都市と野生の思考
鷲田清一 山極寿一
集英社
「マウントをとる」という言い方が一時期はやった。格闘技から一般に流布したように思うが、会社でも社内チームでどっちがマウントをとるかとか、マウントをとりにいくみたいな言い方がされた。「マウントをとりあう女子たち」みたいなタイトルの本も出た。
僕はこの言葉がキライだった。マウンテンゴリラじゃあるまいし。そうやって身内で覇権争いしている時点で負けじゃねーのと 思っていた。
いささか度が過ぎると思われたのか、近頃はこの「マウントをとる」という言い方は聞かなくなったように思う。
だけど、本書によるとマウンテンゴリラは決してそのな野蛮ではないのである。むしろ弱者に優しく、力技で服従をさせない。背中で語るのがゴリラのリーダーだそうだ。
最近はリーダーシップ論でも、圧をかけて君臨していくようなリーダーシップは実はチームのパフォーマンスを挙げないとされている。リーダー=威張ってよい、という方程式を持っているような輩はむしろ存在として害悪となっている。
松下幸之助の有名な哲学、見込みが有る人の条件は「愛嬌があって運があって背中で語る人」。山極氏によればまさしくゴリラのリーダーはそうなのだそうだ。態度で魅力を伝えることができる人ということだろう。