2019.06.29
前回は取引相場のない株式(非上場株式)を低額譲渡(適正時価>譲渡価額)した場合の課税関係をまとめました。
今回は高額譲渡(適正時価<譲渡価額)の場合の課税関係を解説します。
以下(1)~(4)の設例では、非上場株式の取得価額100、適正時価(№121で解説した財産評価基本通達による評価額)200、譲渡価額500とします。
(1)個人から個人への高額譲渡
■個人が個人に譲渡価額500(適正時価200より高い価額)で高額譲渡した場合
①個人売主の課税関係
譲渡による利益400を「譲渡対価として適正な時価までの部分100」と「適正時価を超える部分300」に分けて課税されます(東京高裁平成26年5月19日判決、原審は東京地裁平成25年9月27日判決)。
A.適正時価までの部分=「譲渡所得」課税
(適正時価200-取得価額100)×20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)
B.適正時価を超える部分=「みなし贈与」課税
(譲渡価額500-適正時価200)×贈与税率
②個人買主の課税関係
取得時における課税関係はありません。
ただし、購入価額500のうち適正時価200を超える300については、個人売主に「みなし贈与」したものと取り扱われるので、個人買主の取得価額は適正時価200となります。
※個人売主の高額譲渡は「100は譲渡所得税の対象」「300は贈与税の対象」に分けて課税される。
※個人買主に対する課税はない。
ただし、取得価額は500ではなく適正時価200とみなされる。
(2)個人から法人への高額譲渡
■個人が法人に譲渡価額500(適正時価200より高い価額)で高額譲渡した場合
①個人売主の課税
まず「適正時価」までが「譲渡の対価としての性格をもつ部分」として次のAのように譲渡所得となり、「譲渡益」に対して課税されます。
A.「譲渡益」課税
(適正時価200-取得価額100)×20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)
次に「適正時価」を超える額は、法人買主から経済的利益を受けたことになり、譲渡所得とは別の所得として課税されます。
経済的利益がどの種類の所得に該当するかは、個人売主と法人買主との関係により次のBまたはCに区別されます。
B.法人買主と個人売主の間に雇用関係等があるとき
(譲渡価額500-適正時価200)=300が「賞与」として課税されます。
従業員の場合は、「給与所得300」に対して所得税が課税されます。
役員の場合は、「給与所得300」に対して所得税が課税され、同時に法人に対しては「役員賞与300」×法人税率が課税されます。
C.法人買主と個人売主の間に雇用関係がないとき
(譲渡価額500-適正時価200)=300が個人売主に「一時所得」として課税されます。
②法人買主の課税
法人買主が「適正時価」を超えて支払った額(譲渡価額500-適正時価200)=300は、個人売主に経済的利益を供与したことになります。
経済的利益の法人税法上の性格は、個人売主と法人買主の関係によって区別されます。
個人売主が法人買主の役員の場合は「役員給与」、従業員の場合は「従業員給与」、役員でも従業員でもない場合には「寄附金」として課税されます。
※この経済的利益の供与は定期同額給与に当たらないため、「役員給与」は法人所得の計算上損金に算入されません。つまり、(役員賞与300×法人税率)が課税されます。
※また、損金算入限度額を超える「寄附金」は法人所得の計算上損金に算入されません。
(3)法人から個人への高額譲渡
■法人が個人に譲渡価額500(適正時価200より高い価額)で高額譲渡した場合
①法人売主の課税
譲渡益に対して法人税が課税されます。
(譲渡価額500-取得価額100)×法人税率
※法人の場合は、あらゆる益金から損金を差し引いた所得に対して法人税が課税されます。
②個人買主の課税
個人買主の株式取得に関して所得税法の課税はありません。
※ただし、譲渡価額500-適正時価200=300については、法人売主に対して贈与をしているので、その贈与により法人売主の株価が上昇した部分について、他の株主が贈与課税される場合があります。
(4)法人から法人への高額譲渡
■法人が法人に譲渡価額500(適正時価200より高い価額)で高額譲渡した場合
①法人売主の課税
売却損益に対して法人税が課税されます。
(譲渡価額500-取得価額100)×法人税率
※法人の場合は、あらゆる益金から損金を差し引いた所得に対して法人税が課税されます。
②法人買主の「寄附金」課税
(譲渡価額500-適正時価200)=300が「寄附金」課税されます。
※損金算入限度額を超える「寄附金」は法人所得の計算上損金に算入されません。
(完)
前回は取引相場のない株式(非上場株式)を低額譲渡(適正時価>譲渡価額)した場合の課税関係をまとめました。
今回は高額譲渡(適正時価<譲渡価額)の場合の課税関係を解説します。
以下(1)~(4)の設例では、非上場株式の取得価額100、適正時価(№121で解説した財産評価基本通達による評価額)200、譲渡価額500とします。
(1)個人から個人への高額譲渡
■個人が個人に譲渡価額500(適正時価200より高い価額)で高額譲渡した場合
①個人売主の課税関係
譲渡による利益400を「譲渡対価として適正な時価までの部分100」と「適正時価を超える部分300」に分けて課税されます(東京高裁平成26年5月19日判決、原審は東京地裁平成25年9月27日判決)。
A.適正時価までの部分=「譲渡所得」課税
(適正時価200-取得価額100)×20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)
B.適正時価を超える部分=「みなし贈与」課税
(譲渡価額500-適正時価200)×贈与税率
②個人買主の課税関係
取得時における課税関係はありません。
ただし、購入価額500のうち適正時価200を超える300については、個人売主に「みなし贈与」したものと取り扱われるので、個人買主の取得価額は適正時価200となります。
※個人売主の高額譲渡は「100は譲渡所得税の対象」「300は贈与税の対象」に分けて課税される。
※個人買主に対する課税はない。
ただし、取得価額は500ではなく適正時価200とみなされる。
(2)個人から法人への高額譲渡
■個人が法人に譲渡価額500(適正時価200より高い価額)で高額譲渡した場合
①個人売主の課税
まず「適正時価」までが「譲渡の対価としての性格をもつ部分」として次のAのように譲渡所得となり、「譲渡益」に対して課税されます。
A.「譲渡益」課税
(適正時価200-取得価額100)×20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)
次に「適正時価」を超える額は、法人買主から経済的利益を受けたことになり、譲渡所得とは別の所得として課税されます。
経済的利益がどの種類の所得に該当するかは、個人売主と法人買主との関係により次のBまたはCに区別されます。
B.法人買主と個人売主の間に雇用関係等があるとき
(譲渡価額500-適正時価200)=300が「賞与」として課税されます。
従業員の場合は、「給与所得300」に対して所得税が課税されます。
役員の場合は、「給与所得300」に対して所得税が課税され、同時に法人に対しては「役員賞与300」×法人税率が課税されます。
C.法人買主と個人売主の間に雇用関係がないとき
(譲渡価額500-適正時価200)=300が個人売主に「一時所得」として課税されます。
②法人買主の課税
法人買主が「適正時価」を超えて支払った額(譲渡価額500-適正時価200)=300は、個人売主に経済的利益を供与したことになります。
経済的利益の法人税法上の性格は、個人売主と法人買主の関係によって区別されます。
個人売主が法人買主の役員の場合は「役員給与」、従業員の場合は「従業員給与」、役員でも従業員でもない場合には「寄附金」として課税されます。
※この経済的利益の供与は定期同額給与に当たらないため、「役員給与」は法人所得の計算上損金に算入されません。つまり、(役員賞与300×法人税率)が課税されます。
※また、損金算入限度額を超える「寄附金」は法人所得の計算上損金に算入されません。
(3)法人から個人への高額譲渡
■法人が個人に譲渡価額500(適正時価200より高い価額)で高額譲渡した場合
①法人売主の課税
譲渡益に対して法人税が課税されます。
(譲渡価額500-取得価額100)×法人税率
※法人の場合は、あらゆる益金から損金を差し引いた所得に対して法人税が課税されます。
②個人買主の課税
個人買主の株式取得に関して所得税法の課税はありません。
※ただし、譲渡価額500-適正時価200=300については、法人売主に対して贈与をしているので、その贈与により法人売主の株価が上昇した部分について、他の株主が贈与課税される場合があります。
(4)法人から法人への高額譲渡
■法人が法人に譲渡価額500(適正時価200より高い価額)で高額譲渡した場合
①法人売主の課税
売却損益に対して法人税が課税されます。
(譲渡価額500-取得価額100)×法人税率
※法人の場合は、あらゆる益金から損金を差し引いた所得に対して法人税が課税されます。
②法人買主の「寄附金」課税
(譲渡価額500-適正時価200)=300が「寄附金」課税されます。
※損金算入限度額を超える「寄附金」は法人所得の計算上損金に算入されません。
(完)