意味がわかると怖い話２３９２ 「有名人の仕事」

カフェで珈琲をチビチビ飲みながら私は人間観察をしていた。
流れていく人を見ながら私は思う、
「みんなそれぞれ素晴らしい才能を秘めているなぁまだ、芽吹く前だが美しくもある」
この世界はなんて素晴らしいものだろうかと珈琲をまた口に運びながらゆっくりとした時間を堪能していた。

すると子どもが私の前に駆け寄ってきた。

「おじさんテレビで見たことある！有名人？」

まったくこれで何人目だろうか、5年前の運命の日から大人しく１人で珈琲を飲むこともできなくなってしまった。
テレビの影響力は凄まじい。それまで見向きもされなかった私の作品がテレビで取り上げられたとたん、この様だ。まったく、、、

そこで視線に気付いた。どうやらさっきの子どもが親を連れてきたらしい。

「ほら、お母さんテレビの人！すごいね？」

無邪気に子どもは母親に喋りかけているが、どうやら母親は私の事がわからないようで複雑な表情をしている。

「どうも、お母さんですか？」

にこやかに話かけてやった。

「ええ、すいません子どもが。有名人の方なんですか？すいません私わからなくて」

「いや、わからなくて当然ですよ。滅多にテレビに顔が移らないんで」

「そうなんですか？もしかして、作家さん？」

「いえ、しがないアーティストです。」

「まぁ芸術家の方なんですね。私も絵画とか好きなんです。どのような作品なんです？」

「なんというか前衛的な作品で、かなり人の好みを選ぶ作品なんですよ。」


「テレビに出られるくらいなら素晴らしい作品なんでしょうね。見る機会があれば是非みてみたいわ」


「でしたら、近いうちにお見せしますよ。特別席を用意しましょう」


彼女が笑顔で「機会があればお願いしますね」と言った所で子どもが話に待ちくたびれたのかぐずりだした為私たちは別れた。


さて、今日の人間観察はこの位にして仕事にしようと思い私はさっそく仕事に取りかかった。







仕事に熱中しすぎたのか、辺りは暗くなりはじめていた。
私としたことかつい夢中になってしまった。
早いうちに出ないとと急ぎ足で食事を済まし早足で出ていく。

そこで彼女との約束を思いだしメモを手に取った。

素晴らしい作品ができたよ！君のお陰もあったから今回は製作者名に君の名前も入れさせて貰ったよ！