はじめに胃のポリープ、リンパ球プラズマ細胞性腸炎について簡単にお話します。
胃ポリープの定義は「胃粘膜上皮が局在性増殖により胃内腔に隆起した病変で悪性でないもの」となります。一般に無症状であり、幽門を閉塞した場合に嘔吐などの症状が見られることがあります。胃の排出障害を起こさない限り、治療の必要がないと言われていて、外科的な切除により完治が期待できます。また、ヒトにおいては約半数が癌へと移行すると報告されていますが、小動物においては癌化するという証拠は得られていません。
次にリンパ球プラズマ細胞性腸炎(LPE)です。IBDにおいて最も多く認められるパターンであり、その原因として、腸粘膜バリア機能の低下、食事抗原に対する反応などが考えられていますが、現在のところ、その病理発生は十分に解明されていません。軽度では無症状のものから、重度では慢性の嘔吐、下痢、体重減少などが認められます。治療は主に食事療法、薬物療法が行われます。
それでは症例に入ります。
未去勢、9歳のチワワで、急性の頻回嘔吐(二日間で5-6回)を主訴に来院されました。数ヶ月に一度程度の嘔吐はあったそうですが、その他に既往歴、投薬歴などはなく、稟告によると便の性状に異常はないとのことでした。
初診時の検査所見です。身体一般検査においては明らかな異常は認められませんでした。
白血球数の上昇。カリウム、クロールの低下。ALPの上昇が認められました。
胃内に液体の貯留を疑わせる、透過性低下領域が認められます。
図は幽門前庭部の横断面を示しています。複数の塊状病変が認められます。
次に内視鏡検査を実施したところ、幽門部に複数のmassを認めました。