2015.03.03 所得税・住民税:出国した給与所得者の確定申告と住民税の課税関係
今回は、以下のようなお問い合わせがありましたので解説したいと思います。
日本国内A市に住所があったB子さんは、勤務先C社を平成26年9月に退職しました。その後出国したB子さんは平成27年1月1日現在米国に居住し、米国で勤務している夫の扶養対象配偶者になっています。B子さんは年の中途に退職したため、C社の年末調整を受けていません。この場合、B子さんの平成26年分の所得税確定申告書の提出先および平成26年分の住民税の課税関係はどうなるのでしょうか?
1.所得税確定申告書の提出先
所得税の確定申告書は、提出時の納税地を所轄する税務署長に提出することになっています(国税通則法21条)。納税地とは、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になり(所得税法15条)、国内に住所がなくて居所がある人は、その居所地が納税地になります(同16条)。
ところが、確定申告書提出時のB子さんの住所は米国にあり、日本国内に住所および居所を有していません。この場合には、直前の納税地であったA市を管轄する税務署長に平成26年分の所得税確定申告書を提出することになります(所令54条①一。)
2.住民税の課税関係
個人の住民税(道府県民税および市町村民税)の納税義務者は、道府県内に住所を有する個人で、その道府県の区域内の市町村の住民基本台帳に記録されている者とされています(地方税法24条2項)。また、住民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とされています(同39条)。
すなわち、個人の住民税はその年1月1日に住民基本台帳に記録された住所地の市町村が賦課徴収するところ、B子さんは出国により賦課期日である平成27年1月1日現在米国に住所があり、地方税法の施行地である日本国内に住所を有していません。したがって、B子さんは、平成26年分の給与所得に係る住民税の納税義務を有しないことになります。
つまり、通常、平成26年分の所得に係る住民税は平成27年6月以降に普通徴収または特別徴収の方法で課税されますが、平成27年1月1日現在「法施行地に住所を有しない」B子さんは、平成26年中に給与所得があったにもかかわらず課税されないという結論になります。
にわかに信じがたい法規整ですが、現行地方税法ではそうなるのです。
但し、「法施行地に住所を有しない」かどうかは実質的に判断されるので、B子さんの出国の期間、目的、出国中の居住の状況等から単に旅行にすぎないと認められる場合には、出国前の住所があるものとして納税義務が生じます。(過去の記事「№55 住所と生活の本拠」参照)
なお、個人の住民税において「法施行地に住所を有しない」かどうかの判断は、次の所得税法施行令15条の取り扱いと一致させています(昭和52年自治府42)。
<所得税施行令15条抜粋>
国外に居住することとなった個人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有しない者と推定する。
一 その者が国外において継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
二 その者が外国の国籍を有し又は外国の法令によりその外国に永住する許可を受けており、 かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有しないことその他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が再び国内に帰り、主として国内に居住するものと推測するに足りる事実がないこと。
2 前項の規定により国内に住所を有しない者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国外に居住する場合には、これらの者も国内に住所を有しない者と推定する。
(完)
今回は、以下のようなお問い合わせがありましたので解説したいと思います。
日本国内A市に住所があったB子さんは、勤務先C社を平成26年9月に退職しました。その後出国したB子さんは平成27年1月1日現在米国に居住し、米国で勤務している夫の扶養対象配偶者になっています。B子さんは年の中途に退職したため、C社の年末調整を受けていません。この場合、B子さんの平成26年分の所得税確定申告書の提出先および平成26年分の住民税の課税関係はどうなるのでしょうか?
1.所得税確定申告書の提出先
所得税の確定申告書は、提出時の納税地を所轄する税務署長に提出することになっています(国税通則法21条)。納税地とは、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になり(所得税法15条)、国内に住所がなくて居所がある人は、その居所地が納税地になります(同16条)。
ところが、確定申告書提出時のB子さんの住所は米国にあり、日本国内に住所および居所を有していません。この場合には、直前の納税地であったA市を管轄する税務署長に平成26年分の所得税確定申告書を提出することになります(所令54条①一。)
2.住民税の課税関係
個人の住民税(道府県民税および市町村民税)の納税義務者は、道府県内に住所を有する個人で、その道府県の区域内の市町村の住民基本台帳に記録されている者とされています(地方税法24条2項)。また、住民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とされています(同39条)。
すなわち、個人の住民税はその年1月1日に住民基本台帳に記録された住所地の市町村が賦課徴収するところ、B子さんは出国により賦課期日である平成27年1月1日現在米国に住所があり、地方税法の施行地である日本国内に住所を有していません。したがって、B子さんは、平成26年分の給与所得に係る住民税の納税義務を有しないことになります。
つまり、通常、平成26年分の所得に係る住民税は平成27年6月以降に普通徴収または特別徴収の方法で課税されますが、平成27年1月1日現在「法施行地に住所を有しない」B子さんは、平成26年中に給与所得があったにもかかわらず課税されないという結論になります。
にわかに信じがたい法規整ですが、現行地方税法ではそうなるのです。
但し、「法施行地に住所を有しない」かどうかは実質的に判断されるので、B子さんの出国の期間、目的、出国中の居住の状況等から単に旅行にすぎないと認められる場合には、出国前の住所があるものとして納税義務が生じます。(過去の記事「№55 住所と生活の本拠」参照)
なお、個人の住民税において「法施行地に住所を有しない」かどうかの判断は、次の所得税法施行令15条の取り扱いと一致させています(昭和52年自治府42)。
<所得税施行令15条抜粋>
国外に居住することとなった個人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有しない者と推定する。
一 その者が国外において継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。
二 その者が外国の国籍を有し又は外国の法令によりその外国に永住する許可を受けており、 かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有しないことその他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が再び国内に帰り、主として国内に居住するものと推測するに足りる事実がないこと。
2 前項の規定により国内に住所を有しない者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国外に居住する場合には、これらの者も国内に住所を有しない者と推定する。
(完)