ポストコロナ期を生きる上で避けて通ることのできない事案の一つです。ベーシックインカムについて、近い将来遠からず具体的に議論する日が来ることでしょう。
ベーシックインカムというのは、「最低限所得保障」のことです。政府がすべての国民に対して、健康で文化的な最低限度の生活を送るのに必要な現金を一律支給する制度です。
今、だいたいどこの国でも生活困窮者に対しては、生活保護、失業保険、医療扶助、育児支援など、いろいろな現金支給がありますが、ベーシックインカムがそれらと違うのは、こういう既存の社会福祉制度をほぼ全廃して、全国民に等しく最低限度の生活に必要な額を支給する点です。
すごくシンプルな仕組みなんです。ですから、最大のメリットは制度設計に時間も手間もほとんどかからないこと。
それからもう一つ、「これこれこういう条件を満たすものだけ支給する」という制限がなくなります。いまの社会福祉制度だと、受給者の側に「自分が困窮者であること」を証明する責任があります。
自分がいかに困窮しており、いかに生計を立てるだけの社会的能力を欠いているかを公的機関に証明しなければならない。問題はここにあって、その恩恵を受給することと引き換えに、受給者の側に屈辱感を覚え、恥じ入ることを要求しているのです。
これは社会福祉制度の抱える倫理的欠陥であると思うのです。ベーシックインカムは「受給者に屈辱感を与えない」という点で、これまでのどんな社会福祉制度よりすぐれていると感じるのです。
もちろん、予測される欠陥はいくつもあります。全国民に生活資金を現金支給するのですから、ものすごくお金がかかります。米国で1人に年間一万ドル(100万円)のベーシックインカムを支給すると、必要な金額は3兆ドルを超え、アメリカのGDPの6分の1がそこに呑み込まれてしまうそうです。
もう一つの懸念は、何もしなくても最低限度の生活は保障されているわけですから、一生ごろごろして仕事をしない人間が出てくるのではということです。
実際に、英国には「アンダークラス」という社会階級が存在します。英国の社会福祉制度が生み出した「仕事をしない人たち」です。ベーシックインカムについて考えるときに避けて通れない問題です。
英国のその社会福祉制度については、近いうちに話題にします。ここ数年で、アメリカやヨーロッパの先進国(ドイツ)では本気で政府がベーシックインカムについて研究して一部で実験しています。
人口が減少して、AIが発達した高度な資本主義社会では、あり得る話し(発想)である思えるようになりました。このベーシックインカムというシステムが定着したらすごくいいことが産出されると考えられるようになりました。
少し長い話になるので小分けにしてまた述べてみたいと思います。