それがあまりに具合良く仕上げられていたため、感極まるあまり、暫く口も聞けぬほどだったのである。
『あの方は結局のところ、どういう方なのだね?』
ラウールはセドリックにそう聞いたことがあるが、最初はハムレット王子付きの侍医か何かなのだろうと思っていた。
『はあ。なんと言いますか、その……<神の人>という話でしたが、まだ私もあまり詳しくは知りませぬ』
だが、聖ウルスラ祭を前にして、このような素晴らしい贈り物をしてくれた<神>に対し、ラウールはあらためてある決意をしていたのである。もう公の場に出かけなくなって久しいモントーヴァン卿であったが、これでいくつかの場所へ出かけ、ハムレット王子及び<神の人>のために出来ることがあるに違いないと……。
「ええ。もうお祭りの一日目から馬上試合トーナメントがありますからね。私としても、例の計画について聞いていますから、もちろん試合のほうは見たいのですよ。ただ、ウィザールークの住むメレギア町という場所は、ここから二十キロ程度しか離れていないそうですし、十分日帰りできるような距離と思います。それでも、一日か二日くらいはいて……そうですね。彼に頼んでいるガーゼや包帯などがどのように作られるのか、見て来ようと思っています。もしかしたらそれで、どの程度のお金を彼に支払うのが適当かということもわかる気がしますし……」
「気をつけてください、先生」
ハムレットが、鶏団子のスープを一口すすり、刻んだショウガや人参などをかきまぜつつ、心配そうに言った。
「もちろん、大丈夫なことはわかっています。ただ、ランスロットもカドールも、馬上試合へ出る関係から護衛につくわけにもいきませんし……オレも、メレアガンス伯爵の出方などを見たいと思っているので、この城砦から離れるというわけにもいきません。もしそうじゃないなら、一緒についていきたいくらいなんですが……」
「俺がついていけるといいかもしれないんだがな」と、クルマエビのマリネを口にし、白ワインを飲みながらディオルグが言う。「だが、例の計画に万一のことがあった場合……なんというかまあ、補欠要員として何かの役に立てるかもしれんと思っとるわけだ。そのウィザールークという男は、レンスブルックが自分と似ているからギベルネ先生の仕事を請け負ってくれる気になったんだろ?それなら、大丈夫じゃないかという気もするしな」
「あいつ、自分専用の護衛団を持っているぎゃ。と言っても、これがまた脛に傷のありそうなならず者って感じの男ばかりなんだぎゃ……ウィザールークの奴も、またすぐこのメルガレス城砦へ戻って来て、ファッションショーとやらを見る気満々らしいぎゃ。ようするに、あいつにとって自分の住む場所とメルガレス城砦の往復ってのはしょっちゅう行ったり来たりしてるだけに、「そういうことだらちっとうちへ来いや」といった程度のことらしいぎゃ」
「そうなんですよ」と、ギベルネスも笑って同意する。「ウィザールークは<綿布の王>と呼ばれているくらい、金には困ってないし、この城砦でも商人として有名人でもありますから……私やレンスブルックに危害を加えたところで、彼にはなんの得もないことでしょう。それどころか、本人は一代で苦労して今の地位を築いただけに、自分の名声に傷がつくことを恐れているらしいですよ。ほんのちょっとしたことで評判を落とし、突然仕事がなくなるとか、今後も十分ありうることだと心配してるんですね。ですから、そこらへんのことはおそらく大丈夫です」
「ならいいですが」と、タイスがポンピーのパンをオリーブ油にひたしながら言った。彼はここの白パンが大好きだった。固すぎず柔らかすぎず、裂くとしっとりしているのだ。「でも、引き止められたとしても、なるべく早く帰っていただけると、我々としては嬉しいです。馬上試合のある最初の二日や三日くらいで、事態が大きく動くことはないでしょうが……俺としてはギベルネ先生がいてくださったほうが、何かと心強いものですから」
「ははあ、わかったぞ」と、カドールが微かに笑う。彼は自分までまわってきたポテトパイを皿に取り分けているところだった。「タイス、ようするに君はアレだな。我々の立てた計画が成功するか、それとも失敗するかはわからないが……ようするに、<神の人>であるギベルネ先生がただそばにいるというそれだけで、なんでも俺たちにとって有利に働くに違いないといった信仰の立場に立っているわけだな」
(ああ、そうか)と、ギベルネスにしてもこの時初めて気づいた。(それは、確かになるべく早く帰って来る必要があるな)と、そう思い至る。
「そういうわけでは……」と言いかけて、タイスは訂正した。「いえ、そうなのかもしれません。以前にもお話したとおり、俺はギベルネ先生が<神の人>であることを信じていますから……我々にとって重要な局面において先生がいないだなんて、そんなことがあるだろうかと思い込んでいるのかもしれません」
「なるほど。もしかしたらこれは、我々の今後の行動を占うことにもなるのやもしれぬな」カドールは何故か、ひとり得心顔だった。「もしギベルネ先生がいらっしゃらなくても、我々の計画が無事うまくいったとすれば、だ。先生がもし例の服飾店の娘御のひとりとでも今後睦まじく暮らすこととなり、我々と行動を別々にしたとしても――我々の旅の目的は成就する、ということなのではないか?」
「よせよ、カドール」ギネビアは明らかな不快感を顔に表し、口を尖らせた。その手には鶏肉のローストが握られている。「おまえだってさっき見ただろ?ギベルネ先生はな、単にそこの娘さんたちの家の一階に住む木工職人に車椅子を頼んでたってだけなんだからさ。それに、べつに先生が誰かと恋愛して悪いってことでもあるのか?」
ランスロットは美味しいラムのカツレツに舌鼓を打っていたが、何か言うべきだろうと感じ、言葉を考えようとしたものの、途中で文章がまとまらなくなり……やはり黙ったままでいた。
「ええと、だからその……私にも不適切なところがあったかもしれませんが、モーステッセン家に色々食事を持っていったりしたのは、下の娘さんたちも小さいし、十人姉妹だなんて大変だろうなと思ってのことなんです。他意はありません」
ラウールとセドリックは盗み聞きしようと思ったわけではなかったが、なんとなく入りにくくなって一旦停止し、それから食堂のほうへ入っていくことにした。ラウールは普段、ひとりで食事をするようにしているが、それはまわりの人に気を遣わせたくないからであった。
だが、この日はギベルネ先生へのお礼の気持ちから、少しくらい酒でも酌み交わそうと思ったわけである。
「やあやあ、みなさん。お食事の味のほうはいかがですかな?」
セドリックに車椅子を押してもらい、ラウールが入ってくると、タイスは真っ先に席を譲り、末席側へ回った。食事のほうもある程度終わっていたので、むしろちょうど良かったくらいである。
「どうもすみませんな。ただ、例の重要な御計画について……わしも老いぼれなりに少しくらい協力できればと思っておりますのじゃ。何分、ギベルネ先生がこのように素晴らしい乗り物を」と言って、ラウールはアカシア材の腕木のあたりをポンと叩く。「くださったもので、馬上試合のほうは必ず見に行こうと思っておりまする。まあ、わしが見にいったところで何がどう変わるということもありますまい。ですが、腐っても元騎士団長というわけでして、我が聖ウルスラ騎士団の今後の運命について直にこの眼で確かめたいと思うておりましてな……それはそうと、メレアガンス伯ではなく、メレアガンス伯爵の政治顧問でもあられるヴォーモン卿から親書が届きましてな」
「オスティリアス修道院長から聞いたお話によると……ヴォーモン卿はとても立派な、高潔な方であるとか」
一同を代表するように、食事の美味しさと贅沢さについて礼を言ったのち、ハムレットはそう聞いた。これはセドリックから聞いた話であるが、ラウールは彼らがやって来てからというもの、日一日とかつてと同じような快活さを取り戻し、精神的な若さすら得ているように感じられることもしばしば……ということであった。『それも、ハムレット王子や他のみなさま方、また特にギベルネ先生のお陰です』と。
「左様でございます。ヴォーモン卿は我が息子のサイラスとも友達づきあいをしてくださっておりましたもので、わしともなんとなく親しい交流がありましてな。それでも、息子の葬式以後、二度か三度会ったくらいではあったのですが……何分、大法官さまということにもなりますと、何かとお忙しいでしょうからな。ですが、ヴォーモン卿はなかなか義理堅いご温情のある方でして、わしのこともサイラスのことも忘れてはおられなかったと見えますわい。なんでも、ヴォーモン卿はメレアガンス伯爵から、わしのしたためた親書のことで相談を受けたのですな。そこで卿はハムレット王子にお味方したほうが、先々何かと明るく幸運であろうと、そのようにお薦めしているそうです」
「本当ですか!?」
末席側に移ったタイスが、思わず叫ぶように言った。いかに大法官という立場にあり、公平で平等かつ潔白な人物との評判でも、流石に『これとそれとは別の話』と判断するものだろう。にも関わらず、(ハムレットに直接会ったわけでもないのに何故……)と思ったのは、彼だけでなく、その場にいた仲間の全員がそうだった。
「いや、わしはですな、ハムレット王子のお人柄や、その血筋の確かなことなどについては保証する旨、確かに親書にはお書きしたのですよ。それ以外のことについては、メレアガンス伯爵が実際にお会いするなりしてお確かめになれば、おそらく納得されることだろうと思っておりました。ところがですな、ヴォーモン卿はどちらかと言いますと……このままでは、どのみち我がメレアガンス州に未来はないとの、そのようなお考えだったのです。財政のほうも傾きかけていますし、重税を課される関係性から地方郷士が結託し、ここメルガレス城砦まで攻め上ってくる可能性だってゼロではないでしょう。そこで、ですな。メレアガンス伯爵には今のところ、それとなーくそのように薦めると言いますか、そのように伯爵がご決断なさるよう、ゆるやかーに導いているといったところだと、そうおっしゃっていました。というのも、つい先日、我が家をお訪ねになってくださいまして、少しばかりそのようにわしめに話していかれたのです。ここのところ直接お会いしてなかっただけに、親書の言葉だけでは十分伝わらないと思われたのでしょうな。相変わらず楽しいお方で、思い出話に随分花が咲きましたが、それはさておき……」
この瞬間、ハムレットとタイスはハッとした。確か、おとついのことだったろうか。通りからは見えない中庭にて、馬上試合トーナメントに備え、カドールやギネビアが剣術に励んでいた時のことだった。それを彼らやキリオンや他のみなも見守っていたのだが、母屋と離れのほうを繋ぐ通路あたりに、見慣れない男ふたり(セシルとクロード)の姿があったのだ。セドリックが一緒にいたことから、彼の知り合いであれば信用のおける人物なのだろうくらいにしか思ってなかったが、おそらくそれがヴォーモン卿その人であったのだろう。
「メレアガンス伯爵の御決断がつきかねるのは、ロットバルト州がどう出るか不透明だからであろうとのことでしてな。そこで、ロットバルト州のヴォーモン卿のご親戚である貴族の方に、少々お伺いを立てたらしく……そうしましたならば、名門貴族ロイス家の方が聖ウルスラ祭にやって来られるそうなので、そちらからロットバルト伯爵を説得していただいてはどうかと、そのようなお話になったのですよ」
「ロイス家!!」
ランスロットとカドールが、ほぼ同時に叫んだ。ロイス家もまた、由緒正しい騎士の家系であり、ふたりとも、長子のヴィヴィアンとは何度か手合わせしたことがある。
「それは、ますますみっともない試合をすることは出来ないということになるな」と、ランスロット。
「そりゃあな。だが、相手がヴィヴィアン・ロイス卿であれば、ある意味話のほうは早いかもしれんぞ」と、カドール。
「ヴォーモン卿のご親戚というのが、カログリナント卿なのですが、知ってのとおり、カログリナント卿はロットバルト伯爵の幼少のみぎり、教育係を務めておられた方です。ご子息であるラモンさまに家督を譲られてからは、僧籍にあるとのことですが……何分、激烈を極めるあの御性格ですからな、ロットバルト伯爵はカログリナント卿のおっしゃることであれば、ほとんど反射的に頷いてしまわれるところがあるわけですが、そのような関係性からも少々事は慎重に進めねばなりますまい」
知ってのとおり、と言われても、無論ハムレットにもタイスにも、その場にいた半数以上の者には当然、このあたりの事情はさっぱり飲み込めなかった。そこで、カドールが少しばかり説明を試みることにしたようである。
「その……どう言ったものでしょうな、ラウールさま。ヴィヴィアンはロットバルト騎士団の騎士団長ですが、彼は実に……その、いい意味で単純な男であり、ロットバルト伯爵ともツーカーの仲といって良いでしょう。また、ラウールさまご存知のとおり、ロットバルト伯爵も白黒はっきりした、腹に一物隠しておくことの出来ぬ気持ちの良い方と存じております。さらに、カログリナント卿はまるで幻獣ヌエが雷鳴を轟かせるのにも似て、一度これが正しいとなったら決して引かれぬお方。つまりはですな……ロットバルト州に味方になっていただくということは――もはや、今日明日にでも内苑七州を敵に回して戦うというくらいの時のほうが、実際のところ好ましいというわけでして……」
カドールは何故か、珍しく歯切れの悪い物の言い方をした。これまでも、メレアガンス州は後に回し、先にロットバルト州を味方につけたほうがいいのではないか……との意見は、会議で上がったことがあったはずである。だが、そのたびにカドールは途端に無口になるか、あるいは「そうとは限らぬ」とか、「さて、どうしたものだろうな」などと言葉を濁し、溜息を着いていたのだった。
「まあ、そうでしょうな」
事情をよく知っているラウールは、カドールに重く頷いてみせた。
「ロットバルト騎士団は、勇猛果敢にして恐れを知らぬ連中ですからな。無論、わしは同じ騎士として彼らを実に頼もしいと感じておりまする。が、悪い言い方をすれば、騎士らしくなく野卑なところもあり……ようするに、ハムレット王子に味方してくださる公算が高いように思われるのは良いのですが、そうなった場合であればそうなった場合で、『攻めてくるなら攻めてこい!!』といったような態度で、細かい策略についてはあまりお考えにならないでしょうな。何分、バリン州の新しい領主として収まったのがヴァランクス男爵ということもあり、まず派兵してくるとしたらバリン州からということになるでしょう。ロットバルト伯爵もヴィヴィアン殿も、ヴァランクス男爵のことはもともと気に入らないわけですから、その叩き潰し方たるや、いかようなものになるか……」
(まったく楽しみですな)と言いかけて、ラウールは不謹慎に笑うに留めておいた。「ヴァイス・ヴァランクス男爵も、まったく不幸な男です」と、セドリックがすでにその未来が見えているかのように、ただ静かに言い添える。
「確かに、戦略的にはそうだろう」と、ランスロットが愉快そうに微笑みつつ、ラウールの言葉に付け足した。「我々砂漠の三州と、メレアガンス州、それにロットバルト騎士団の率いる大軍を持ってしても……バリン州のバロン城を攻略することは難しい。というのも、かのボウルズ卿が代々東王朝が攻め込んでくるたびに凌いできた歴史があるだけに、改良に改良を加え、今では難攻不落の要塞となっているからだ。それよりは……もし向こうからこちらへ来てくれるものならば、そちらのほうがヴァランクス男爵の軍を木っ端微塵に粉砕するのは実に容易いということになるだろうしな」
「のちほど、わしが記憶に覚えておることのすべてを思い出すようにして描いた、バロン城やバロン城壁の内部構造や仕掛けその他の地図をお渡ししましょう。それをカログリナント卿や、ボウルズ卿と生前親しくしておった騎士方にもお見せして――さらに描き加えていただくとよろしいかもしれませぬ。いやいや、こうした先々のことを考えるのはまだ早いでしょうな。なんにしてもまずは、間近に迫った例の馬上試合トーナメントのことを考えませんと……」
とはいえ、この瞬間食堂のテーブルを囲む仲間全員が興奮し、この上もなく士気が上がったのは確かだった。無論、まだメレアガンス州の領主も、ロットバルト州の領主も、味方になってもらえるかどうかは未知数な部分が残っている。また、そのすべてが二日後に迫り、さらに一週間続く馬上試合トーナメントにかかってもいるのだ。食後、ランスロットとカドール、それにギネビアは中庭へ出ると鍛錬を開始していたものである。ラウールはハムレットやタイス、それに他の仲間たちを相手に、過去の戦争であった聖ウルスラ騎士団やロットバルト騎士団の武勇伝や、ボウルズ卿の人柄の素晴らしさを伝える話など、聞かれるがまま順に答えていたものである。
ギベルネスもまた、この老騎士の生き生きとした横顔を見ていて嬉しくなった。ラウールがすっかり心地好く酔っ払い、半分眠たいような様子を見せると、セドリックは自分の主人のことを寝室へお連れしたが、ギベルネスは最後、二階の部屋へ上がっていく前に、タイスの肩に手を置き、こう言うのを忘れなかったものである。
「きっと、私などいなくとも、必ず万事上手くいきますよ」と。
>>続く。