釣の棲家

終の棲家を求め千葉へ移住。旬の魚をすわぶるために迷釣する房総釣行記。

手バネ釣行記 エビでタイを釣る

2011年05月24日 12時01分11秒 | 内房
前回記事をアップした夜、上総湊・とう市丸のHPをのぞくと
「タイ1.0~5.0kg。4.1kgも1枚。1人あたり1~3枚」とあった。
前日は「タイ2.0~5.3kg。3.5kgも1枚。1人あたり0~2枚」。

この釣果を見れば、もはや迷うことなく即決行するしかない。
船頭のケータイに連絡すると「そろそろ連絡しようと思ってたヨ」と
3年振りのご無沙汰にも関わらず快く受け入れてくれた。



大ダイの好釣果を聞きつけて集まった釣り人は常連さんばかり6人。
ひとつテンヤに比べてこの釣りの平均年齢が高いのは否めず、
自分が一番年下と思われる。

鯛一筋60年の4代目大船頭が舵を握り、
息子の5代目船頭が仲乗りとして乗船。
すっかり陽が上った6時に河岸払いとなる。



数日前から大ダイが何枚もあがっているというポイントは、
横須賀火力発電所と金谷港のちょうど中間あたりの本船航路。
浦賀水道の文字通りど真ん中で、指示ダナ「29ヒロ」でスタートする。



各自に活きエサのサルエビが30匹ほど配られるが、
活きエビはこれだけでそれ以後は冷凍モノになるという。
若船頭に聞くと例の大地震後、エビが捕れる大貫沖の
海底の地形が変わったとかで、水揚げ量は圧倒的に減少したそうだ。

小ぶりのエビが多く、その中から大きめのエビを選んで
丁寧にテンヤに付け、久しぶりのエビタイ釣りに士気が高まる。



開始早々、左舷ミヨシの常連さんにアタリが訪れた。
左舷トモ寄りの大船頭から「もう一回、アワセろ」と大声が飛ぶ。
が、残念ながらハリが外れたようでタメ息が反対側の右舷まで聞こえてくる。

どうやらリールを装着した手バネで攻めていたため、
瞬時に連続してアワセなければいけないのが甘くなり、
ハリ掛かりに至らなかったようだ。



アオリイカ釣りなどと同様に「しゃくってなんぼ」のエビタイは
一にも二にも、根気強くしゃくり続けるしかない。
段を付けてエビが跳ねるのを演出したり、
しゃくりの強弱や大きさなどを変えて誘う。



しゃくり続けていると、海面に向けた竿先がわずかに「ツン」とお辞儀するようなアタリが来た。静かに竿先を聞き上げていくと2度目の「コツン」。
すかさず、手バネを持つ右手を頭上いっぱいに振り上げる(第1のアワセ)。

次いで、船べりに寄ってきた糸を下段から左手で掴み、
そのまま左上に抜き上げる(第2のアワセ)。

さらに、竿尻を握る右手中指以降の3本の指で糸を掴んで
右上に抜き上げる(第3のアワセ)。

この一連のアワセ動作を4、5手繰り返すことで、
硬いタイの口にしっかりとハリを食い込ませるのだ。

伸びのあるラージ糸を用いる手バネでは、この連続したアワセが肝要。
大ダイが掛かれば、根掛かりしたように第1のアワセで竿が止められ、
2の手を繰り出す隙も与えない。



3年ぶりの感を取り戻すには絶好の練習となる4手まで糸を手繰る。
途中、抵抗することもなくすんなり上がってきたのは、
朱色が鮮やかな美味しそうなカサゴだった。

開始から1時間ほどたった頃、しゃくり上げようとした竿先が、
ブレーキが掛かるように重くなり、やがてゴン、ゴンと
魚が首を振る断続的なアタリが伴い始めた。

そこから目いっぱい手バネを振り上げ、
すぐに2の手、3の手を繰り出し、ハリ掛かりに持ち込む。

手バネを座席に置き、ゆっくりと糸をたぐり、
足元に輪を描くように重ねていく。
先ほどのカサゴとは明らかに違う重厚な引きは本命を確信する。

いわゆるタイの三段引きの際には、慌てることなく手繰るのを止め、
魚の引きに合わせて右手でやりとりする。

さらに強い引きがきた場合は、糸を掴む親指と人差し指の力を緩め、
糸を滑らせて対応する。エビタイやビシマなどの手釣りでいつも痛感するのだが、「指こそ最強のドラグ」であると思う。



手繰る手を2度止めて海面に現れたのは、
42センチ、1.4キロのやや黒ずんだオスのマダイだった。
3年ぶりのエビタイとなるうれしい本命に目尻が下がる。

タイのアタリは千差万別。
いきなりガツンと竿先を引き込む荒々しいアタリがあるかと思えば、
今回のようにしゃくり始めた途端にアタリが出ることもある。

また、ガブリと頭を齧り取り、次いで胴体に喰らい付く2度食いのアタリも。
こんな時はタイの食い気を誘うためゆっくりと竿を聞き上げると「ゴツン」とくる。間違っても竿先を下げてはいけない。



本命を釣ったすぐあと。左舷トモを振り向くと、
操船しながらしゃくる大船頭の手バネが
グニャリと大きく曲がるのが目に入った。

自分などが2手、3手を加える様はタコ踊りのように滑稽に見えると思うが、
60年の大ベテランが繰り広げるそれは、まるで能を舞うようにしなやかでよどみない。

手繰る手は幾度も止められ、そのたびに糸が引き出されていくのがわかる。
3分、いや5分はかかったであろうか、ようやく浮上してきたのは
ゆうに3キロを超える大ダイだった。



「まだまだ。6キロ、7キロの大デエもいるからね」
そう囃し立てる大船頭の言葉を立証するかのように、
そのすぐあとに左舷ミヨシが騒がしくなり、
常連さんの竿が激しく叩かれている。

今度はしっかりハリ掛かりしたようで、
リールを巻く手が何度も止められ、
手バネが海中に引きずり込まれていく。



船中の耳目を集めてタモに収まったのは、4.5キロ級の大ダイ。
褐色に錆びついた魚体は堂々とした風格と老獪さを漂わせ、
まさにのっこみダイの面目躍如といったところか。

開始1時間弱で3枚の本命が上がり、
今日も大ダイ連発と誰もが思っていた。

しかし8時頃から潮の具合が悪くなり、
昨日まで見られなかったという二枚潮に襲われ、
潮色は一層濁りが激しくなってくる。

海面近くを漂うゴミの量も大幅に増え、
道糸に絡むのを防ぐのに苦労する。



その後、アタリはパタッと止まった。
火力発電所前から流し始め、28~30ヒロを何度も潮回りするが
ワニゴチ、クラカケトラギス、ホウボウ、ウマヅラハギなどの
外道は顔を見せるが、本命からのアタリは途絶えてしまった。



最後は鴨居沖の33ヒロも攻めてみたものの、
次第にこのポイントでは最悪の南西風が強くなり、
白波が船の周囲でざわめき始めた。

この海況にさすがの船頭も白旗を上げ、
正午過ぎに早上がりを告げる。

結局、船中であがった本命は8人で5枚。
数としては物足りない釣果ではあったが、
久しぶりの手バネでキロオーバーの1枚を手にすることができたことと、
2枚の大ダイとのやりとりを目の当たりにすることができ100%満足。

やっぱり、手バネは面白い、を再認識したのだった。



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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
takajinxeさんへ (fu-goo-log)
2011-05-24 18:23:47
釣行記、お待ちしていました。
42cmの本命マダイ、おめでとうございます。他の客のやりとりを含め、臨場感のある記事、見ごたえがありました^^。
跳ねるエビをイメージした演出はフグ釣りにも似て面白く、釣り場も以前、ビシアジで通ったあたりで懐かしい(^^)
返信する
Unknown (白髭爺)
2011-05-24 18:38:45
生きエビで釣らせてくれるのはホントに羨ましい
4月に二度、横浜からリールシャクリで出ましたが、昨年からの年越し冷凍エビで、見向きもされなかった
来月野毛屋から一つテンヤで出て見ようかしら
返信する
Unknown (まるかつ)
2011-05-24 22:20:20
この様な伝統的な釣りをやらせてくれる船頭さんが少なくなりました。
できなくなるのも、もう時間の問題なのかもしれません。
以前お世話になっていた上総湊の湊丸の船長が無くなって廃業されたのが98年だったか99年だったか...。思わず懐かしい手バネを引っ張り出して眺めてしまいましたよ。
良い釣りをされましたね。
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Unknown (たー坊)
2011-05-25 12:40:19
こんにちわ。私など、経験したこともないてばねの世界に引き込まれて読ませてもらいました。手こそ、最強のドラグ。なるほど・・・道具がシンプルな時代は、人の技が磨かれたんでしょうね。素晴らしい釣行記でした。
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fu-goo-logさんへ (管理人)
2011-05-25 15:03:56
fu-goo-logさん

コメントありがとうございます。
返信が遅くなり失礼いたしました。

アワセてから、糸だけで魚とやりとりするこの釣りの面白さが伝わっていただければ幸いです。
久しぶりの東京湾で、自分も懐かしく楽しく釣りができました。
返信する
白髭爺さんへ (管理人)
2011-05-25 15:08:45
白髭爺さん

コメントありがとうございます。
返信が遅くなり失礼いたしました。

宿にも活きエビをストックする生簀があるんで、
他船が調達できないときも活きエビで攻めることもしばしばです。
当日はスムシのような小粒ばかりでしたが、
やはり冷パンに比べるとナマの効果は違いますね。

今後ともよろしくお願いいたします。
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まるかつさんへ (管理人)
2011-05-25 15:15:37
まるかつさん

コメントありがとうございます。
返信が遅くなり失礼いたしました。

そうですか、湊丸さんに通っていらしたんですか。
上総湊に通い始めて16,7年になりますが、
竹岡を含めて船頭の高齢化は進んでいるようです。
でも、跡取りも頑張っていますから、もうしばらくは大丈夫だと思いますよ。
ぜひ、手バネ復活祭を実現してください。
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たー坊さんへ (管理人)
2011-05-25 15:20:55
たー坊さん

コメントありがとうございます。

昨今の高価な道具立てに比べたら、諭吉1枚以下で一式揃えられますよ。
それに自分で手づくりする楽しさもあります。
シンプル・イズ・ベスト。なんですね。
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Unknown (りんりんパパ)
2011-05-26 06:48:44
おいちゃん、いつもに増して格好いいぞお!

アッパレ
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りんパパさんへ (管理人)
2011-05-26 10:16:37
りんパパちゃん

コメントありがとうございます。
魚かけてから、ビシッ、バシッ、バシッと糸を手繰る姿は、わりとカツコいいのよ。タコ踊りみたいだけど…。
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