アレルギー性皮膚炎とつきあうには
アレルギー疾患治療の目標は根治ではなく、現在の症状を50%以下に抑え、維持すること。
IgE検査に因ってアレルギーとの診断は出来ないが、環境や食事を管理するための有益な情報を得られる。
症状別に、より効果的な食事の見直し、シャンプー、日常の手入れ、投薬による治療等で改善が可能。
治療
ステロイド
症状悪化時は3日間程連用する。但し、アトピー性皮膚炎に対して使用できる全身性ステロイドの量は1回につき0.5mg/kg年間60回、月にすると5回が限度と考えたほうが良い。
メチルプレドニゾロンにすると多飲多食を避けることができ、容量も80%にすることができる。
減感作療法
症状を部分或いは完全寛解に導くことができる唯一の治療法
減感作薬は個人輸入しなければならない
まれに副作用としてアナフィラキシーショック、発赤、嘔吐、下痢、痒みを起こす
環境抗原対策
シャンプー(保湿シャンプー)
直接シャンプー液は身体に付けずに、スポンジでよく泡立ててから全身に擦り込むように塗布する
泡を擦り込んだ後に、濡れたタオルでくるみ、5~10分間そのまま薬液が浸み込むまで待つ
人肌以下のぬるま湯で丁寧によくすすぐ。特に指間は1本づつ丁寧に行う。
吸水性のたかいスポンジタオルで水分を吸うように拭く。綿花にIgE陽性の場合はコットンタオルは避ける
ドライヤーの冷風で乾燥させる
ドライワイプ
吸塵性・多孔性の不織布(クイックルワイパーなど)で乾拭きする
皮毛に付着した環境抗原を皮膚に到達する前に除去することができる
毎日の習慣にすることで飼主とのコミュニケーションや病変の観察に役立つ
ハウスダストマイト陽性の場合は拭き掃除の後の掃除機の使用の徹底とクッション、枕などの排除とカバーの使用を行う
食事抗原対策
抗原除外食を最低1ヶ月は続ける
必須脂肪酸を与える
ブタクサに陽性の場合はキュウリ、メロン、スイカなどのウリ科の食物は避ける
ゴキブリ陽性の場合は海老や蟹などの甲殻類にも気をつける
ペニシリウム陽性の場合はペニシリン系抗生物質を避ける
二次感染対策
二次感染がコントロールされていれば痒みは現状の50%以下に抑えることができる
オーグメンチン10~20mg/kg BIDまたはセファレキシン20~40mg/kg BIDを3週間投与した後、週に2日間連続で通常量を投与することで再発予防と長期コントロールが耐性菌の心配をしなくて可能
マラセチアにはケトコナゾール5~10mg/kg SID~BID連用、またはイトラコナゾール5mg/kgSIDを2日連投、5日休薬を1クールとし3クール毎に判定する。ケトコナゾールとイベルメクチンやシクロスポリンを併用する場合は肝障害を効率に引き起こすので、塩酸テルビナフェン30mg/kgSIDを使用したほうが安全(但し高価)
苔癬化病変や糜爛潰瘍病変には抗炎症効果と皮膚再構築効果を期待して周辺に免疫抑制剤のタクロリムスを塗布する
免疫療法
シクロスポリンAの5mg/kg SID 3~4週間の連続投与は慢性化した病変に効果がある。副作用は軽度な消化器症状。
インターフェロンγは急性から亜急性に効果、5000~10000U/kgを週2~3回投与を4周間、次の4週間は週に1回投与。有効率70%。副作用は稀で重大な副作用は報告されていない。
その他の薬
ロイコトルエン抑制薬としてZileuton 0.5~5mg/kg TID 6週間投与で発赤の減少。
ペントキシフィリンは組織への炎症細胞の移行を抑制させる。接触性アレルギー性皮膚炎、アトピー、血管炎、免疫介在性の症例に対し25mg/kg BID
フルオキシチニンはセロトニン再取り込み阻害薬で犬の指端氏舐性皮膚炎に有効、1mg/kg
ミソプロストールは皮膚における遅延型反応を抑制させる。慢性アトピー、膿皮症、蕁麻疹に使う。5μg/kg BID-TID。下痢することがある。
ロキシスロマイシン(マクロライド系抗生物質)3~5mg/kg BID 3週間連続投与 慢性再発性ブドウ球菌性膿皮症に対して表皮免疫調節作用がある。
抗ヒスタミンは25~50%の犬にしか効果ない
大正動物医療センター 06-6551-5106