今日の教室は何時もとは違う緊張感が漂う
西尾市から通うすずきさんが織っている麻の織物の完成間近なのだ
「もう少しですね」
その言葉が全てを物語って
それは出産間近に迫る緊張感と似ている
最後の捩りを終えたからあと20cm位かな
流行る気持ちを抑えるように筬を叩く音だけが響く
竹島クラフトセンターで手織を習い始めて二年が過ぎた
平織組織の装飾織物の第一段階を終えようとしている
「ハサミを入れます!」
経糸にハサミがはいっていく
ピンと張られた糸に刃が入るとプツプツと
弾けるように麻糸の緊張が跳ねる
作者の鼓動が聴こえるような一瞬だ
「出来ました!」
「おめでとう御座います」
拍手に迎えられたゴールインにも似ていて
作者の笑顔が弾ける
教室仲間のスマホにも撮られて
「良いわね」
「私達も織りたいわ」
全体のデザインを確認出来るのは織り上げなければ見ることは出来ない
いくつかの技法を大中小のもじりを織り分けて織る姿が
芸術を追求する作家のように見えた。
「良いね!」
「よく頑張った!」
水面に起こる幾重の波と
一列の雁の群れが織り込まれて物語を織っているのだ。