代 理
複雑化現代社会においては、個人が世の中で生活するうえで必要とされる総てに見識を持ち、また、他人と関りを持つことを成功裡のうちに総て自身で処理出切るなどと言うことはあり得無いだろう。さらに、譬え本人にそれだけの良識があったとしても、時間的に本人が行動することは無理な場合もあります。そこで、契約の締結などは他人の持つ特別な知識や能力に頼って行うことが頻繁に行われているのです。代理人が代理行為の効果を本人が受領することを明らかにして契約の締結行為等をするのです(民法第99条1項)。また、契約の相手方などの第三者が為した行為等の効果を受領するのも本人となることは言うまでもありません(民法第99条2項)。此処で民法の規定する代理は、飽く迄、法律行為の代理に限られます。
代理と委任
代理は本人が他人に自身に関る法律行為を任すことです。民法で『委任による代理』と使っていますがこれは誤りです。代理は必ずしも委任によって生じるものではありません。例えば、組合においては組合員人の一人が他の組合員を代理すると言うことになっています。これは法律の規定によって生じる代理権です。
代理と授権
代理人が相手と契約を結ぶ場合には、本人の名を以って為されるのだが、授権の場合は授権者の名において契約は締結され、その効果を本人に帰属させるのです。しかも、本人が授権を与えてい無い場合にも、後で、本人が追認すると、有効な処分行為になるとして授権行為の追認を認めた判例もあります(大判昭和10年9月10日民集1717頁)。
代理と財産管理
他人を代理人とするには、原則として本人と代理人と成るべき者との間には代理権の授与が為されていることが必要となります。しかし、民法の財産管理に関する幾つかの規定(民法第28条、民法第918条3項、民法第953条等)の中には、財産の管理人には本人からの代理権の授与行為は無いのです。
間接代理
他人の計算で、しかも、自己の名においてする法律行為には問屋(商法第551条)や仲買人などがあります。問屋は本人から頼まれて他人との取引を行うことにより本人から報酬を貰って業を為すものであり、取引に関する直接の責任は問屋が負うのだが、本人との関係では取引に関る最終的な決済は本人の負担を以ってなされる。予め取引に関して為された本人との約束が果たせなかった場合には問屋は本人に対して責任を負うのである。
使者
使者の類別としては①本人が書面等で表した完成された意思表示の伝達機関としての使者、②本人が決定した意思表示を本人に代わり口頭で伝える表示機関としての使者等があるとされるが、代理人との違いは、意思の決定が代理人にあっては、代理人自身にあり、代理人には自由裁量権が与えられているのだが、使者には全く裁量権が無いと言うことである。
代表
法人の機関は法人を代表し、その行為の結果は法人自身が負うのです。代理によく似た概念ではあるが、両者の実質的差異は、代理人の為した不法行為責任は本人には及ば無いが、代表の為した不法行為の責任は法人にも及ぶと言うことだ。
代理占有
建物の賃貸借関係において、実際の占有者は賃借人であるが、賃貸にも賃借人を介して間接占有があるとされる。しかし、占有は意思表示に関しない法的概念であり、此場合、代理占有という言葉は適切では無いだろう。
代理権の範囲
①婚姻、認知等身分行為などは本人の意思表示が絶対に必要なものなので代理には馴染ま無い。但し、養子縁組だけは本人が幼少の場合が多いので代理養子など特別な場合がある。②代理の制度は私的自治を根底に置いたものであり、代理人の為した意思表示が本人の私的自治権を拡大・補完するものにすることに力点を置いている代理制度には、不法行為や事実行為などとは無縁のものと考えられます。
代理の形
①任意代理・法定代理。②正当な代理権を持たない代理人が行う代理行為をする場合を無権代理という。正常な代理を有権代理と言う。
任意代理
本人の意志に基づいく代理である。必ずしも委任によってのみ生じるものではない(民法第104条、民法第111法条参照)。これに対して、法律の規定や裁判所の選任によって生ずる代理が法定代理と呼ばれる。これ等両者は復代理人の選任権で大きな相違が生じる。
復代理
本人に依頼された代理行為を更に外の者にやらせることを復代理と言う。復代理人の行為の結果は代理人に生じるのでは無く、本人に生じることになる。代理人が持つ復代理人を選ぶ権限を復任権と言う。
復任権
代理人が更に代理人を選ぶ権利を代理権の一部として本来的に与えられているものです。したがって、これは本人や裁判所などによって与えられる復任権とは違うものです。
法定代理人の場合の本来的な復任権
任意代理の場合は此れ々についての代理を頼むと言うようにその代理権は限定されたものに限られるが、法定代理の場合には非常に多くをこなさなければならず、とても一人でこなすことが出来無いことが予測される。そこで、法定代理人には自由に復代理人を選べる復任権が与えられているのです(民法第106条)。但し、法定代理人は復代理人がなした行為については原則として責任を負うことになります。此責任は法定代理人に何の落ち度が無い場合にも追わなければなら無い。つまり、無過失責任を負わされるのだ。けれども、病気や旅行などやむをえ無い事由で選んだ場合には、その選任及び監督のみで本人に責任を負えばよい。
任意代理人の場合の本来的な復任権
任意代理の場合は代理人に対する本人の信頼があって頼まれたものなので、本人が復任権を与えた場合や、やむをえない事由があった場合や、本人の許諾が無い限り、復任権は与えられません(民法第104条)。任意代理人の場合は頼まれてなったのだから、代理人としてやっていけない事由が生じれば辞めれば良いだけの話で、如何しても復代理人を選んでまで代理人を続けて行く理由は見出し難いので、復代理人の選任は本来本人の許可がある場合だけに限るのが自然である。しかし、民法第104条には「やむをえない事由」も、任意代理人に復任権を与えるための事由としてあげているのだ。そこで、「やむをえない事由」とは、本人が旅行に行く場合、代理行為を一時外の者にさせたいので、本人の許諾を得ようとしてのだが、運悪く、その時、本人の居所が掴めない場合のようなものに限定するようなことが必要となるのです。このように任意代理人の復任権は限られたものとなるので、それによって生じる責任は法定代理人と較べて軽減されたものになります。先ず、無過失責任は問われません。
(復代理人を選任した代理人の責任)
民法第105条 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。
2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。
復代理人の有する代理権
復代理人の代理権の範囲が、本来の代理人の範囲を超えるものであってはなら無い。また、復代理人の代理行為の効果は本人に生じます。つまり、復代理人は、本人と相手方などの第三者に対しては代理人と関係に立つのです。復代理人は代理人の存在を介して成立つものなので、復代理人を立てたからといって代理人の代理権は無くなるものではありません。このことを逆に解すると、復代理人の代理権は代理人の本人となした受権契約が解約される等で、代理人の代理権が消滅するようなことがあった場合には、復代理人の代理権も消滅するのです。
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