昨晩『影なき声』(鈴木清順監督 1958年)という邦画を見ました。1958年(昭和33年)といいますと、ブログ主が生まれる2年前です。東京タワーが完成した年で、これから日本の高度経済成長が始まるといった時代です。松本清張の短篇推理小説『声』が原作だそうです。大手新聞社の電話交換手の主人公が業務中に、たまたま強盗殺人犯の声を電話の受話器越しに耳にしてしまい、その後に理不尽な事態に巻き込まれるという物語で、主人公が数百人規模の声を聴き分けるという飛びぬけた能力を持つがゆえに事件に巻き込まれるというお話でした。私が興味深かったのは電話交換手という21世紀の現代では、たぶんほとんど存在しなくなった職業についてでした。以下は電話交換手についての私の思い出についての記述です。
私は小学1年生の夏休みに北海道山越郡八雲町の山奥にある母の実家で3週間ほど過ごしたことがありました。1967年(昭和42年)のことで、今から56年も昔のことです。実家にはガスも水道も電話もありませんでした。水は山の湧き水、熱源は薪でした。かろうじて電気は来ていたようでした。ある日、母が札幌に来ている父に電話するから一緒に来るように言われて付いていきました。電話は地元の小学校の電話を借りるのですが、そこまで1時間くらい歩くのです。しかも道らしい道もなく、ユーラップ川というアイヌ語の地名の川筋を頼りに歩くのです。川は渦を巻いて流れる急流で、足元は危なげな岩場で、私は母にしがみついて歩いたことを良く覚えています。
(続く)
上の写真の映画ポスターの出所はこちらです。
⇒ https://filmarks.com/movies/38096