博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

第10回STI政策シンポジウムを開催しました

2023年03月26日 | 科学
 一昨日はJR博多駅前のイベント施設TKP博多駅前シティセンターで標記のシンポジウムを開催しました。昨年と同様に、新型コロナウイルス感染症対策のため、リアルの会場は少人数に限定し、オンラインと組み合わせたハイブリッド方式での開催といたしました(上の写真です)。今年度のテーマは「児童虐待の根絶に向けて-科学技術の課題」でした。児童相談所における児童虐待相談対応件数は、2000年の児童虐待防止法の施行と、その後の数次に亘る法改正を経てもなお増加する一方です。2021年度の児童虐待相談対応件数は20万7,659件で過去最多を更新しました。このような子どもの安全を守れない社会であり続ける限り、我が国にはいかなる未来もあり得ません。
 本シンポジウムでは、法制度の整備によっても歯止めがかからず年々深刻化するこの社会問題に対して、科学技術はどのような解決策を提示し得るのか、また解決に寄与し得る科学技術の社会実装に係る政策課題は何かを話し合いました。講演者には、生物学・神経科学の観点から児童虐待の発生要因を解明し、虐待を防ぐための養育者支援のあり方について研究してこられた黒田公美先生と、認知行動科学の観点から虐待対策へのアウトリーチを研究され、児童相談所にAI搭載支援システムを提供するベンチャー企業AiCANの代表取締役に就任された高岡昂太先生をお招きしました。また、パネル討論では、児童福祉施設における心理臨床援助に取り組まれてきた本学の小澤永治先生にご登壇いただき、虐待対策の現場の知見を踏まえて、今後の政策課題に関する理解を深めるべくディスカッションを行いました。
 黒田先生は進化生物学と脳神経科学の観点から、人間が環境の中で生き残り子孫を残す上で、明らかに不利で不合理としか思えない、時に子どもを死に至らせる児童虐待という悲劇がなぜ起こるのかを説明されました。それはなかなかにショッキングな内容で、私は司会進行をしながら、「うーん」と考え込んでしまいました。ただ、その説明は長くなってしまうので、また別の機会にさせていただきます。重要なことは児童虐待という悲惨な事態に、経済的、社会的原因に加えて生物学的な原因(も)あることを理解した上で対策を考えなければならないということだと思いました。また児童虐待を減らすために教育(幼稚園から生涯学習までの)の役割が重要だということを改めて感じました。


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