運命と出会う瞬間

映画・小説・音楽・・なんでもありの気ままな感想

その名にちなんで

2008年01月22日 19時09分20秒 | Weblog
 末息子が息をはずませて帰宅。『おかあさん!!いま、あっちの空に羽みたいのがついた丸いのが飛んでた!』『あら。ほんと、じゃ、そうかもね』
そうって、何がそうなのか・・つまりまあ、一般的に言うUFOのことである。
『ふと見た瞬間に空に見えたきらきら光る尾をひいた雲とかはUFOというか、宇宙からの、愛の波動の存在で、見つけたら 『ありがとうー』という波動を送り返すべし、あのテのUFOは飛行機やヘリコプターの『フリ』をすることもあるから、あ、あれは普通のとは違うという直感だけが勝負なんだよ。』「クリスタル・ベル」という写真集で得た知識も交えて、UFOを見たいという彼に伝授したものだから、以来、意識して空を見ているらしい。変なことを教えたもんだが、しかし、夕方近くの空の色や雲は美しい。これを見ないで下向いて過ぎるなんてもったいなさ過ぎる。少なくとも、ゲームをしながら歩いてしまうよりずっといいさ。
・・こういう横暴な教育を受けたので、いまは成人している長男なんかは、大きくなってからは己の母に対してクールな視点で防備する術を取得した。
何度言われただろう。『はいはい、自分の星に還りなさい』って。

その長男から、珍しく映画のオススメを受けた。
フランソワ・オゾンの新作『エンジェル』を観るべし、と。
アヤツが、あえて私に観るようにというからには、どうせ『夢見がちな女性がしっぺ返しに合う、』みたいなストーリーに違いないと心のどこかで踏みながらも、老いては子に従え、と、素直な私はめずらしくポコッとあいた昼に日比谷に出かけた。が、しかし、終わっていた、『エンジェル』は先週で。
勧めるんなら、そこんとこちゃんと調べてからにせよ、と心の中で文句を言いながら映画館の前のポスターを観たら、やや!!これは、あのジュンパ・ラヒリの小説の『その名にちなんで』ではないの。神はちゃんと観るべきものを観るように用意されている、と気をとりなおしてホクホク。
いやあああああ、美しかった。TABUという名の、母親アシマを演じた女優さん。夫に先立たれて25年ぶりにインドに戻り、45歳の手習いで、シタールに合わせて、インドの古来からの唄を唄っている姿をみていたら、この人は、巫女というか、これが本来で、束の間、巷に請われて、次世代にそのエッセンスと血を継がせるために嫁にいったが、本当は何も変わらなかったんじゃないか、と思った。
日本の古代のセオリツ姫とかクシナダ姫とか、そういうのを彷彿させた。
そして、彼女を愛し、家族を愛し、異国に新たな血筋を残したまじめでやさしい夫役(あんないい夫、父親、いるかしら?というくらい)も良かった。村野武範という俳優を太らせてさらに目をこぼれるほど大きくした感じ。
列車事故の生き残りであったその父親は、息子の誕生を、一つ目の奇跡が自分がかつての事故で九死に一生を得たことなら、これは二番目の奇跡だ、と喜んだ。
『その後の毎日が 天の恵みだ ゴーゴリ』と、後に成長した息子に語る。
なんというか。。。ジワジワ、とくる映画だ。うん、まだジワジワしている。これが自分の中でどう着地していくのか楽しみ。映画の主人公は、父親がインドという外套から世界に出ていくきっかけとなった『ゴーゴリ』という名をつけられた。人は自分の名前の意味に影響されて生きる。名前は神聖だ。それを意識している人は少ない。そういう私の名前は・・ううむ、やっぱ巫女系かな。こんなことを書くとまた、『あなたの神社に帰りなさい』とでも言われそうだ。