2013.04.18 非上場株式の評価:株式保有特定会社
取引相場のない株式(いわゆる非上場株式)の評価については、評価会社の事業規模に応じて大会社、中会社、小会社に区分され(財産評価基本通達178)、大会社に該当する場合には原則として「類似業種比準価額方式」で評価することとされています(同179(1))。
これは、非上場の大会社は事業規模が大きいため、業種が類似する上場会社の株価を基にして評価することに合理性があると認められるからです。
ただし、非上場大会社の有する資産の合計額のうちに占める株式及び出資の合計額の割合が25%以上(中会社及び小会社については50%以上)の場合には「株式保有特定会社」とされ、その評価は「類似業種比準価額方式」ではなく、「純資産価額方式」または「S1+S2方式」が適用されます(同189(2)、189-3)。
一般的に、「類似業種比準価額方式」で評価する方が1株当たりの株価が低く評価され、納税者にとって有利になります。
したがって、株式保有割合が25%以上の非上場の大会社を一律に「株式保有特定会社」に区分し、「類似業種比準価額方式」を適用しないという通達は合理性に欠けるという訴訟が提起されていました。
これに関し、平成25年2月28日、東京高裁は以下のように、納税者の主張を認容する判決を下しました。
「株式保有割合が25%以上である大会社を一律に「株式保有特定会社」とすることには合理性がない。…「株式保有特定会社」に該当するか否かは、その企業規模等を総合考慮して判断するのが相当であり、実際に評価会社の従業員数・総資産価額・取引金額などをみると、その実態は上場企業に匹敵する。また、租税回避行為の弊害を危惧する事情なども伺われない。…結果として評価会社の評価にあたっては「類似業種比準方式」で評価すべきである。」
なお、本件は課税当局が上告しなかったので、東京高裁の判決が確定しています。
この判決を受けて、国税庁は平成25年4月2日、現行の財産評価基本通達189(2)を改正し、大会社の「株式保有特定会社」の株式保有割合を25%以上から50%以上に引き上げる改正案を公表し、平成25年5月1日までパブリックコメントを受け付けています。
現行の財産評価基本通達189(2)か改正されれば、過去に申告した税額が過大となる場合は更正の請求が可能となります。ただし、更正の請求には要件があり、手続きが必要となります。
※国税庁ホームページより
この高裁判決を受け、現下の上場会社の株式等の保有状況等に基づき、評価通達189(2)における大会社の株式保有割合による株式保有特定会社の判定基準を「25%以上」から50%以上」に改正されました。
上記の通達改正は判決に伴うものであるため、過去に遡って改正後の通達を適用することにより、過去の相続税等の申告の内容に異動が生じ相続税等が納めすぎになる場合には、国税通則法の規定に基づき、この通達改正を知った日の翌日から2月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることにより、当該納めすぎとなっている相続税等が還付となります。
なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、減額できないこととされていますのでご注意ください。
(完)