博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

異星人の郷 上・下

2011年05月14日 | SF
「異星人の郷」 上・下 (創元SF文庫)
マイクル・フリン (著), 嶋田 洋一 (翻訳)

この本には以下の3つの読み所がありました。
 
①13世紀南西ドイツに存在した小さな山村、アイフェルハイム。その山村が中世ヨーロッパを襲ったペスト渦に蹂躙され、住民は村を退去した。ペスト渦が去った後も、住民の再定住は起こらなかった。住環境も良く交通の要所であり、周辺の村には住民の再定住がなされたのに、なぜアイフェルハイムには住民が戻ってこなかったのか?

 現代の歴史学者(本書の表現では歴史統計学の専門家と表現されている)がその謎に挑みます。

②13世紀の知識人であったキリスト教の聖職者(本書の「もう一人の主人公」)は、その思考プロセスが恐ろしくロジカルで、少しのヒントで21世紀物理学を理解しうる入り口に辿り着けた(かもしれない)。

 これは決して本書の中だけのフィックションではなく史実としても実際にそうだったようです。実在の著名人も出てきます。またキリスト教と近代科学は、ガリレオやジョルダノ・ブルーノの逸話から、現代の私達には敵同士のようにイメージされますが意外とそうでもない所があったようです。例えば「神の御業」の素晴らしさを良く理解するために自然の仕組みを解明したいというモチベーションがあったなど。

③主人公の歴史学者は、たまたま先端的な女性理論物理学者と同居していた(正式に結婚はしていない様子)。二人が同じ屋根の下で暮らしていたという偶然が「人類史に残る世紀の大発見」を生み出した。

 これは本書のクライマックスで、読んでいて思わずため息が出ました。確かにそういうことがあるかもしれないなと思って、でもそんな偶然は先ず起こらないだろうと思ってです。そういう意味で本書は実に素敵な「現代科学のおとぎ話」だと思いました(おとぎ話と言っても決して悪い意味ではないのです)。
 
 以上を読んでも何が何だか分からないと思いますが、これ以上のことを書くとネタバレになってしまうのです。興味を持たれた方は是非御一読下さい。

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