出張からの帰り道、私は車で夜の山道を走らせていた。
その道中、山と山を渡す鉄橋に差し掛かった時のことだ。
鉄橋の下は深い峡谷になっており、この暗さだと覗き込んでも何も見えない。
仕事の疲れもあったため、やや惚けて運転していると、橋の中央で突然停車した。
エンストか?と思い何度もキーを回すが、エンジンは掛からない。
ガソリンの残量を示すメーターは満タンを指している。
ヘッドライトは消え、対向車や後続の車もないため、月明かりだけが周囲を照らしている。
と、不意に橋の下から白い靄(もや)が立ち昇ってきた。
なぜだか感覚的に霧では無いと判断できる。
それはみるみるうちに視界を覆い、向こう岸が完全に見えなくなった。
えもいわれぬ恐怖感に襲われ、私は再びキーを回そうとした。
その時、突如車が揺れだした。
まるで車体の右側から大勢の人間に押されているかのように、車は徐々に左へと動いていた。
このままじゃ車ごと突き落とされる。
私は必死にキーを回し続けた。
落とされるギリギリでやっとエンジンが掛かり、思い切りアクセルを踏み込んだ。
直後、『バンッ』という破裂音がして急にハンドルを左に取られた。
異常に重いハンドルを死に物狂いで抑えつけ、どうにか鉄橋を抜け切った。
橋を渡り終えて数分後、靄も消えたので私は車を路肩に止め、タイヤを確認した。
車の右前輪がパンクしていた。
私は恐ろしくなり、車を捨てて全速力で山道を駆け降りた。
その道中、山と山を渡す鉄橋に差し掛かった時のことだ。
鉄橋の下は深い峡谷になっており、この暗さだと覗き込んでも何も見えない。
仕事の疲れもあったため、やや惚けて運転していると、橋の中央で突然停車した。
エンストか?と思い何度もキーを回すが、エンジンは掛からない。
ガソリンの残量を示すメーターは満タンを指している。
ヘッドライトは消え、対向車や後続の車もないため、月明かりだけが周囲を照らしている。
と、不意に橋の下から白い靄(もや)が立ち昇ってきた。
なぜだか感覚的に霧では無いと判断できる。
それはみるみるうちに視界を覆い、向こう岸が完全に見えなくなった。
えもいわれぬ恐怖感に襲われ、私は再びキーを回そうとした。
その時、突如車が揺れだした。
まるで車体の右側から大勢の人間に押されているかのように、車は徐々に左へと動いていた。
このままじゃ車ごと突き落とされる。
私は必死にキーを回し続けた。
落とされるギリギリでやっとエンジンが掛かり、思い切りアクセルを踏み込んだ。
直後、『バンッ』という破裂音がして急にハンドルを左に取られた。
異常に重いハンドルを死に物狂いで抑えつけ、どうにか鉄橋を抜け切った。
橋を渡り終えて数分後、靄も消えたので私は車を路肩に止め、タイヤを確認した。
車の右前輪がパンクしていた。
私は恐ろしくなり、車を捨てて全速力で山道を駆け降りた。