ドリーム・ホース(映画)
2020年に公開された実話に基づくイギリス映画。21世紀の初頭に農村地帯から彗星のごとく現れ、ウェールズの最高レースを制した、ドリームアライアンスという競走馬の物語である。Prime Videoで配信されたものを観た。
ウェールズの片田舎に住むジャネット・ヴォ―クス(ジャン)は、夜はパブのバーテン、昼間はスーパーマーケットの清掃・レジ打ちで働き家計を支えている。
しかし、無気力な夫ブライアンとの暮らし、両親の介護と、生活に張りがなく、なにか打ち込めるものを求めていた。
ある日パブに現れた税理士のハワードが、以前に競走馬を所有していたという話を聞き、ジャンは自分も競走馬のオーナーになるという夢を持ち、有り金をはたいて引退した牝馬ルーベルを購入する。
ハワードに協力を求めるが、種付け料だけでも多額な資金が必要と、相手にされない。
ジャンは組合員を募って投資させ、資金調達を計画する。そして、応募した夫をはじめとする地元の村民20人で馬主組合を結成し、週に10ポンドの会費を集めることにする。
ハワードは、最初はためらっていたが、かつて挫折した馬主の夢を忘れがたく、妻に内緒で組合員となり、指導と経理に当たる。ハワードは、馬主として大きな損失を出し、妻には競馬にかかわらないことを約束させられていたのだ。
ジャンは資金を捻出して種付けに成功し、仔馬が生まれるが、母馬ルーベルは難産で死亡してしまう。
馬主組合員の協議により、仔馬の名前はドリームアライアンス(夢連合)と決定する。
ジャンとブライアンは、ハワードの助言で、名調教師の名が高いホッブズの厩舎に成長したドリームアライアンスを連れていくが、農村からアポなしで押し掛けたジャンたちは冷たくあしらわれる。しかし、ホッブズ調教師は、鞍をつけて馬場を走るドリームアライアンスに非凡なところを感じ、厩舎に預かることにする。
初めて地方競馬に出場したドリームアライアンスは、走るのを嫌って6馬身遅れてスタートするが、最後は4着となり、貸し切りのマイクロバスで応援に来た馬主組合員は大騒ぎする。
ドリームアライアンスはその後も地方競馬で好成績をあげ、ホッブズ調教師は重賞レースへの出場を決める。競馬場のオーナー席で組合員は大はしゃぎし、並み居るお歴々をびっくりさせる。場内アナウンスは、ドリームアライアンスを田園育ちのサラブレッドと紹介する。
ドリームアライアンスは見事に優勝し、有名な馬主から高額での譲渡を打診されるが、ジャンは一言の下に拒絶する。この独断は組合員から非難され、ジャンは窮地に立たされるが、ハワードの発言に救われる。
しかし、好事魔多し。次のレースでドリームアライアンスは障害につまずいて腱を傷つけてしまう。
その場で安楽死させるか、失敗すれば多額の損失が出る危険な手術を受けさせるか、組合員は即断を迫られる。自分たちに夢を与えてくれたドリームアライアンスに、われわれが夢を与えるべきだというジャンとハワードの発言で、組合員は手術を決定する。
奇跡的に手術は成功し、再生手術によって腱は前よりも強くなる。そして、ホッブズ調教師はウェールズの最高レース、ウェルシュナショナルへのドリームアライアンスの出場を馬主組合に打診する。
復帰第一戦をそんな大レースにすることは危険だと組合員で一人反対するするジャンを、夫のブライアンは説得し出場を決める。
ドリームアライアンスのオッズは50。最後尾を走っていたドリームアライアンスは徐々に順位を上げ、最後は本命馬とデッドヒートを演じ、1馬身差でウェールズ最高の賞を獲得する。
映画では、夫の真意を知って理解した妻と税理士ハワードの和解、ドリームアライアンスに励まされたブライアンの農業への情熱の再燃、介護させるだけで自分を無視していた父の遺品からドリームアライアンスの新聞記事のスクラップを発見して号泣するジャンなど、人情噺も散りばめられている。
とにかく底抜けに明るい演出である。一つ一つのシーンに笑いが籠められ、何回も腹を抱えさせられた。
競馬のシーンでは実況中継の音声が流され、思わず手を握ってドリームアライアンスを応援してしまう。競走馬の映画ではいつも感じるが、出演したお馬さんたちの演技は、主演のトニ・コレットにも増して見事である。
ちなみに、ドリームアライアンスの生涯獲得賞金は13万7千ポンドで、組合員は1430ポンドの配当金を得たという。
この映画は三が日明けに観た。楽しい初笑いをさせてもらった。
STOP WAR!
(難しいですが)