昨日ご紹介しました山野浩一さんの傑作集「殺人者の空」の表題作は、70年代初頭の学生運動全盛時代に起こった内ゲバ殺人を扱っています。主人公と考え方の違う(外部の人間には何がどう違うのかも良く理解できない)学生をまるで当たり前のように殺害する。この作品自体はフィックションですが、1972年11月8日に早稲田大学で起こった川口君事件をモデルにしたように私には思えます(同作品の初出は1976年)。主人公もそのグループも当たり前のように人を一人殺して、全く罪悪感をもたないのです。しかし被害者は、実は学籍はなく、どこの誰とも知れないまるで幻のような存在でした。一体誰を殺害したのか?そしてある日主人公は殺した筈の被害者を町で見かけます。こういう不条理な内容なのですが、平和な日本において70年代初頭から80年代前半にかけて100人を超える死者を出し猛威を奮った内ゲバ事件を思い起こすと、この物語は不条理なフィックションではなく当時のありのままの事実を記述したものとしか思えないのです。
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