大槻雅章税理士事務所

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№21 グループ法人税制

2010-08-13 | ブログ

2010.07.11 法人税/グループ法人税制

企業経営の多様化に伴い、持株会社の設立により関連会社を100%子会社化してグループ会社内の経営を強化する動きが盛んになっています。グループ経営が増加している事を踏まえ、今回は平成22年度に改正があったグループ法人税制について解説したいと思います。

グループ法人税制は、100%完全支配関係のある法人が対象とされます。グループ法人税制は、グループ法人単体課税制度と連結納税制度に分けることができます。 

(1)共通の取扱い

①完全支配関係がある法人間の資産の譲渡等(法61の13①、令122の14①)。

完全支配関係がある法人間で、譲渡直前の帳簿価額が1千万円以上の譲渡損益調整資産(固定資産、棚卸資産たる土地等、売買目的有価証券以外の有価証券、金銭債権及び繰延資産)を譲渡した場合には、その譲渡損益はグループ外への移転時まで繰り延べられます。この規定は平成22年10月 1日以後に行う譲渡損益調整資産の譲渡について適用されます。

例えば、100%完全子会社A社の所有する簿価100時価200の土地を、グループ内の別の100%完全子会社B社に譲渡したときは、
A社の会計処理は、(借方)現金等200/(貸方)土地100及び譲渡益100となりますが、法人税の申告調整で調整勘定繰入損100/調整勘定100と減算/留保します。
B社の会計処理は、(借方)土地200/(貸方)現金等200となります(税務調整は無し)。

②完全支配関係がある法人間の配当は、負債の利子を控除せず、全額が益金不算入となります(法23①④)。この規定は平成22年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

③完全支配関係がある法人間の寄付金は、損金不算入となります(法37②)。また、完全支配関係がある法人間の受贈益は益金不算入となります(法25の2①)。この規定は平成22年10月 1日以後の寄付金又は受贈益について適用されます。


④完全支配関係がある法人間の自己株式の取得等による譲渡損益は、原則として生じないこととされます(法61の2⑯)。この場合の譲渡損益は資本等の額に加算または減算することとされました(令8①十九)。この規定は平成22年10月 1日以後に生ずる譲渡損益について適用されます。


⑤資本金の額又は出資の額が5億円以上の法人による完全支配関係がある子会社については、次のA~Eの中小企業向けの特例措置が適用されないこととなりました(法66⑥、67、措法57の10①、措法61の4①、措法66の13、措法68の98)。
A.年800万円以下の金額に対する軽減税率の適用規定
B.特定同族会社の特別税率の不適用規定
C.貸倒引当金の法定繰入率の適用規定
D.交際費等の損金不算入制度における定額控除の適用規定
E.欠損金の繰戻し還付の適用規定
この規定は平成22年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

(2)相違点

①グループ法人単体課税制度は強制適用されます。連結納税制度は任意(選択)適用です。

②グループ法人単体課税制度では、それぞれの法人が申告納付します。連結納税制度では、連結グループを1つの納税主体として連結親法人が、所得通算後の連結所得に対する法人税を申告納付します(法81の22①、81の27)。

(完)