大槻雅章税理士事務所

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№190 所得税:103万円の壁

2024-12-01 | ブログ
2024.12.01

令和6年10月15日公示、27日投開票の第50回衆議院選挙において、国民民主党は103万円の壁を見直して所得税の課税所得を引き下げるべきという主張をして話題となっています。そこで今回は103万円の壁に関して考察し、私見を述べたいと思います。

1.103万円の壁とは?

103万円の壁とは、給与所得者の年収が103万円を超えると所得税が課税されることを指しています。
さらに正確にいうと、
① 給与所得者には必要経費として最低55万円の給与所得控除が認められる。
② 給与所得控除後の給与所得が基礎控除48万円を超えると所得税が課税される。
③ その結果、給与所得者の給与所得控除額55万円と基礎控除48万円の合計103万円を超える給与所得者には所得税が課税され、同時に、他の納税者の配偶者控除や扶養控除の対象から外れることになります。
これを給与所得者の103万円の壁といいます。

2.給与所得控除額とは?

給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出しますが、給与等の収入金額が162万5千円までは給与所得控除額が55万円となっています。給与所得控除額は給与等の収入金額に応じで変動し、850万円超の給与収入で195万円の給与所得控除額が上限となります。

つまり、事業所得者や不動産所得者等の必要経費と違い、給与所得者は収入金額に応じて一律の給与所得控除額が必要経費とみなされているわけです。

給与所得控除額とは別に、給与所得者のその年中の特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超える場合に、確定申告によりその超える部分の金額をさらに差し引くことができる特定支出控除が特例として認められておりますが、ここで詳細は述べません。

3.基礎控除とは?

基礎控除とは、所得税額の計算をするときに合計所得金額から差し引くことができる人的控除の一つです。
合計所得金額によって基礎控除の額は変動し、納税者本人の合計所得金額が2,400万円以下の場合は48万円、2,400万円超2,450万円以下の場合は32万円、2,450万円超2,500万円以下の場合は16万円、2,500万円超の場合は0円となっています。

つまり、基礎控除は所得の区分に関わらず納税者に一律に控除が認められているわけです。

4.まとめ

給与所得者は、収入金額に応じた一律の給与所得控除額を必要経費とみなされています。これに対して、給与所得者以外の事業所得者や不動産所得者等は、確定申告で総収入金額から必要経費を控除して所得金額を計算しているので、納税者各人の実態に応じた必要経費を計上できます。
さらに青色申告者に対しては、所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除するという青色申告特別控除があります。
事業所得者や不動産所得者等は、給与所得者とは違い所得計算において十分優遇されているわけです。

103万円(給与所得控除55万円+基礎控除48万円)の壁とは、少額の給与収入を得ている専業主婦や学生アルバイト等が問題の対象となっているので、全ての納税者に認められている基礎控除の増額ではなく、現行55万円の給与所得控除額を増額すれば問題は解決すると考えます。

具体的には、「給与等の収入金額が162万5千円までは給与所得控除額が55万円」の改正だけで即解決できます。

(完)

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