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意味がわかると怖い話2874 「七月三日」

2019年07月01日 09時25分35秒 | 意味がわかると怖いコピペ
ジリリリリリリ。
目覚まし時計が激しく鼓膜を揺らす。僕はうんざりしつつも、目覚まし時計を止めて布団から出た。
昨夜、大学の友人達と遅くまで飲んでいたせいか頭が酷く痛い。
ぼんやりと立ち上がって携帯を開く。
七月三日。
普段通りの待受画面と共に、今日の日付が表示された。
「朝は一杯の水から始めましょう」
誰に言うでもなく水道水をコップに汲み、飲む。うん、カルキ味。
テレビを点けて、朝食の準備に取りかかる。フライパンを熱しているとテレビのニュースキャスターが今朝の事件のニュースを読み上げ始めた。
『今日未明、◯◯市の路上で惨殺遺体が発見されました。被害者は市内の会社員の男性…』
「杉本静」意味もなくそう呟いた。
『杉本静さん。30才で』
冷蔵庫から取り出した卵を落としてしまった。
僕はただ呆然とテレビ画面を見つめていた。
どうして。どうして僕は被害者の名前がわかったのだろうか。気味の悪さで肩が震える。
偶然だろう。
無理矢理そう決めて、床の卵を片付けた。

朝食を済ませると11時だった。だが、いまだに先ほどの気持ち悪さは残っている。
気分を変えようと外出することにした。
部屋を出て最寄り駅へ向かう。久々に服でも買いに行くつもりだ。
最寄り駅のホームには僕の他に老婆一人しか居なかった。黒い服に身を包んでいる。葬式でもあるのだろうか。
そんな事を考えているうちに、電車が到着した。
僕と老婆は同じ車両に乗り込む。
特にすることもなかったので、進む車窓を眺めていた。不意に、老婆が次で降りるな。と感じた。
やはり彼女は、その駅で電車を降りた。
後には、冷や汗をかいた僕だけが残された。

目的地の駅に到着すると、僕はすぐさま改札を抜けた。少し恐怖を感じていたので、早く電車から離れたかったのだ。
駅周辺はやはり休日ということもあってか、人で賑わっていた。
ふと、前の女性の鞄から携帯電話が落ちるのが見えた。どうやったら落ちるんだ。と、辟易しながら彼女に声をかける。
「あの、携帯落としましたよ」「え?あっ!!うわー、よかった。ありがとうございますっ!!」「あ、いえいえ」「本当助かりました」「あー、いえいえ」
なんてとりとめのない会話が続いた。初対面の人との会話だから仕方ない。
でも、どうしてだろうか。彼女とは初めて会った気がしない。
「あのー、失礼ながら僕たち初対面ですよね」
思わず聞いてしまっていた。彼女はビックリしたように目を大きくして、それから吹き出した。
「ぷっ!!えーと、ナンパ?ですか?こんなアプローチ初めてですよ…ふふふ」
「あー、えーと、ナンパとかじゃなくてですね…」
「いいですよ。貴方おもしろいから、どこか行きましょうか」
「は?」

どうしてだろうか。
何故か、したつもりもないナンパが成功してしまった。
「カフェでも行きましょうか」隣の彼女が言った。
僕は小さく「うん」と肯定した。
しかし見れば見るほど見覚えがある。
彼女に付いていったカフェでコーヒーを飲みながらそう思う。彼女はカフェオレを飲んでいる。
「本当に見覚えない?」
「うー?うー…いや、わかんないです」
クスクス笑いながら彼女は答えた。まだ僕が運命信仰家である事を疑っているみたいだ。

カフェを出ると、僕らは映画館へ向かった。
最近話題の映画を観るためだ。
「まさか、見知らぬ人と映画館来るなんて思わなかったですよ。今日の朝」
「僕も」
二人してぎこちなくチケットを買って、上映室の真ん中辺りの席へ座る。
内容は人気サスペンスドラマの映画版だけあって、かなり質の良いものだった。しかし、途中で、またラストシーンがわかってしまった。しかもそれがまたもや正解したのだ。
僕はただ、溜め息を吐いていた。

「予想外なラストシーンでしたねー」映画館から出ると、彼女は興奮したように僕に熱弁してきた。時間は既に6時を回っていた。
「夕食も食べる?」
「折角ですしね」
と、駅前のファミリーレストランへ向かった。
「良かった?ファミレスで?」「はい。私、ファミレスのハンバーグ好きなんです。あの安っぽい味が」「あー、わかる気がする」「じゃあ、ハンバーグ頼むの?」「いいえ、たらこスパゲッティを」「ハンバーグじゃないんだ」
なんて会話を楽しんで、僕達はファミレスを出た。

「家行っていいですか?」突然の提案に、転倒した。驚きすぎた。
「えーと、私かなり貴方を気に入っちゃいました。好きかもしれません」
さらに突然の告白をされた。
ただ僕は「うん」と肯定しただけだった。

「汚い部屋ですが」
僕は彼女を自分の部屋へ招いた。
「おー、リ◯ックマ」
僕のリラッ◯マクッションを抱きながら彼女は部屋をごろごろし始めた。
その姿が可愛すぎて、思わず抱き締めていた。
「あー、僕も君が気に入ったみたいだね…多分、好きだ」
「きゅー」鳴きながら彼女がキスをしてきた。お返す。
「今更ですが、私のお名前は笹原抄子です」あー、やっぱり聞き覚えあるわ。
「今更ですが、僕のお名前は榎夏野です」
「あれ?榎夏野?聞き覚えあります」
「え?本当?」
「まあ、もうどうでもいいじゃないですか」
「それもそうかー」
電気を消してベッドへ入り、僕達は眠った。

こんな出逢いも、たしかにアリだよなー。




ジリリリリリリ。
目覚まし時計が激しく鼓膜を揺らす。僕はうんざりしつつも、目覚まし時計を止めて布団から出た。
昨夜、大学の友人達と遅くまで飲んでいたせいか頭が酷く痛い。
ぼんやりと立ち上がって携帯を開く。


七月三日。



今日も今日が始まる。







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