ありふれた人生
もう何も考えまい
君が欲しかったものも
僕が欲しかったものも
生きていくことの愚かささえも…
朝は
あんなに青空が広がっていたのに
いつものジョギングを終えた昼前から
雨が降り出した
そんな今日は
オヤジの命日
死んでから
ちょうど丸30年の…
月忌参りの住職と
そんな話をひとしきりしたあと
久しぶりに
昔の葬儀の段取りなどを書き留めた
古いノートを開いてみた
すると
新たに発見したことが…
発見というか
僕が勘違いしていただけのことだが…
それは…
てっきり
オヤジは67歳で死んだものだと思っていたが
ノートには68歳と1ヶ月と書かれてあった
もちろん僕自身の筆跡で…
65歳の春に吐血し倒れてから入院
病院ではなかなか手術に踏み切らず
投薬だけで頑張っていたものの
一向に良くならず…
病院の対応に不信感を抱くようになり
ゴウを煮やして
別の専門病院に転院すると
担当医から
どうしてこんなになるまで放っておいたんだと
ひどく叱られ即座に開腹手術
だけど
時すでに遅かったのか…
術後の経過も芳しくなく
あと数年生きられるかどうかという状況に…
しばらくして
体調がそれなりに安定した頃
最後の帰宅になるだろうと言われ
担当医の勧めで一時帰宅したものの…
久しぶりの我が家で嬉しかったのか
自分が丹精込めてつくった前庭にシートを敷き
育てた木々に囲まれながら
笑顔で美味しいと
いつもよりたくさん食事を摂ったが…
それが悪かったのか
夜になって
我慢できないほどお腹が痛いと呻いて
その日のうちに再入院する羽目に…
どうやら複雑な腸閉塞を発症したらしく
体力も戻ってないのに再びの開腹手術
そしてその後は1年ばかりほど
会話もできない状況の入院生活が続いた
そんなこんなで吐血から2年数ヶ月が経ち
ずっと67歳で死んだものだと思い違い…
いずれにしても
オヤジ本人にも僕たち家族にも
辛くて長い闘病生活だったと…
もう遠い30年も前…
僕がオヤジの声を聞いたのは
お腹が痛いという呻き声だけ…
本当は
もっと言いたいこと
たくさんあったろうに…
ということで
死んだオヤジの歳である68歳まで
あと2年ばかり…
なんだか
ちょっと得をしたような?
奇妙な感覚…
別に
僕の寿命が延びたわけでもないのに…
夏の終わりに…
ふってわいた?
というわけじゃなく…
たまたま時期がぶつかった
というそれだけのこと
だけど
なぜかそれが奇妙な感じがして…
なんていうか
ジジイになった僕が
あらためて試されてるような…
ひとつは
敷地内の離れや車庫を解体して
その跡地に
チャラ息子が家を新築すること…
もうひとつは
長い間放ったらかしにしてあった
隣地の400坪ほどの空き地というか不作農地を
とある不動産屋に売却すること…
2つとも
死んだオヤジから受け継いだもの
というより土地の方は先祖代々からの…
そんなオヤジからの遺産…
離れを解体して
チャラ息子の自宅を新築することは
まぁ許されるというか
死んだオヤジもわかってくれると
思うけど…
先祖代々受け継いできた
400坪の空き地というか不作農地を売ること
オヤジは納得してくれるだろうか?
ご先祖様は許してくれるだろうか?
僕とて本当のところ
売ること自体は
本意じゃないんだけど…
でもいろいろと考えて…
初めは
高値でふっかけて
あわよくばぼったくってやろうかという
そんな下心もあったけど…
口の旨そうな不動産屋の言う
坂の下の行き止まりの道路と繋いで
交通の不便さを解消するとともに
マイホームを欲しがっている人のために
宅地造成をしたいという
社会的?にはもっともらしい言葉を
半信半疑ながら信用して…
ご先祖様もヒトのためなら
許してくれるのではと…
チャラ息子は売ることに乗り気だ
乗り気というか
僕の代から自分の代になったとき
そんな空き地なんか面倒見れないし
余分な土地など
税金や管理費がかかるだけで厄介だという
ただそれだけのこと…
もっとも
この僕だって
草むしりなど見栄え良くするための
要らぬ労力に
ずっと辟易してるんだから…
だけどそうは言っても
オヤジは納得してくれるだろうか?
わからないまま…
いずれも
いま話が始まったばかり
決着がついて形になるには
あと1年くらいはかかるだろう
あと1年か…
僕は67歳になってるか…
オヤジが亡くなった歳
だ…
まだ死にはしないだろう
まだ走り続けているだろう
オヤジよりは長生きするだろう
きっと…
たぶん…
それとも…
死んだ方が良いのか?
親不孝ならぬ
先祖不幸なら…
全国的に旧盆の時期
ただ
我が地は7月の新盆が慣例
すでに墓参りはひと月前に…
そして
恵みの雨…
と言えばバチが当たるか?
西日本を中心にした
ここ数日の全国的な荒天
梅雨時期のような大雨
九州地方などに禍いをもたらして
その勢いはまだ続くような…
だけどやっぱり
個人的には恵みの雨だと…
一昨日は
雨天の合間を縫って雨上がりの中
なんとか走れたものの
昨日今日の2日間の雨空はずっと本降り
走りたくても走れない
結果として良い休足になり
痛みの引かない膝や尻には
ちょうどいい盆休みか?
だけど
3ヶ月を切って2ヶ月半に迫った
10月末の地元のフルマラソン大会
まだ2ヶ月半と言えばいいのか
もう2ヶ月半と言えばいいのか…
3年ぶりの大会参加になるものの
正直なところ
昔ほどのパッションが湧いてこない
コロナ禍のせいと言うより
老化…のなせる…
毎日のように走ってると
自分の走力の変化がよくわかる
変化というより退化か?
老いとともに
身体の軋み具合が大きくなり
たとえ大会に出ても
記録の更新の可能性はもとより
無事に完走できるかどうかさえ…
毎月みたいに大会に参加していた頃が
嘘とも思えるほど
脚の調子は良くない
老いたいま
暑い夏場のルーティンは
日々の7キロジョグが精一杯
暑さもさながら
脚の痛みも激しくなり始め…
これから涼しくなるとしても
以前のように10キロや15キロ
たまに20キロのジョグやペース走
こなせるようになるのだろうか?
大会の1ヶ月前くらいには
30キロ走も1度はこなしておきたいが…
ムリしない方がいいか?
これまで
それでケガしてきたんだから…
すでに
老いとの闘いのなか…
過日
いくつになっても
兄想いの優しい妹からの差し入れ?
泡の出る缶ビール
自分の旦那に買った中からのお裾分け
長くビールを飲んでない僕には
いいようのないほどありがたかったが…
それにしても
酒やタバコを呑んでるようじゃ
まともに走れるわけないよなぁ…
ただでさえ…
30歳で現役を退くのは
少し早いような気もするが
それが彼の選択した生きざまなのだろう
トップアスリートとして駆け抜け
その後も目指すところがあって…
凡人で素人ランナーのジジイには
想像の及ばぬ想いだとは思うけど…
出来れば
もう一度寒い時期のレースに出て
2時間5分どころか4分をも切る記録更新と
トップでゴールテープを切る姿を残して
引退してほしかった
その方が
暑い夏のオリンピックで6位入賞するよりも
後輩の若い選手たちの成長を促すことに
なったのじゃないだろうか…
素人ランナーのジジイの独り言
いや願いか…
そうは言え
これまでの彼の競技人生に
拍手喝采を送ろう
言葉では言い表せないほど
ハードだったのだろう
フィジカルな才能はもとより
メンタルでも秀逸した才能…
66歳のジジイには
計り知ることさえもできない…
誰もが予想したとおり
金メダルを獲ったのは
非公認で2時間を切る
信じ難いタイムを持つ
36歳のケニアのランナー
彼のフォームを見ていると
誰よりも芸術的に見えるのは
僕だけだろうか?
マラソンランナーとして
しなやかで細く
均整の取れた体格の動きは
疲れを知らない機械のようにも思える
30キロを過ぎたあたりから
ゴールまでの残りの距離と
自分の持つエネルギーとを計算して
ペースを上げラストスパートをかけるという…
才能というより
もはや神がかり
絶対王者と言われる彼の引退は
一体いつやってくるのだろう?
まだ当分走り続けるのか?
彼を脅かす誰かが現れるまで…
オリンピックも終わり
8月に入ってから
初めてルーティンの7キロ超えの
8キロジョグを走ってみた
このクソ暑いさなか…
夏場のルーティンを7キロと決めているのは
それ以上走ると
汗っかきのジジイ
滝汗でシャツやランパンだけじゃなく
シューズまでびしょ濡れに
なっちまうから…
今日は台風の影響で
いくぶん風も強く
いつもより汗はかかないだろうから
1キロだけ余計に…
そう踏んだのが甘かった
足下からの
アスファルトやコンクリートの照り返し
体感的には40℃を超えてるような…
最後の1キロは
顔がほてってボーっと半ば意識朦朧に
まさにヤバくて…
家に辿り着くと
すぐさま風呂場に駆け込んで
ウェアを着たまま
頭から冷水シャワーを浴び続けることに…
何年か前までは
途中で水分補給を何度もして
15キロだろうと
20キロだろうと
シューズがびしょ濡れになっても走ったのに…
もうそんな
体力も気力もない
いまはむかし
か…
やがてそのうち
走ることすら出来なくなって
いまを懐かしむ時が
やってくるのだろうか?
老いとの闘い
まだまだ根をあげるのは早い…
と
思いたいけど…
死ぬかと思った?
5キロジョグ…
たった5キロなのに…
4キロまではそれなりに走れて
いつもの7キロくらいは
行けそうだと思ってすぐ…
コーナーを回った途端に
不意に意識が飛びそうになった
何とか5キロまではと頑張ってみたら
その5キロ目が最も速いペースになったけど…
脚のダメージもそれほどじゃなく
息も上がってたわけじゃない
なのに…
たった5キロでギブ…
路面から湧き上がるような熱風
ジジイの意識を朦朧とさせてた…
ってか…
こんなに暑い真夏のさなかに
直射日光を浴びながら走るなんて
66歳のジジイには自殺行為かも?
かも…ってか
まさにそのものだよなぁ〜
でもいいか?
走れるうちは…
たった5キロでも
いや…
たとえ2〜3キロだって…
走れるうちに…
走っとかないと…
真っ黒に灼けてますね〜
ゴルフ灼けですか?
アラフォーくらいだろう
若社長は僕の脚を見ながら…
いや
ランニング灼けだよ
なるほど…
シュッと絞られ具合はそんな感じですね
毎日走られてるんですか?
あぁ…
大体はね
いつもどれくらい走られるんですか?
まぁ今日みたいガチ暑い日は
5キロが限度かなぁ〜
夏場は7〜8キロってとこ
冬場はその倍以上は走るけど…
この暑い中を5キロも!
マラソン大会とか出れるんじゃないですか?
もちろん出てるよ!
もっとも最近はコロナで大会もないけどね…
午前中から走ってるなんて
仕事はされてないんですか?
してないよ〜
定年後のプータローさ
えっ?
おいくつなんですか?
66歳だよ…
え〜っ!
マジですか?
全然そんな歳に見えませんね〜!
半分以上はお世辞だとしても…
まぁ何歳でもいい
若く見えるならなんでも…
走れるうちに…
走っとかないと…