大槻雅章税理士事務所

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№57 贈与税:教育資金贈与の非課税措置

2013-09-04 | ブログ
2013.07.25 贈与税:教育資金贈与の非課税措置

父母や祖父母(贈与者)が子や孫の教育資金に充てるため、金融機関等と契約して子や孫名義の「教育資金口座」を開設して教育資金を一括拠出し、その口座から教育資金の支払いを行った場合には、一定の手続きをすれば1,500万円までは贈与税が非課税となります。ただし、当初税務署に申告した教育資金を使い切らなかった場合には、その残額は贈与税の課税対象になりますから注意が必要です。また、その都度教育資金を贈与しても非課税となりますから(相法21の3①二)、2つの非課税規定の併用も可能です。そこで、今回は、教育資金贈与の非課税措置について説明したいと思います。

(1)非課税措置の概要
 平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に、個人が教育資金に充てるため、①信託銀行との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合、②教育資金管理契約に基づき銀行等の営業所等において預金若しくは貯金として預入をした場合、③教育資金管理契約に基づき証券会社の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託受益権、金銭又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入されません(措法70の2の2①)。

ただし、下記(4)のイ又はハの事由により教育資金管理契約が終了した場合において、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額(注1)から教育資金支出(注2)を控除した残額があるときは、その残額については、(4)のイ又ハに定める日の属する年の贈与税の課税価格に算入されます(措法70の2の2⑪)。(4)のロの事由により教育資金管理契約が終了した場合には、その残額は贈与税の課税価格に算入されません(措法70の2の2⑫)。

(注1)「非課税拠出額」とは、下記(3)の教育資金非課税申告書又は追加教育資金非課税申告書に、この制度の適用を受けるものとして記載された金額を合計した金額(1,500万円限度)をいいます。

(注2)「教育資金支出額」とは、金融機関等において、教育資金として支払われた事実が領収書等により確認され、かつ、記録された金額をいいます。

(2)教育資金の範囲
 教育資金とは、
①学校等に直接支払われる入学金、授業料その他の金銭で一定のもの(注3)、
②学校等以外の者に、教育に関する役務の提供の対価として直接支払われる金銭その他の教育のために直接支払われる金銭で一定のもの(注4)
をいいます。

※学校等とは、学校教育法に規定する学校、専修学校、各種学校をいいます。つまり、小・中・高・大学、予備校、一定の料理学校や自動車教習所なども含まれるわけです。

※学校等以外の者に支払う対価とは、塾・家庭教師・そろばんなどの学習、水泳や野球などのスポーツ、ピアノ・絵画・バレエなどの文芸、習字・お茶・お花などの教養の対価です。ただし、学校等以外の者に支払われる教育資金については500万円を限度とします。

(注3)の一定のものとは、次に掲げる金銭をいいます。
イ.入学金、授業料、入園料及び保育料並びに施設設備費
ロ.入学又は入園のための試験に係る検定料
ハ.在学証明、成績証明その他学生等の記録に係る手数料及びこれに類する手数料
ニ.学用品の購入費、修学旅行費又は学校給食費その他学校等における教育に伴って必要な費用に充てるための金銭

(注4)の一定のものとは、次に掲げる金銭であって、教育のために支払われるものとして社会通念上相当と認められるものをいいます。
イ.教育に関する役務の提供の対価(学習塾・そろばん等)
ロ.施設の使用料(水泳教室)
ハ.スポーツ(水泳・野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ・絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価として支払われる金銭

(3)特例の適用を受けるための手続き
 この特例の適用を受けるためには、その適用を受けようとする受贈者が、「教育資金非課税申告書」をその教育資金非課税申告書に記載した取扱金融機関の営業所等を経由して、信託がされる日、預金若しくは貯金の預入をする日又は有価証券を購入する日(以下「預入等期限」という。)までに、その受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。預入等期限までに教育資金非課税申告書の提出がない場合には、この特例の適用を受けることはできません(措法70の2の2③)。ただし、金融機関等が教育資金非課税申告書を受理した日に納税地の所轄税務署に提出されたものとみなされます(措法70の2の2⑤)。

また、この特例の適用を受ける受贈者は、教育資金の支払に充てた金銭に係る領収書その他の書類又は記録でその支払いの事実を証するものを、取扱金融機関の営業所等に提出しなければなりません(措法70の2の2⑦)。

(4)終了事由
 教育資金管理契約は、次に掲げる場合に応じ、次に定める日に終了します(措法70の2の2⑩)。
イ.受贈者が30歳に達した場合・・・当該受贈者が30歳に達した日
ロ.受贈者が死亡した場合・・・当該受贈者が死亡した日
ハ.教育資金管理契約に係る信託財産の価額が零となった場合、教育資金管理契約に係る預金若しくは貯金の額が零となった場合又は教育資金管理契約に基づき保管されている有価証券の価額が零となった場合において受贈者と取扱金融機関との間でこれらの教育資金管理契約を終了させる合意があった場合・・・当該教育資金管理契約が当該合意に基づき終了する日

※有価証券の価額が零となった場合には、例えば証券会社で株式運用していた1,500万円の一括拠出教育資金が目減りして1,000万円になった場合も含まれます。この場合には、損失額の500万円が贈与税の課税価格に算入されてしまいます。

(5)終了時における納税者の手続き
 上記(4)のイ又はハにより教育資金管理契約が終了した場合において、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額(注3)から教育資金支出額(注4)を控除した残額があるときは、その残額については、その教育資金管理契約の(4)のイ又はハに定める日の属する年の贈与税の課税価格に算入されます(措法70の2の2⑪)。したがって、その年の贈与税の課税価格の合計額が基礎控除110万円を超える場合には、その年の翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

(完)