~ヤリイカ編~から続く
今回乗船した御宿港の國丸は、某釣り雑誌を創刊した今は亡きMさんの隠れ宿でもあった。オニカサゴの鰭を貼り付けた一升瓶を前にして、Mさんはオニ釣り名人の船頭と丁々発止のオニ談義を交わしていたという。
オニカサゴの棲家を知り尽くした船頭が目指したポイントは、
ヤリイカ船団から15分ほど北上した水深145メートルの御宿沖。
操舵室に仁王立ちし、慎重に操船しながら、ダミ声でスタートの合図を送る。
「潮がほとんど流れてねえけど、ここからやってみましょうヨォ」
ヤリイカ150号のオモリから200号に換えるように指示があり、
幅2、3センチ、長さ15、6センチの短冊に切ったサバをチョン掛けし
投入する。オニ釣り仕掛けは、お気に入りの以下の仕様。
クリックで拡大
テンビン直下に直撃タイプの仕掛けをつけ、
先バリはフローター効果でフワフワと誘う、仕掛け交換の容易な3本仕様だ。
船頭の見立て通り、潮はまったくと言っていいほど流れていない。
糸はほとんど真下に立ち、タナを取り直してもピタリとそのまま着低する。
しばらく沈黙状態が続いたが、その後船中でポツリ、ポツリと
お馴染みの外道、ユメカサゴがあがったようだ。
隣を向けば、ヤリイカ同様にオニ釣り初挑戦の新人・池ちゃんも竿を曲げている。「魚ついてる? ゆっくり巻きなよ」と声をかけ、見守っていると、
海面下から赤い魚体が浮かんでくるのが確認できた。
巻き過ぎたテンビンを左手に持ち、右手で懸命にハリスを手繰り寄せる。
浮上してきたのは貴重な30センチ超のスーパー・ユメカサゴ。
宙を漂う左手のテンビンに四苦八苦しながら
ヘラブナ状態で口をパクパクさせる魚を抜き上げようとした瞬間だった。
遠目に見ても見事なスーパー・ユメカサゴは、
海面から1メートルほど宙を舞った後、
悲しいことにハリから外れてしまい海面にポチャリ。
そのまま一目散に海中へと帰っていった。
「あ~アッ。今のは立派なノドグロだオゥ。
刺身にしたら最高だっぺヨォ。
それを、うっちゃっちゃうん(捨てる)だかんヨォ。
あ~アッ、もってえねっ」
マイクを通した船頭のダミ声嘆き節が、空しく風に消えていく。
そんな微笑ましい光景に目を細め、それからしばらくたった頃だった。
竿先に「ツン」という弱々しいアタリが訪れた。
糸を送り気味に竿先を下げると、やがて2度目の「コン」のアタリが。
意を決して竿を大きく合わせ、リールを巻き取る。
これを2度繰り返してハリ掛かりを確認し、ここで電動巻き上げオン。
してやったり、と思ったら、その後から尋常でない荒々しい引きに襲われた。
初めは「もしやアラかもしれない」と慎重に対応したが、
30メートル、60メートル巻き上げてもその引きは一向に収まらない。
フルに巻いたドラグを滑らせ、リールに悲鳴を上げさせて姿を現したのは、
予想通り憎きサメ。それも1メートルはあろうかというシャークだった。
「潮が流れねえと、サメん野郎が出てくるだオゥ。
移動するよ~、上げてくんなオゥ」
船頭は白旗を上げてこの場所に見切りをつけ、次のポイントに移動を告げる。ところが行く先々のポイントでもサメん野郎が現われ、成すすべもなくお手上げ状態。4つ目のポイントにたどり着くまで、ハリス切れを含めて4度もサメにもてあそばれた。
終了まで小一時間、最後のポイントで幸運を運んでくれたのは、
「サメ、釣れてますか?」とちょっかいを出しにきた焼鳥屋J親方だった。
仕事が終わって不眠で駆けつけ、
ドロ~ンとしたノドグロのような目を向ける親方の相手をしていると、
「ツン」のアタリがきた。
丁寧に一連の動作をこなし、しっかりとハリ掛かりさせる。
今度はノドグロより重々しく、サメよりもやさしく上品な引きが
手元に伝わってくる。残り60メートル、30メートルで暴れる、
お約束の「ガク、ガク」の引きもうれしい。
オレンジ色の眩い姿を現したのは37センチ、0.8キロの本命、オニカサゴ。
満足のいく型とは言えないものの、船中第1号となる初物だった。
「やっと1匹あがったオゥ。
早くからココに来れば良かったけんがね~。
こればっかしはやってみねえと、わかんねえしな~」
ようやく肩の荷を降ろすように船頭は僚船にも無線で告げる。
ここは千載一遇の時合とばかり、
すぐに仕掛けを下ろすと再びアタリがきた。
が、残念ながら幼児クラスの引きで、あがったのは定番のノドグロ。
続けざま一気呵成に仕掛けを投じる。
そして5分後、この日のクライマックスは静かにやってきた。
それまでよりもさらに小さい「ツン」のアタリが、
極わずかながら手元に感じられたのだ。
それは、ウネリで見落としてしまいそうなほど微細なアタリだった。
右手で慎重に糸を引き出し、ゆっくりと送り込む。
祈るように第2のアタリを待つことおよそ10秒、
「ゴン、ゴン」の本アタリにすかさず竿を起こし、
ゴリ巻きでハリを硬い口にガッチリと食い込ませる。
棲家から離れるのに抵抗するように
「ガク、ガク」と激しく竿を叩くこの瞬間こそが、
オニカサゴ釣りの至福のひと時だ。
巻き上げ中に「ハイ、これであがりましょう」と船頭の終了宣言を聞く。
一匹目よりさらに重く、激しく暴れながら浮上してきたのは
44センチ、1.5キロの立派なオニカサゴ。
サメに翻弄され、リレー釣りの短い時間で
最後の最後に手にすることができ、
これまで釣ったオニカサゴの中で最高にうれしい一匹となった。
船中であがったのはこの2匹だけ。
幸運にも独占できたのは、小マメな誘いが功を奏したようだ。
「やっぱりこんな潮ん日は、
マメに誘わなきゃダメだっぺね~。
釣った人はよく誘っていたヨォ」
池ちゃんにこうアドバイスした名人船頭から褒められ、
またまたオニ釣りが好きになったことは言うまでもない。
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今回乗船した御宿港の國丸は、某釣り雑誌を創刊した今は亡きMさんの隠れ宿でもあった。オニカサゴの鰭を貼り付けた一升瓶を前にして、Mさんはオニ釣り名人の船頭と丁々発止のオニ談義を交わしていたという。
オニカサゴの棲家を知り尽くした船頭が目指したポイントは、
ヤリイカ船団から15分ほど北上した水深145メートルの御宿沖。
操舵室に仁王立ちし、慎重に操船しながら、ダミ声でスタートの合図を送る。
「潮がほとんど流れてねえけど、ここからやってみましょうヨォ」
ヤリイカ150号のオモリから200号に換えるように指示があり、
幅2、3センチ、長さ15、6センチの短冊に切ったサバをチョン掛けし
投入する。オニ釣り仕掛けは、お気に入りの以下の仕様。
クリックで拡大
テンビン直下に直撃タイプの仕掛けをつけ、
先バリはフローター効果でフワフワと誘う、仕掛け交換の容易な3本仕様だ。
船頭の見立て通り、潮はまったくと言っていいほど流れていない。
糸はほとんど真下に立ち、タナを取り直してもピタリとそのまま着低する。
しばらく沈黙状態が続いたが、その後船中でポツリ、ポツリと
お馴染みの外道、ユメカサゴがあがったようだ。
隣を向けば、ヤリイカ同様にオニ釣り初挑戦の新人・池ちゃんも竿を曲げている。「魚ついてる? ゆっくり巻きなよ」と声をかけ、見守っていると、
海面下から赤い魚体が浮かんでくるのが確認できた。
巻き過ぎたテンビンを左手に持ち、右手で懸命にハリスを手繰り寄せる。
浮上してきたのは貴重な30センチ超のスーパー・ユメカサゴ。
宙を漂う左手のテンビンに四苦八苦しながら
ヘラブナ状態で口をパクパクさせる魚を抜き上げようとした瞬間だった。
遠目に見ても見事なスーパー・ユメカサゴは、
海面から1メートルほど宙を舞った後、
悲しいことにハリから外れてしまい海面にポチャリ。
そのまま一目散に海中へと帰っていった。
「あ~アッ。今のは立派なノドグロだオゥ。
刺身にしたら最高だっぺヨォ。
それを、うっちゃっちゃうん(捨てる)だかんヨォ。
あ~アッ、もってえねっ」
マイクを通した船頭のダミ声嘆き節が、空しく風に消えていく。
そんな微笑ましい光景に目を細め、それからしばらくたった頃だった。
竿先に「ツン」という弱々しいアタリが訪れた。
糸を送り気味に竿先を下げると、やがて2度目の「コン」のアタリが。
意を決して竿を大きく合わせ、リールを巻き取る。
これを2度繰り返してハリ掛かりを確認し、ここで電動巻き上げオン。
してやったり、と思ったら、その後から尋常でない荒々しい引きに襲われた。
初めは「もしやアラかもしれない」と慎重に対応したが、
30メートル、60メートル巻き上げてもその引きは一向に収まらない。
フルに巻いたドラグを滑らせ、リールに悲鳴を上げさせて姿を現したのは、
予想通り憎きサメ。それも1メートルはあろうかというシャークだった。
「潮が流れねえと、サメん野郎が出てくるだオゥ。
移動するよ~、上げてくんなオゥ」
船頭は白旗を上げてこの場所に見切りをつけ、次のポイントに移動を告げる。ところが行く先々のポイントでもサメん野郎が現われ、成すすべもなくお手上げ状態。4つ目のポイントにたどり着くまで、ハリス切れを含めて4度もサメにもてあそばれた。
終了まで小一時間、最後のポイントで幸運を運んでくれたのは、
「サメ、釣れてますか?」とちょっかいを出しにきた焼鳥屋J親方だった。
仕事が終わって不眠で駆けつけ、
ドロ~ンとしたノドグロのような目を向ける親方の相手をしていると、
「ツン」のアタリがきた。
丁寧に一連の動作をこなし、しっかりとハリ掛かりさせる。
今度はノドグロより重々しく、サメよりもやさしく上品な引きが
手元に伝わってくる。残り60メートル、30メートルで暴れる、
お約束の「ガク、ガク」の引きもうれしい。
オレンジ色の眩い姿を現したのは37センチ、0.8キロの本命、オニカサゴ。
満足のいく型とは言えないものの、船中第1号となる初物だった。
「やっと1匹あがったオゥ。
早くからココに来れば良かったけんがね~。
こればっかしはやってみねえと、わかんねえしな~」
ようやく肩の荷を降ろすように船頭は僚船にも無線で告げる。
ここは千載一遇の時合とばかり、
すぐに仕掛けを下ろすと再びアタリがきた。
が、残念ながら幼児クラスの引きで、あがったのは定番のノドグロ。
続けざま一気呵成に仕掛けを投じる。
そして5分後、この日のクライマックスは静かにやってきた。
それまでよりもさらに小さい「ツン」のアタリが、
極わずかながら手元に感じられたのだ。
それは、ウネリで見落としてしまいそうなほど微細なアタリだった。
右手で慎重に糸を引き出し、ゆっくりと送り込む。
祈るように第2のアタリを待つことおよそ10秒、
「ゴン、ゴン」の本アタリにすかさず竿を起こし、
ゴリ巻きでハリを硬い口にガッチリと食い込ませる。
棲家から離れるのに抵抗するように
「ガク、ガク」と激しく竿を叩くこの瞬間こそが、
オニカサゴ釣りの至福のひと時だ。
巻き上げ中に「ハイ、これであがりましょう」と船頭の終了宣言を聞く。
一匹目よりさらに重く、激しく暴れながら浮上してきたのは
44センチ、1.5キロの立派なオニカサゴ。
サメに翻弄され、リレー釣りの短い時間で
最後の最後に手にすることができ、
これまで釣ったオニカサゴの中で最高にうれしい一匹となった。
船中であがったのはこの2匹だけ。
幸運にも独占できたのは、小マメな誘いが功を奏したようだ。
「やっぱりこんな潮ん日は、
マメに誘わなきゃダメだっぺね~。
釣った人はよく誘っていたヨォ」
池ちゃんにこうアドバイスした名人船頭から褒められ、
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最後の最後で大本命、巻き上げ中に終了宣告じゃバラしてはと緊張したんじゃないですか?
おめでとうございます!
巻き上げ中の獲物、船頭さんも鬼さんと確信したようですね(^^)
やはり、ここでもマメな誘いが大切なんですね、納得です。
コメントありがとうございます。
そうですね。Mさんの記事にはしばしば房総弁が踊っていました。
漁師が使う浜言葉はなんとも味があって好きなんです。
緊張のなかで上がりの一尾を釣り上げるのも、また快感です。
コメントありがとうございます。
流れない潮の中で目立たせるにはやはり誘いでしょうか。
オニの目の前にユラユラとエサを持っていければ、パクリが期待できますから。
いいのあげてますね~
うらやまし~
イカと鬼のコラボ、興味アリアリ!
サメの攻撃に耐えたご褒美ですね!いや~うまそ~w
コメントありがとうございます。
外房はイカ&オニのリレーが定番ですから楽しめます。
朝フラッシャーで良型ムツを上げていた人もいましたよ。
サメん野郎が…、アラだったら…。
臨場感あふれる記事ですね~。
ナイスサイズのオニ。。。
偶然、私もさっきアップ出来ていなかった
オニの料理編をアップしました。
また、オニが食べたくなりました(笑)
コメントありがとうございます。
釣って楽しく、食べて旨いオニちゃんですからね。
2キロ超えのオニ目指して励みましょう。
おぉナイスサイズをゲットンしましたね。
船中おいちゃん独り占めみたいだし(あっぱれ)
期待の新人さんに鬼さんもご賞味させました?
コメントありがとうございます。
新人君はね、先月末の中止になったフグにも行くはずだったのよ。
翌日自分が釣って来たフグを彼にあげたらその味に感動してね、
4/30の最終日に友達誘って孝栄さんに行ったんだってさ。
初めてのフグでもそこそこ釣ったようです。
今回のヤリにも声かけたら一発入れ食いで参加したわけ。
もちろん、オニ刺しとヤリ沖漬けをあげたら
あの味にひれ伏していたね。
そして、明日は金谷に金アジ釣りに行くんだって(笑)
完全に釣りにはまった大型新人君です。