俺は今、巷で話題になっている連続殺人鬼だ。
すでに両の手で数えられないほどの人間を殺した。
にも拘らず、警察は未だに俺の尻尾を掴めていない。
警察が能無しというわけではない。
俺の相棒が優秀過ぎるのだ。
なぜなら、俺の相棒は亡霊なのだ。
それも超の付く凶悪殺人犯の。
ロケーションの下見、証拠隠蔽、凶器の補充、その他諸々の作業を代行してくれる。
相棒と出会ったのは、確か俺が二人目の犠牲者を出した時だ。
血に染まり快楽に溺れていた俺の前に突然現れ、
『こんなやり方じゃ、すぐにバレて捕まるぞ。今日から俺がお前をバックアップしてやる』
と顎に手を当てながら言われたんだっけか。
それ以来、相棒とは常に一緒に行動し、殺しのノウハウ等も教わったのだ。
先に述べたように、相棒は名高い殺人犯で、尋常じゃないくらいの被害者を出している。
俺の目標は、相棒の殺害数に並び、追い越し、相棒より有名になることだ。
今日は満月か。
おかげで、暗い夜道でも見通しが良く、被害者の血飛沫も鮮明に見られる。
そんなことを思いながらメッタ刺しにしていると、相棒が顎に手を当てながら言った。
『なぁ相棒、前から思ってたんだが……』
「なんだい?」
『お前の殺し方、なんか美学に欠けるんだよな』
「美学ぅ?殺しに美学なんて必要かぁ?」
俺は笑いながら相棒の肩に触れ……られないんだったな。
『何事にも美学は大事だぞ。俺の美学は死体を丁寧にバラすことだな』
「それ美学って言うのかよ」
そんな談笑をしていると、遠くからパトカーのサイレンが近付いてきた。
『この死体は俺が片付けとくから、早く逃げな』
「おう、いつも悪いな相棒」
そう言って、俺はその場から駆け去ろうとした。
『あ、バカ!』
十字路に飛び出した俺の身体に、車のヘッドライトが当たった。
反射的に目線を向けると、速度違反した大型トラックが。
あ……やっべ……
ドンッ
衝突の直前、俺は相棒に突き飛ばされた。
事故から3週間が経った。
死には至らなかったが大怪我を負った俺は、ようやく完治して今日が退院の日だ。
あの日以来、相棒を見ることはなくなった。
俺の恩人だというのに、別れの言葉も無しなんて薄情な奴だ。
まぁそれは置いといてだ。
次に殺す人間は、どんなふうにバラそうかな。
顎に手を当てながら、俺は考え始めた。