ありふれた人生
もう何も考えまい
君が欲しかったものも
僕が欲しかったものも
生きていくことの愚かささえも…
ショートボブというより
無造作にカットされたヘアスタイル
ブルーのTシャツからは
はちきれんばかりの両腕
くびれのない寸胴と
ランパンに隠された
アクセントも感じられないヒップ
黒いレギンスで覆った
太めのふとももとふくらはぎ
だけど
単なるおデブさんではない何かが
彼女の後ろ姿からは感じられた
小太りなのに
動きそのものがそんなに重くない
というよりむしろ軽く見えて…
いわば
成長しきれてない
女子中高生にありがちなスタイルだと
僕の目には映って…
でもたしか18歳以下は
ウルトラに参加できないはず…
ってことは20代か?
15キロ過ぎから
追い越したり
追い越されたり
繰り返し続いていた
その間
道端で応援してくれてる人たちや
エイドステーションのオバさんたちに
走るの代わってよ〜とか
もう帰りたいよ〜とか
死んじゃうよ〜とか
ジョークを投げかけながら走ってたのを
シッカリ聞いていたのか
信号待ちの交差点で止まったとき
彼女はそれまでかけていた
真っ黒なサングラスを外して
僕に微笑みかけながら隣に並ぶように…
チャラいジジイランナーは
そんな彼女の笑顔に嬉しくなり
思わず声をかけた
ワカモノ女子よ〜結構速いじゃん!
オジさんこそ〜!
そして
シンクロするように声を出して笑った
お互いに…
それから
同じように何度も
追い越し追い越されつつ…
この調子で折り返し地点まで行ければ
それでもう完走できるんじゃない?
何言ってんだよ
折り返してからがウルトラの本番さ!
わかってるような口振りは
彼女よりも自分自身に言い聞かせるために…
51キロの折り返し地点まで長く続く
急な登り坂を頑張って歩くジジイの脚は
すでに限界に近く…
ようやく折り返し地点に辿り着いたものの
歩いて登るのが必至の急坂は
下るときも駆け降りられないほどの勾配で…
それまで感じることのなかった
両膝上の内腿の痛みと疲労感が
完走への不安を俄かに駆り出し…
(こりゃヤバいゼ〜)
(完走できるかな…)
そう思った時点で
たぶん僕は負けてしまっていたのだろう
急坂が終わってからも続く
緩やかな長い下り坂になっても
内腿の痛みと疲労感は消えず
消えるどころかますますひどくなり…
そんなジジイを置き去り?にして
ワカモノ女子は軽快に進んで行った
やっぱり若いってことだなぁ…
折り返し地点から15キロほど進んだ
とあるエイドst.に
ヘロヘロになって辿り着いたとき…
オジさん遅いよ〜!
待ってたんだよ〜!
おおっワカモノ女子よ〜
やっぱキミ速いじゃん!
彼女の顔は疲れた風もなく
表情は元気そのもの
ネェ
一緒に写真撮ろうよ〜
(なんだそれでオレを待ってたのか?)
彼女は自分のスマホをリュックから取り出し
エイドのボランティアのオバちゃんに渡した
オバちゃんがスマホのカメラを向けたとき
僕は当たり前のように
彼女の肩に手を回して軽く抱くみたいに…
そして
彼女の方も何の躊躇いもなく
僕の腰に腕を回して…
ピースやグーサインで
何枚かのショットを…
見ず知らずの
ジジイランナーとワカモノ女子なのに
あたかも仲の良いカップルのごとく…
4年前に仕事をリタイアしてから
こんな風に若い子の肩を抱くことなんて…
エロジジイの性根は治らず…
それじゃ
アタシは出発するからね〜
エッ?
じゃあ今の写真はオレには?
無事に完走ゴールしたら渡すから!笑
ガチで完走キビシ〜よ〜オレには!泣
じゃあまたね〜
頑張ってね〜
おお〜
またな〜
手を振りながら走り始めた彼女に
手を振りかえしながら
そう返事をするのが僕には精一杯だった
(写メ欲しいなぁ…)
残された40キロ弱の道のり
制限時間までは6時間ほど…
キロ9分ペースで走れれば
ギリギリ完走できそうだけど
僕の脚はすでに悲鳴すら上げられないほど
ダメージを負っていて…
無理をしないで
しばらく歩き続ければ
もしかすると復活するかもしれないと
希望を捨てないでエイドをあとにしたが…
彼女…
ワカモノ女子とあいまみえることは
2度となかった
持っていたサプリも全部つぎ込んだものの
ジジイの脚が甦ることはなかった
80キロのエイドまであともうちょっと…
そう気持ちを奮い立たせながら
自販機で買ったドリンクを手に
フラフラになって歩道を歩いてると…
不意に横付けに止まったワゴン車
中から降りてきたのは
大会事務局のTシャツを着たオジさん!
このままじゃ
制限時間に間に合わないので
リタイアして車に乗ってください
あと25キロくらい
制限時間まで3時間半ほど
普段だったら何でもない距離と時間なのに…
そう思いながら
悔しさが込み上げてきたけど
もう歩かなくてもいいと
ホッと胸を撫で下ろしたのも
間違いのない事実で…
今のこのザマじゃ…
ゴールまであと10キロばかりの地点
リタイアしたランナーたちを乗せた
大型バスに乗り換え
綺麗な夕焼けを見てボ〜ッとしてた僕の目に
飛び込んできたのは…
見覚えのある
あのワカモノ女子の走る姿
(おお〜っ!走ってる走ってる〜!)
(制限時間まであと1時間半近くだぜ〜!)
(頑張って無事にゴールしろよ〜!)
打ちひしがれつつも
心の中で叫んだジジイランナーのエール
ワカモノ女子に届いただろうか?
もう一度会いたい…
よもやリタイアするとは
考えもしなかったスタート前の勇姿?😂
脚の痛みは
当分消えそうにない…
ワカモノ女子への想いも
当分消えそうにない…
いよいよ明日が本番
103キロのウルトラマラソン
というか楽しみながらのマラニック
いや
67歳のジジイにとっては苦しみながらか?
怖くもあり
楽しみでもあり…
怖いのは103キロを完走できるかどうか?
コース的には
もちろんアップダウンはあるものの
そんなに厳しくもない…
が…
やはりフルの42.195キロとは違うから!
わかりやすく言えば
フルを2回とハーフを1回の距離を
1日で走るわけだから…
楽しみなのは
やはりなんと言っても
その103キロを走れるということそのもの
まぁ
完走できるかどうかは別にして
67歳にしてスタートラインに立てること
そのワクワク感がなんとも言えない
走ったことのない人には
ほとんどわからないだろうが…
もちろん
マラソンやジョギングなどしない人には
まったくわからないだろうし…
僕だって
走る前はマラソンがどうして楽しいのか
まったくわからなかった人種だから…
100キロ以上のウルトラマラソンの戦績は
過去5年間で1勝4敗?
1回だけ完走できて
あとの4回は途中リタイア
リタイアのうち
関門の制限時間に間に合わなかったのが2回
終盤で走るのをやめたのが2回
成功したのは一番最初に走ったヤツで
ウルトラマラソンの怖さを知らずに
無謀にもチャレンジしてみただけで…
それが良かったのか?
かもしれない…
67歳になったいま
参加する大会が最後の大会だと
毎回言い聞かせながら走れれば…
チームのメンバーは
明日の103キロを走った後
2週間後にも
よりハードな
ウルトラマラソンを走る予定らしい
知ってれば
僕も100キロは無理だけど
71キロコースならエントリーしたかも…
まぁ9月には
コロナ禍で100キロから60キロに縮小された
地元県内のウルトラマラソンを走るから
67歳のジジイにはそれでヨシとしよう😅
午後からはメンバーとともに
参加受付に隣県まで出かける手筈
これから準備をして
明日の真夜中の出発に備えるとしよう
今夜は眠れるだろうか?
日付が変わると同時に
起きなければスタートに間に合わないけど…
はてさて67歳のチャレンジ
陸上経験もなくアスリートでもない
単なる素人ランナーのジジイのチャレンジ
結果は如何に?
怖くもあるけど…
やっぱり
楽しみだなぁ!
来週土曜のウルトラマラソン
103キロ本番のほぼ1週間前にして
俄にひどくなってきた痛み…
今日も10キロでいいから
走ろうと思ったのに
朝イチの庭掃除さえ
まともにできないほどの激痛で…
その痛みとは…
「腰痛!」
これまでの長い人生の中で
ほとんど縁のなかった腰痛
腰痛なんか
僕以外のどこかの誰かがなるものだと
てっきり思ってたのに…
なのに
どうして急に出始めちまったのか?
友人や知人の多くに
ギックリ腰などに悩む人は多かったが
腰が痛くなったことのない僕には
どうしてそれほど苦にするのか
まったく理解に苦しんで来たけど…
ついに
67歳にしての初体験?
って…
そんな悠長なことは言ってられない!
あと1週間で治るのか?
初体験の腰痛
5〜6日前に発症し
最初は久しぶりに取り掛かった
前庭の草むしりのせいだと思ってたが…
容易に痛みがひかず
なかなか治りそうにない現状
湿布や鎮痛剤のクリームはもちろん
痛み止めの飲み薬も服用してみるけれど
一向に治る気配すらなく…
もしかしたら
その痛みを抱えたまま走った
3日前の10キロジョグが輪をかけた?
のかも…
でも腰痛自体は
腰を屈めるときに痛みを発するので
ジョギングにはさほど影響がなく?
スロージョグなら何とかこなせたから…
とはいいつつも
思うように走れなかったのも事実で…
67歳にして
いままで経験したことのないことが
初めて起きるなんて…
っていうより
歳をとったからこそ
経験のなかった痛みが出てくるのか?
そうだよなぁ…
そういうことだよなぁ…
それが歳をとるってことだよなぁ…
特に身体の不都合は…
そういうことだよなぁ…
1週間ほど前
10連休という長かったGWの終わりに
姉夫婦と妹夫婦
そして息子一家の10人ばかりで
年末に亡くなったバァさんの納骨と
永代祠堂教の儀式をようやく終えた
これでひと段落というか…
そんな感じがしているが
一周忌となる年末も
あっという間にやってくるのだろうか?
そしてその1年後の三回忌も…
4歳の初孫くん
大きくなっても葬儀から一連のことを
ちゃんと覚えててくれてるだろうか?
いま仏壇周りは
約4ヶ月もの間祀っていた骨壺も無くなり
遺影写真も鴨居の上の先祖代々の端っこに
新しく並べ整理してスッキリと…
スッキリとしすぎて?
毎朝の仏壇参りも拍子抜けしたように
どことなく寂しくて…
バァさんが亡くなるまでは
週に一回くらいしか仏壇を開けなかったけど
今では毎日御仏供を供え線香上げて
手を合わせるのが日課になってしまって…
仏壇の蝋燭に火を点けないと
一日が始まらないような気がして
信仰心の薄いというより殆どない僕にとって
それが良いのやら悪いのやら…
段々とジジイになりつつあるのか?
ホンモノの…
ジジイになりつつあるといえば
今年になってから
思うように走れなくなってきたことも…
去年まで
ほぼ毎日続けていたジョギングも
毎日はすっかり難しくなってきた
特別に長い距離を走ってるわけでもないのに
一日置きで走るのがやっとという現実
一日置きでも
一向に治らない坐骨神経痛と
脚腰にまつわる疲労や痛み…
1日くらい休んでも
まったく回復しない感じで…
ノルマにしてるわけでもないけど
月間200キロ超えは徐々に困難に…
今月末の103キロマラニックまで
ちょうどあと2週間
もう一度でいいから何とか完走したい
身体の衰えが着実に訪れているのは
間違いなく…
若い頃に比べると
まったく動かなくなったのはもちろん
そういうことじゃなくて
どういうふうに言えばいいのか…
単なる老いというより
いわゆる自分の死というものが
段々と間近になってきたような…
こうやって
身体が動かなくなって
言いたいことも言えなくなって
やがてそのうち…
そんな焦燥感というか
恐怖感に近いものが…
亡くなったバァさんが
マサにそんな感じで…
今年で67歳を迎えたけれど
いつまで前庭の手入れ
高い脚立の上に立ったり
身を捩らせながら高木に登って
てっぺんの枝葉の剪定ができるのか…
70歳代になっても?
今年はまだなんとか無事にできてるけど
果たして来年の今頃になると…?
そんなことからも
早く注文したオープンカーが
納車されないかと思うこの頃
生涯で初めての軽自動車
そして電動式のオープンルーフ
視力が大丈夫なうちに
手足が充分に動くうちに
初孫くんを乗せて楽しく走りたい思いが…
何年
乗り続けられるかわからないけど…
運転免許証は
あと5年間は有効だから…
腰が曲がって背中が丸まった
ホンモノのジジイになるまでは…
できれば
今日も20キロを走りたかったが…
もちろん
一日置きだから走れない距離でもないけど
67歳になった老体には
不測の怪我やトラブルは極力避けないと…
なので
さほど調子は悪くなかったけど
今日は15キロに抑えて…
そう思って
15キロに抑えたのがよかったのか?
脚の疲労具合もさながら
またもや持病の坐骨神経痛だけ…😭
15キロを走り終えて
チームのメンバーたちの記録を確認中に
とある10歳ほど歳下の
県内の某女性ランナーの記録に目が…
同じ今月末の
103キロのマラニックを走る予定で
すでにエントリー済みらしく
練習ランキングに順位と記録が載ってて…
ランキング期間の距離数の記録では
ジジイの僕よりも下位の部類だけれど
内容を覗き見てビックリ‼️
4月中に
今度のマラニックの試走をシッカリと❗️
タイムはさておき
往路と復路の試走それぞれ1回ずつ
4月中にこなしてるなんて
なんて用意周到な…👅
4月中に僕が走った最長距離は
中旬のフルマラソン大会本番の42キロの
たった1回だけ…
それに比して
彼女はシッカリと往路復路の試走をそれぞれ
50キロ超えのシミュレーションを着実に…
いろいろ調べてみると
僕と同じように
本来のスタートより30分早い
アーリースタートらしく…
そんな用意周到というか
準備万端な女性ランナーに
やがて70歳になろうとするジジイが
勝てるはずもない!
男女の差があったとしても
ランニング経験の有無もさながら
10歳という年齢差は思いのほか大きい!
特に50歳代と60歳代では…
いわば
中年と老年の差というか…
それは
走ることだけじゃなく
いろんな体力的というか身体的な
能力や機能の差があって…
まぁ
それって
哀しい老いぼれジジイの嘆きでしかない?
んだろうなぁ…
いまさらそれを嘆くより
他人(ヒト)のことはさておいて
しっかりと制限時間内に完走できるよう
あとしばらく練習するだけさ
ポンコツジジイにできることって…
それだけさ…