ありふれた人生
もう何も考えまい
君が欲しかったものも
僕が欲しかったものも
生きていくことの愚かささえも…
まだ違和感は少し残ってるものの
昨日とは違って格段に痛みの引いた
右足首のアキレス腱の付け根あたり
今日こそ
ある程度の距離を走れるだろうと…
最低でも10キロくらいは…
調子が良ければ20キロ?
いや…
いくらスロージョグでも20キロは長すぎる
また脚を痛めかねない
とりあえずは走り出してから…
走り始めると
案の定
右アキレス腱の付け根あたりに少し痛み…
でも痛み止めを飲んで来たから
今回はそのうち治まるだろう…
そう思いながら最初の1キロ
たしかに痛みは薄れていったが
身体がやたら重い
1週間も走ってないと
こんなに重くなるものかと…
しかも走り方を
身体が全く忘れている
どうやって着地すればいいのか
どうやって踏み出せばいいのか
大したことねぇなぁ
素人ランナーのジジイって
そうだよなぁ
こんなもんさ…笑
それでも
何キロか走ってると徐々に身体が慣れてきて
少しは走り方を思い出してきたような…
何とかいつもの17キロコース
キロ7分ペースのスロージョグだったけど…
無理することはなかったし
ひょっとすると
平成最後のジョギングになりそうだったから…
無事に走ることさえできれば…
とりあえず
次の大会は6月のウルトラ100Kだから
スピードよりもスタミナ重視
長い距離を走れる脚というか
バテない身体を作っておかないと…
走り終えるやいなや
速いメンバーからのLINE
県内の9月のウルトラに続いて
10月のウルトラにもエントリーしたと…
速いメンバーは
去年も同じパターンで走ってるからなぁ
でもその後すぐに
地元の○○マラソンがあるのに…
まぁ抽選に当たればの話だけど…
僕もどうしようか?
9月のウルトラ…
去年も一昨年もDNF
一度は完走したいと思うけど…
ホントにどうしよう?
走りたいのはヤマヤマだけど…
(まだ走るのか?いい歳をして…)
(6月のウルトラの結果次第か…)
って…
勘違いのジジイランナー
まだまだ続くのか?
良い天気だし
大会終わって1週間だし
今日こそ走ってみようと
そう企てた途端に…
それを台無しにするかのように
夜中から痛み始めた
右足首の後ろ側
アキレス腱の付け根あたり
マラソン大会で痛みを感じていた
前側とは違って…
(左足首が何とか治ったと思ったら…)
(今度は右足首の方へ移ったのかよ〜)
痛みの感じからすると
マラソン大会の時とは違って
痛風発作か擬痛風のような…
(酒の飲みすぎか?)
(それしか心当たりがないけど…)
すぐに起きて痛み止めを飲んだが
朝になっても痛みは全く引かず…
朝食の食パンを頬張った後
もう一度痛み止めを飲んで
痛みが和らぐのを待った
ちょうど今日は
30年近く前に亡くなった親父の月命日
なので
菩提寺の月参りがあって…
あぐらもかけない情けない格好で
仏壇でお経を唱えるT大卒の住職の後ろに座った
住職のオツトメが終わる頃には
痛風の痛みも徐々に引いてきて
まだ違和感は残っているものの
何とか走れるんじゃないかと…
早速
ジョギングウェアに着替え
外へ出て走り始めたが…
ぼやけていた足首の違和感
楽観的な思いとは反対に
段々と悪い方に逆戻りして…
そのうち
ハッキリした痛みに戻ってしまった
これ以上走るとヤバいと思い
2キロ地点で走るのをやめて
折り返してから帰りの2キロ
ビッコを引いての徒歩帰還…
走り始める前の意気込みは見事にしぼんで
顔を歪めながらのウォーキングに変わった
あ〜ぁ…
歳取るとうまくは行かないなぁ
満足に身体を動かすこともできないということか…
ガックリ…
とは思うものの…
そんな落ち込みとは全く正反対
なぜだか
7月のアタマの県内ハーフ大会に
期限ギリギリでエントリー手続き
走れるか走れないか
脚の調子
まったくわからないのに…
何を血迷ったのか?
自分でもわからず…
その1ヶ月前に走ることになってる
ウルトラ100Kも忘れて…
身の程知らずの
向こう見ずのジジイランナー
治りそうにないなぁ…
まだまだ…
それって
死ぬまでか?
死ななきゃ…
か?
どっちにしても…
ようやくの土曜日
ようやく…
というか…
というのも
月曜日から始まった
初孫くんの園の送迎
ひと区切りついて…
たった5日間しかしてないのに
溜まってる疲労感がハンパない
精神的な…
とにかくやたら泣くのが難点
のけぞって倒れてしまうほど…
園でも有名な泣き虫ぶりらしく
それでも先生たちからの
園生活にも少しずつ慣れてきたという
そんな言葉にひと安心
園から帰って我が家に着くと
しばらくはおとなしくしてるようになったけど
1時間も経てば早く自分のおウチに帰りたいと
ママやパパのもとに行きたいと泣き続け…
ジジイの役目
まだまだ及第点には届かないな…
それはそうと
初孫くんの両目の具合
昨日少し腫れてたけど
もう治っただろうか?
仕事を終えたママにすぐに来てもらい
近所の小児科へ連れて行ったものの…
原因も病名もハッキリせず
眼科にでも行かなければ
詳細はわからないらしい
世間様は10連休が始まったが
今日は初孫くんもママやパパと一緒に
ノンビリとした1日を迎えてるのかな
眼科へは行ったのだろうか…
マラソン大会を終えてから6日目
そろそろジョギングを再開したいが…
いかんせん
足首の調子がなかなか戻らない
シップは毎日貼ってるけど…
ふくらはぎの肉離れの方は
かなり良くなってきた感じ
マラソン大会でもそこそこだったし…
明日の日曜日はお天気も良さそうだから
久しぶりにスロージョグを試してみるか…
そういえば
マラソン大会で不思議なことが…
15キロくらいのエイドで
背後から声をかけられた
かなり汗かいてますね〜
いつもよりスローペースじゃないですか?
振り向くと
編笠をかぶったサングラス姿のランナー
編笠を見て
去年からずっとそのスタイルで走ってる
知人ランナーのOさんだと思ったが…
よく見ると
背はOさんより大きいし
身体も痩せ型じゃなくて
どちらかといえばポッチャリ型
それに第一どう見ても僕より年下の感じ
え?
一瞬
誰だろうとわからないフリをしていると…
オレですよ〜
オレ〜!
おおっ…
お疲れさん
と…
彼のオレですと言う声の勢いに負けて
まるで思い出したように答えたものの
実際のところ誰だかわからなかった
もともと汗っかきなんだよ
それにこの間
ふくらはぎのの肉離れを起こしたとこで
このペースが限界だよ
そう話しながらオレンジを頬張った
誰だかハッキリ思い出せないまま…
(誰だったっけ?コイツ…)
(オレを誰かと間違えてるんじゃないのか?)
走ってるとたまにある
人間違いされること…
だから
コイツも僕を誰かと勘違いしてるのかも…
でも
わざわざコトをあらだてる必要もないか
そう思いながら
エイドを後にして走り出したが…
彼もほとんど同時に走り始めたようで
しばらくの間
抜いたり抜かれたりしながら
似たようなペースで走り続けていた
彼のの姿を目にしながら
誰だったか必死に思い出そうとしてはみたが
やっぱりどうにも思い出せなかった
途中でトイレに寄ってからは
彼の姿を目にすることはなくなっていたが…
30キロあたりのエイド間近で追いつき
左側を走ってる彼から離れて
右側から追い抜いた時
不意に僕の名前を呼ぶ声が…
○○さん〜!
後ろ走ってたんですか?
てっきり先に行っちゃったのかと…
僕はもうヘトヘトです!
声の主は
もちろん編笠の彼だった
しかも
今度はハッキリと僕の名前を呼んで…
(ええっ?ホントに誰なんだよコイツ…)
オレももう脚がもたないよ〜笑
そう笑ってごまかしたものの…
全く誰だかわからずにいた
でも僕の名前を呼ぶということは
僕を知ってる誰かに違いない
人違いじゃないということだ
誰なんだよ〜
一向に心当たりもなく…
ゴール後
編笠のランナーのことをメンバーに話すと…
そういえば
似たようなタイムでゴールした中にいましたね
編笠のランナー
でもOさんじゃなかったです
あんなにゴツくはないし
背も高かったですよね?
だろ?
それにゴールした後で
この大会の役員らしい人とずっと話してましたよ
関係者かもしれないですね
そう話す速いメンバーは
僕なんかよりも図抜けて顔が広いはず
そんなメンバーが
編笠のランナーを知らないとなると…
一体
編笠のランナー
誰だったんだろう?
マジに見当がつかないんだけど…
世の中
不思議なことがあるもんだ…
素人ランナーのジジイを知ってるなんて…
しかも僕の持ちタイムもある程度知ってて…
写真には写ってないけど
この後方に編笠ランナー…
車内の席に戻ると
ずっと俯いたまま
両手で覆った顔を上げることが出来なかった
とめどなく溢れてくる涙を
抑えることが出来ずにいた
ついさっきまで
ホームで見送りに来てくれていた彼女
目の前の彼女を
抱きしめれば良かったのだろうか?
いや
そうじゃないだろう
そんなことをすれば…
一緒に列車に乗って行くと
泣いていた彼女を押しとどめることだけが
僕に出来る唯一のことだと…
結局
サヨナラも言えず
幸せになれよとも言えず…
彼女の泣き顔だけが
まぶたに焼き付いた
どうして
結婚を決める前に相談してくれなかったんだよ
誰かとの結婚式を1ヶ月後に控えた今になって
やっぱり僕と結婚したいだなんて…
いまさら…
早すぎるんだよ
22歳で結婚しちまうなんて…
彼女を恨むつもりは全くなかったが
悔やんでも悔やみきれなかった
彼女と別れてからの年月
たったの3年半
いくら取り戻そうとしても…
何年かぶりに
彼女からの電話を受けて2週間ばかり
僕の心は嵐のように揺れ動いていた
心だけじゃなく
僕の家族や
おそらく彼女の家族も同じように
嵐のような時間だったのじゃないだろうか
最終的に
僕はいわゆる常識的な道を選ぶことにした
した…というか
せざるを得なかったような…
1ヶ月後に結婚式を控えているのに
世間知らずの若造には為すすべなど
何もなくて…
好きだという想いだけで
彼女を幸せに出来るはずもなく…
おそらく次の停車駅
隣県のT駅から乗り込んできたのだろうと思うけど
空いていた僕の隣の席に誰かが座った
僕は両手で顔を覆ったままだったが
俯いた視野に入ってきた細いスラックスは
女性客の脚らしかった
女性客の脚らしいと感じただけで
それから東京に着くまで
一度も隣の女性客の顔を見ることもなく
俯いたまま…
ひょっとして
時折
漏れた小さな嗚咽が
彼女に聞こえていたかもしれない
東京駅に着いて
棚の上の手荷物を降ろそうとして
初めて顔を上げたような気がする
その時
隣に座っていた女性客が僕の顔を見たのだろうか?
どうなのかわからないけど…
列車から降りてホームに立ったとき
不意に横からオバさんが語りかけてきた
ねぇお兄ちゃん
アタシ恵比寿でお店やってるんだけど
今度気が向いたら顔を出しなよ
ご馳走するよ
待ってるから…
それだけ言って
彼女は名刺を1枚僕にくれた
あ…
ありがとうございます
頭を下げてそう返事をするだけが精一杯で
中年の女性の顔をハッキリ見ることもなく…
(彼女が僕の隣に座ってた人か…)
中年の女性のやってるお店が
居酒屋なのか何なのかわからないまま
手を振りながら去っていく彼女を前に
僕は渡された名刺を握りしめていた
結局
中年女性のやってるお店に顔を出すことは
なかったけど…
あのとき
中年女性のやってるお店に顔を出していれば
何かが変わっただろうか?
変わってないだろう
変わってないと思う
酸いも甘いも十分にわかった彼女に
それなりのアドバイスをされたところで…
のちのち
心を患うほど病んでしまった僕にとって
衝動で大学を辞めてしまった僕にとって
誰の声も届くはずは…
そんな
遠い昔の出来ごと
ふと想い出した…
何をしても泣き止まない
初孫くんのせいだろうか?
あの時の僕は
何をしても誰の声も届かなかったはず…
初孫くんと同じく…
もう40年も前のこと…
初孫くんの園送迎
4日目にしてもうウンザリ…
もうカンベンしてほしい
それがジジイのホンネ?
何しろ泣いてばかりで
どれだけアヤしても泣き止むことはなく…
生まれてから1年半
ずっとママであるチャラ息子のお嫁さんが
つきっきりで面倒を見てたから…
いくらババアやジジイがアヤしても
毎日顔を合わせる園の先生ですら…
おかげで朝夕の我が家のテレビ
初孫くんがいるときは
NHKの教育番組が流れっぱなしになったけど
Eテレってあたかも神様?
そう思える
ありがたい
マジに…
いつもは2人で行く初孫くんの園送迎
ババアとジジイで…
ジジイは初孫くんの抱っこ役
何しろ重すぎて…
だけど
今日はカミさんの仕事の日だから
ジジイひとりきり…
(大変の一言に尽きるぜ!)
園でのシキタリ?何にもわかってなくって
チャラ息子から渡されたバッグを片手に
もう一方の手は初孫くんを抱っこして…
娘のような年齢の先生に
オムツはここでヨダレ拭きはここに…
ああだこうだと指示されながら
ハイここですねと脂汗にまみれ…
情けないとは思いつつも
カンケーない瞬間にふと
この先生イカしてるなといつもの悪い癖?
ちょっと背が高くてジジイ好みの…
(若けりゃ誰でもいいのか?)
(イヤちょっとカワイイし…)
(エロジジイは治らないか?)
(治らないな…たぶん一生…)
そういえば思い出した!
日曜日マラソンを走ってるとき
ガンバッテ〜と
応援してくれてた若い女の子たちに…
おお〜っ
ありがと〜!
美人の三姉妹?
可愛いトリオじゃん!
お父さんも
脚だけカッコイイよ〜!
脚だけってなんだよ〜!
全部カッコイイんだよ〜笑
走りながら手を大きく振りつつ
そんなやりとり
あったっけ…
若くて可愛い子なら
すぐに声をかけてしまう…
生まれつきのチャラさ
エロさ
死んでも治らないさ…
さぁ…
そろそろ時間だし
初孫くんのお迎えに出かけるとするか
背の高い
ちょっとだけ可愛い先生にも会えるかな?