一人部屋の病室の窓からは、中庭の青葉を茂らせる大樹と入道雲が見える。
『あなたの余命は残り一年です』
そう医師に宣告され、300と60日が経った。
もはや歩くどころか、上体を起こすこともできない。
いよいよ死期が近いようだ。
遺書はすでに書き終え、やるべきことは全てやった。
悔いは残していない。
けれど最期にもう一度だけ、あの木の紅葉を見たかったな……
私は静かに瞼を閉じた……
目を開けると、そこは病室だった。
身体を起こし、立ち上がる。
まるで若返ったかのように、身体が軽い。
窓辺に寄り、外を見ると、そこには見事に紅葉した大樹が立っていた。
これは夢か、幻か……
頬をつねってみると、痛みを感じた。
私は確かに生きていた。
沸き上がる感動を抑え、病室を振り返り、ふと気付いた。
私はいつの間に相部屋に移されたのだろうか。