大槻雅章税理士事務所

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№127 判例評釈:マンション管理組合に対する法人税の課税

2019-10-05 | ブログ
2019.10.05 

マンションの管理組合が、法人税法上の人格のない社団に該当するか否か、また、管理組合が行うマンション敷地の賃貸が収益事業に該当するか否かの判断が争われた事件で、東京地裁は、管理組合が法人税法上の人格のない社団に該当し、不動産貸付業という収益事業を行っていると認めるのが相当であることから、賃貸収入については法人税を納付する義務があると判断しました(2018.03.13東京地方裁判所判決)。

今回はこの判決をまとめたいと思います。

1.事実の概要


本件は、マンションの区分所有者全員によって構成される団体つまり管理組合が、マンションの共用部分及び敷地の一部(屋上)をアンテナ一式の設置スペースとして携帯電話会社に賃貸して得た収入の課税上の取扱いが問題となった税務訴訟である。

2.争点


争点は、
①本件管理組合が法人税法上の人格のない社団等に当たるか否か。
②マンション共用部分の一部の賃貸が本件管理組合の行う収益事業に当たり、本件管理組合の収益事業から生じた所得に法人税が課税されるか否か。

上記①②に関し、本件管理組合は、法人税法上の人格のない社団等には当たらないと主張したほか、共用部分の賃料は各区分所有者に帰属するため、この各区分所有者に所得税等が課されるべきであるから、本件管理組合には法人税を課すべきではないという主張をした。

3.判旨


まず、東京地裁は、本件管理組合を、①団体としての組織を備えて、②組合員による多数決の原則が行われており、③構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続するものと認められ、④さらに代表の選任方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していると指摘した上で、団体が権利能力のない社団であり、法人税法上の人格のない社団に当たるものというべきであると認定した。

次に、本件賃貸事業については、権利能力のない社団である本件管理組合が団体として行う活動としての実質を有するものといえるから、法人税法上、不動産貸付業という収益事業を行っていると認めるのが相当と指摘した。

そのうえで、本件管理組合が主体となって行われた収益事業から生じた収益である賃貸収入はそれが本件管理組合の構成員から分離されて、本件管理組合の団体としての活動目的に沿うよう管理・保管されていることも勘案すれば、本件管理組合の所得を構成するべきであると指摘したうえで、本件管理組合が本件賃貸収入による所得について法人税の納付義務を負うことになると判断した。

(完)